「AI活用100%」でも生産性は上がりきらない? メルカリCTOが“人事”と“AI”のトップを兼任した狙い(2/3 ページ)
メルカリではCTO(最高技術責任者)の木村俊也氏が、CHRO(最高人事責任者)とCAIO(最高AI責任者)を兼任する体制がスタートした。背景には「生成AI活用」だけでは、生産性が上がり切らないのでは? という木村氏の見立てがある。
「AIに頼った働き方」を目指す 組織を変える実験、成果は?
仕事の流れを組み替えるために、何をするべきか。
「AI前提にしなければワークしないぐらい、AIに頼った働き方」を目指し設計したのが「AI Pods」である。
AI Podsは、AIを中心に据えた開発プロセスを少人数体制で回す取り組み。1つのPodは、PM(プロダクトマネジャー)1人と、PDEと呼ぶプロダクトエンジニア4〜5人の少人数で組む。各Podでは「出品」のような重要機能のタスクを受け持ち、その中で走る個々のプロジェクトを、PM1人とPDE1人がエンドツーエンドで仕上げる。企画立案や仕様の策定、バックエンドからモバイル、Webまでの開発も、基本は2人でやりきる。
この設計の肝は「越境」にある。これまで開発は分業が前提だった。バックエンドの担当はバックエンドだけ、モバイルの担当はモバイルだけを作る。AI Podsでは、それを1人が最初から最後まで担う。
「越境する時代」とは以前から言われてきたが、メルカリでもやりきれてはいなかったという。AIで専門外を補えれば、越境を前提に業務設計できる。そう見て、あえて“越境せざるを得ない設計”に踏み込んだ。
3カ月の実験で、まず越境そのものは機能した。バックエンドのエンジニアがモバイルやWebの開発までこなす。ここは想定通りに進んだ。
問題は、その先にあった。プロダクトエンジニアはもともとエンジニアであり、プロジェクトマネジメントを自分で担うには学習コストがかかる。木村氏が「プラットフォーム」と呼ぶ、AIを使ったプロジェクト管理の共通基盤が、まだ整っていなかった。
デザインも同じだ。自然言語で仕様を渡せば下地までは作れるが、リリースの品質には届かない。デザイナーの専門性がなお必要だった。
つまり、ツールが100%行き渡っても、AIを前提に働こうとすると、できないことが大量に残る。
「AI Podsの実験は、つまり組織的な変革なんです」と木村氏は言う。少人数で役割を組み替え、期待値ごと変える。効率を最大限に引き出す道は「どんなツールを配るか」ではなく「組織をどう組み直すか」にあるのだ。
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