東京都水道局のアプリ「評価2.1→4.5」 230万ユーザー獲得までの”泥臭いユーザーファースト”(3/4 ページ)
2022年10月にリリースされた東京都水道局のアプリ、当初のストア内評価は「2.1」だったが、そこから「4.5」にV字回復を遂げた。どのような取り組みがあったのか、取材した。
高齢者に寄り添い、パスワード設定に30分
水道局アプリは都内の水道契約者の25%が利用しているが、チームはさらなる利用者層の拡大に向けて動いている。若い世代への普及が進む一方で、スマホの操作に不慣れな高齢者層の利用率は高くない。利用促進のため、高齢者層が多く住んでいる都営住宅に、水道局職員自ら足を運び、アプリ説明会を開催している。
説明会では参加者に職員が寄り添い、二人三脚で水道局アプリの登録を進める。「パスワードを決めてくださいと言っても、『パスワードって何?』というところから始まります。英字と数字を混ぜないといけないと説明すると、どうしようと固まってしまう方もいらっしゃる。その横で30分、一緒に考え続けるようなこともあります」(菊地氏)
効率を重視するならば、こうしたサポート業務は外部の専門業者や携帯ショップなどに外注するのが一般的だ。しかし、水道局が自前での対応にこだわるのには理由がある。
「いずれは外部委託を考えていくことになると思うのですが、現時点では職員が直接対応することに大きな意味があると思っています。現場でお客さまの声を聞けるのは、非常に貴重な機会です」(菊地氏)
利用者がどこでつまずき、何に不満を感じているのか。そのリアルな利用シーンを職員自身が見て学ぶという現場主義が、同アプリの品質を支えているのかもしれない。現在も利用者は順調に伸び続けており、チームは「まだまだ走っている状態。気を抜くわけにはいかない」(菊地氏)と気を引き締める。
かつて公務員の仕事といえば、「前例踏襲で仕事をしていればなんとかなった」時代があったかもしれない。しかし、多様化する住民ニーズと激変するデジタル社会において、その前提は崩れつつある。
「『公務員の仕事はつまらない』と思っている方がもしいたら、その印象を改めていただきたいなと思います。今はすごく時代が変わってきていて、行政サービスに求められるものも多様化しています。新しい考え、新しい知識、新しいアイデアを私たちも求めていますし、それを形にできる、とてもやりがいがある職場だと思っています」(菊地氏)
低評価という現実から逃げずに、ひたすら誠実に利用者の声に向き合い、改善に取り組む。230万ユーザーを引き付けた東京都水道局の取り組みは、変わりゆく行政DXの成功事例と言えるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
大企業の早期退職募集の波が広がりを見せている。申し込みシニア社員も多いようだが、中小企業への転職は簡単ではない。構造的なギャップを解説する。
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略
タリーズは4月、100店舗目となる病院内店舗をオープンした。他のカフェチェーンの病院内出店は30〜50店規模にとどまるが、なぜタリーズが抜きんでているのか。タリーズが病院内に出店する理由を取材した。
退職一時金を「廃止」する会社は増えるのか 優秀人材が逃げる給与シフトの成否
王子ホールディングスは退職一時金を廃止すると発表した。過去3年間で廃止した大企業の事例はないが、今後この動きは加速するのだろうか。