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「潰れたって聞いたよ」 倒産寸前から年商2.5億円へ、二度の経営危機を乗り越えた「トタンバケツメーカー」(4/6 ページ)

「オバケツ、潰れたって聞いたよ」。一時は年商500万円まで落ち込んだ「トタンバケツ専門メーカー」はどのように自社ブランドをを磨き上げ、経営危機を乗り越えたのか。取材した。

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付加価値をつけた「ライスストッカー」が大ヒット

 展示会での屈辱が次へのエネルギーになった。他の出展者から「バイヤーからの信頼を得るには最低3年は出続けたほうがいいよ」というアドバイスを受け、出展継続を決めた。展示会に出展する中で、来場者から「このバケツ、何を入れたらいいの?」とよく聞かれたことも気になっていたという。

 3回目の展示会で、渡辺氏は他の出展者が毎年コンテスト向けの新商品を開発していることに気付き、「オバケツの使い方を提案し、付加価値を持たせた新商品をつくろう」と考えた。

 新商品のヒントは、母の知り合いを交えた自宅での雑談から生まれた。展示会の土産話をしていた際に、「どんな用途のオバケツなら使いたい?」とその知り合いの女性に聞いてみると「おしゃれな米びつが欲しい」という答えが返ってきた。

 渡辺金属工業は、約30年前にも角形の米びつを製造していたが、売れなくなったため廃盤になっていた。トタン製で光を通しにくく、湿気を抑えられるほか、サビに強く、丸洗いもできる。こうした特性は米びつに求められる条件とも一致していた。

 過去に培った技術と、新たに得た顧客の声。その2つを組み合わせた新商品の開発が始まった。

(左)人気商品「ライスストッカー」。シルバー、赤、 緑、アイボリー、白、グレーの6色展開、(中央)フタが本体の淵に引っ掛けられるようになっている(画像:筆者撮影)、(右)ライスストッカーのふた。2重になったふた部分に、防虫剤や乾燥剤を入れられるようになっている(画像:渡辺金属工業提供)

 そして2011年、展示会までに完成させた「ライスストッカー」が、コンテストで準大賞を受賞する。実は渡辺氏自身、この結果をまったく予想していなかった。当時、同社はライスストッカーとは別に、ティッシュケース付きのオバケツも開発していた。渡辺氏のなかでは、そちらが本命商品だったという。

 「ライスストッカーは正直、二番手という認識でした。だから事務局から受賞の連絡を受けたときは『まさかこっちが選ばれるのか』と本当に驚きましたね」


展示会のコンテスト出品新商品で、渡辺さんが本命としていたティッシュケース付きのオバケツ(画像:渡辺金属工業提供)

 さらに幸運は重なる。受賞の知らせを受けたのは、展示会の出展ブースで生活協同組合の本部バイヤーとの商談中だった。

 「受賞した商品ってどれですか?」と、バイヤーが興味を示し、その場でライスストッカーの受注が決まった。生協からの注文は最初は100個、翌月には200個、数カ月後には1000個と倍々ゲームで増えていった。

 「いやー、舞い上がりましたね」。渡辺さんは当時を笑って振り返る。

 以来、毎年新商品を打ち出していった。2026年現在、ラインアップは80種類に上る。新商品の中からヒット商品も生まれている。

 ライスストッカーの累計販売数は70万個、通気用の穴を開けた野菜収納用の「野菜ストッカー」(2012年発売)は同1万個、密封性のある二重ふたでにおい漏れを防ぐ「おむつ消臭ペール」(2013年発売)は同2万個、蚊取り線香を入れる「蚊遣りオバケツ」(2014年発売)は同2万個と、売れ行きは好調だ。


アウトドアシーンで活躍する「蚊遣りオバケツ」。ふたを締め、空気穴をふさぐことで空間内に酸素がなくなることで自然に鎮火する仕組み。下部には蚊取り線香が収納できる(画像:筆者撮影)

 「何にでも使えるバケツ」から「用途を限定した付加価値商品」へ。この発想の転換が、同社を再び年商2億円企業へと押し上げた。

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