年商25億円の茨城の喫茶チェーン「サザコーヒー」に学ぶ、地域密着型の差別化戦略(5/5 ページ)
年商25億円を誇る、茨城の喫茶チェーン「サザコーヒー」。喫茶店の倒産が相次ぐ中で、同社が生き残れたのは地域密着型の「差別化戦略」にあった。その取り組みについて、創業者に取材した。
「地元の偉人が飲んだコーヒー」を現代風に再現
もう一つの特徴的な差別化戦略として、独自の商品開発が挙げられる。その代表例が、2004年に発売した「将軍珈琲」(発売当時の商品名は「徳川将軍珈琲」)だ。同商品は、同社の看板商品「サザスペシャルブレンド」と並ぶ人気商品だという。
同社は以前から、地元の偉人や賢人が飲んだであろうコーヒーの味を再現する取り組みを続けてきた。
「コーヒー業界では産地や銘柄、農園別といった訴求が一般的です。しかし、『歴史上の人物が飲んだ』というストーリー性を加えることで、別の魅力を打ち出せると考えました」
こうした発想は、その後の商品開発にも生かされている。2022年には茨城県立歴史館と連携し、徳川光圀や渋沢栄一など、茨城ゆかりの人物をテーマにした商品「茨城ヒストリアカフェ」(1杯取りのドリップコーヒー×7種。1200円)を発売した。
「きっかけは、歴史館の山口やちゑ館長(当時。元茨城県副知事)から『県の歴史に関連したお土産品をつくりたい』と相談を受けたことです。当社は、看板商品の『将軍珈琲』など、これまでも歴史上の人物が飲んだであろうコーヒーの味を再現してきたので、複数の商品開発に取り掛かりました」
生産地にまで踏み込んだ農園経営に加え、歴史や文化を切り口にした商品開発も、サザコーヒーならではの差別化戦略といえる。
鈴木会長は、前編で紹介したように勝田信用組合(現・茨城県信用組合)の理事長をはじめ、ひたちなか商工会議所の会頭も務めた経験を持つ。地元経済界では名の知られた存在だが、自分は今でも「コーヒー屋の親父」だと語る。
「本店が混めば、今でも皿洗いを手伝います。会社が大きくなっても私も妻も“喫茶店のマスターとママ”なのです」
喫茶店の店舗数が減少を続ける中、サザコーヒーは、地域に根差した店づくりを土台に、生産地への投資や独自の商品開発を重ねながら事業を拡大してきた。地方の喫茶店でありながら差別化することで存在感を示す――。サザコーヒーの歩みは、喫茶店が生き残るための1つのモデルケースといえそうだ。
著者紹介:高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
日本実業出版社の編集者、花王の情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、企業の経営者や現場担当者の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例・ブランド事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。
「20年続く人気カフェづくりの本 ―茨城・勝田の名店『サザコーヒー』に学ぶ」(プレジデント社)、「なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?」(同)、「カフェと日本人」(講談社現代新書)、「『解』は己の中にあり」(講談社)、「日本カフェ興亡記」(日本経済新聞出版社)など著書多数。 E-Mail: k2takai@ymail.ne.jp
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