「AIを使うほど人はバカになる」は本当か? 研究が示す思考力低下のリスクと3つの対策(2/3 ページ)
生成AIネイティブ世代の新入社員が続々と入社してくる中で、現場からは「最近の新人は使えない」といった声も上がっている。なぜなのか? 研究結果からその原因と対策を考えていく。
学ぶ機会を奪われる若手たち 「AIバカの壁」を越える3つの習慣
これらの研究は、必ずしも新入社員だけを対象にしたものではない。しかし、長年の業務経験が「フィルター(判断軸)」として働くベテラン層と異なり、ビジネスの判断軸を育てる段階にある若手層にとって、思考力の低下というリスクは大きく働くと考えられる。
さらに環境の面でも新人には追い打ちがかかっている。従来、新人が担っていた「議事録の作成」や「リサーチデータの要約」といった基礎的な仕事を、今はAIが代わりにやってくれるようになった。しかし、一見地味に見えるこれらの業務の積み重ねこそが、ビジネスに必要な知識を増やし、合理的な判断を下すための「思考力の土台」をつくっていた。AIによる業務の効率化は、若手社員が現場で学ぶ機会を奪うことにもつながっている。
では、AIが当たり前になった環境で、どうやって思考力を育てるのか。その具体的なアプローチとして、3つの習慣を提案したい。
1つ目は、「問い」と「判断」を自分で持つことだ。課題をそのままAIに投げるのではなく、「自分は今からどんな問題を解こうとしているのか」「動機は何か」「ゴールはどこか」を、まずは一度自分の言葉にしてみる。この自分で考えるプロセスを残すことが、長期的な認知的負債に対する予防線となる。
また、判断についても同様だ。AIが出してきたアウトプットに対して、「なぜそうなるのか」を自分で説明できる力を鍛える必要がある。あるベテランエンジニアによると、こうした説明力は、日報を書いたり、レビュー資料を作って人に説明したりといった日々の地味な積み重ねの中でしか身に付かないという。こうしたプロセスを経て、合理的に判断する力が徐々に育っていく。
2つ目は、AIの出力を鵜(う)呑みにせず、意図的に「疑う」習慣を作ることだ。具体的には、AIに複数の選択肢を出させて最終的な選択は自身で行うことや、自分の考えに対してあえてAIに反論させてみる、といった使い方が効果的だ。さらに、複数の異なるAIを組み合わせて出力を検証・比較するのも良い方法だ。批判的思考の低下を防ぎ、情報の真偽や妥当性を見極める能力を維持・強化することにつながる。
3つ目は、AIを「自分の理解度を試す道具」として使うことだ。例えば、「本日の会議で決定したプロジェクトの進め方について、私の理解度を確認するクイズを5問作成し、1問ずつ出題してください」といった指示をAIに与える使い方が考えられる。AIから出題される問いに答える形で客観的な答え合わせを行うことで、AIを使ったときに最も陥りやすい「実力以上に分かった気になる」という罠を防ぐことができる。
これらはどれも、思考のプロセスをショートカットしないための有効な方法だ。
「若手が使えない」と嘆く前にマネジメント層がやるべきこと
紹介した研究は「AIが便利だから思考力が下がるのではない」ことを示している。本当の問題は、その便利さによって、人間が考えるプロセスが徐々に「外部化」されていくことにある。自分では考えているつもりなのに、実際には考えるプロセスそのものをすべてAIに預けてしまっている状態。これこそが「AIバカの壁」の正体だ。
現場で「若手社員が使えない」と嘆くマネジメント層は、彼らの能力を疑う前に、「思考しなくても業務が成立してしまう環境」に彼らを無防備に配置していないかを省みる必要がある。AI時代のビジネスパーソンとして生き残るためには、業務の「入り口(問い)」と「出口(判断)」を必ず自分の頭で考えることをルール化、習慣化することが極めて重要である。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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