なぜ、ノジマは“斜陽ビジネス”の買収を続けるのか 「日立家電」買収に潜む狙いと懸念(3/3 ページ)
ノジマが日立の家電事業を買収すると発表し、話題を呼んだ。同社はこれまで、VAIOの買収なども行っている。いずれも絶好調とは言えない事業だが、どのような狙いがあるのか。
カギは「販路」か
日立の家電撤退により、大手電機メーカーで家電に注力する会社はわずかとなった。
米原子力発電所事業の失敗で巨額の赤字を抱えた東芝は、2010年代から積極的に事業の売却を進めた。2016年に白物家電事業を中国の美的集団に売却。2018年にはテレビ事業を中国企業に売却したほか、PC事業もシャープに売却した。東芝の現在の主力事業は発電所や重電インフラであり、2025年度の営業利益率は10.6%と高収益体質に生まれ変わった。
ソニーグループは2000年代からリストラや事業の「選択と集中」を敢行した。2012年には液晶の生産をサムスンとの合弁生産から調達に切り替え、2014年にVAIO事業を日本産業パートナーズに売却している。
2027年にはテレビ事業を中国TCLグループとの合弁に切り替え、同事業におけるソニーの出資比率は49%となる。ゲームや映画・音楽事業など高収益事業を展開していることが主要因だが、ソニーグループの営業利益率は11.6%と東芝同様に10%を超える。三菱電機は現在も冷蔵庫やエアコンなどを生産しているが、洗濯機やテレビ事業からは撤退済みだ。
残るパナソニックは現在も白物・黒物家電を手広く手がけている。テレビ事業も撤退すると目されていたが、収益改善に努め、現時点では撤退しない方針だ。パナソニックは家電事業の依存度が高いため「撤退できない」というのが正直なところだろう。決算資料によると家電・電材などの祖業は売上高の4割以上を占め、電池などBtoB事業は他社と比較して収益性が低い。2025年度の全社営業利益率は2.9%と大手電機メーカーの中で低い水準だ。
日立家電を手にしたノジマは「国産信仰」が強い消費者を獲得する上で、パナソニックがライバルとなる。中国傘下になったことを知らない消費者も多いため、東芝ブランドも根強い。その中で顧客接点が強みとなりそうだが、他の家電量販店にとって「ノジマの日立家電」を取り扱うのは面白くないはずだ。
VAIOは法人向けが強いため、ノジマが子会社化した際に他の量販店から冷遇されることは少なかったとされる。しかし消費者向けの家電において、首都圏の量販店は日立家電を冷遇するかもしれない。電機メーカーの撤退で国産家電の競合は少なくなったが、量販店の思惑が入り込む以上、ノジマは難しい舵(かじ)取りを迫られるだろう。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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