客単価1900円増 ムラサキスポーツが挑んだ「誰でもデータ活用」の仕組み(2/3 ページ)
「分析する時間も人材も足りない」という状態から、ムラサキスポーツは生成AIを活用した業務支援ツールを導入。その結果、売上前年比120%、労働時間170時間削減を実現した。誰でもできるデータ活用の仕組みをどのように整えたのか。
売上前年比120%、労働時間は170時間削減
そこで同社は、フルカイテンが提供する業務支援ツール「ストアエージェント」を導入した。過去の販売データなどを自動で分析し、店舗スタッフが取るべきアクションを提示するツールで、スタッフは出勤時にこの画面を確認することで、品出しや発注、店内レイアウトの変更など、その日やるべき作業を把握できる。
ムラサキスポーツ・イオンモール岡山店では、朝礼や週次の振り返りに加え、日々の売り場業務のなかでタブレットを使いながらデータを確認する運用を取り入れた。社員だけでなくアルバイトスタッフも情報を確認し、売り場改善や接客に生かした。
その結果、導入後の対象期間では売り上げが前年比120%を達成。1人当たりの時間当たり売上高も前年比126%となった。
客単価も前年同期比で約1000円上昇した。このうち接客なしで商品を購入した顧客の客単価の上昇が約400円だったのに対し、接客を受けた顧客では約1900円上昇したという。
岡山店店長の藤本啓太氏は、その背景について「分析のスピードが上がり、スタッフが売り場に立つ時間が増えた」と説明する。
従来は前週の振り返りや課題抽出に時間がかかっていたが、現在は多くの担当者が週の前半までにデータ分析を終え、改善アクションに移れるようになった。結果として、接客に充てられる時間が増えたという。
「何をすべきか」が分かる仕組み
これまで利用していたBIツールは、全社業績から顧客単位の購買情報まで幅広く分析できた一方で、扱うデータ項目が多く、操作も複雑だった。そのため、使いこなせるスタッフとそうでないスタッフの差が大きくなりやすかった。
一方、新たに導入したストアエージェントでは、店舗スタッフが必要とする情報に絞って表示される。
売り上げや客数などの実績に加え、AIが店舗の状況を要約し、改善点や注目ポイントを提示する。「全社的に売れているのに自店舗では売れていない商品」を提示して、「この商品の露出を強化してはどうですか?」などと、具体的なアクションも提案してくれる。
ムラサキスポーツでは1店舗当たり約3万点の商品を扱う。膨大なアイテムの中から売れ筋や改善余地のある商品を探し出すのは簡単ではない。しかし、売り上げを上げるために現場で必要な情報や行動が整理されて表示されることで、経験の浅いスタッフでも改善活動に参加しやすくなった。
藤本氏は「分析の質と頻度が均一化された」と話す。以前は担当者によって分析の深さや頻度に差があったが、現在は多くのスタッフが同じデータを見ながら議論し、改善に取り組めるようになったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
中小企業は「消去法」で50代を採用する 早期退職の前に知るべき現実
大企業の早期退職募集の波が広がりを見せている。申し込みシニア社員も多いようだが、中小企業への転職は簡単ではない。構造的なギャップを解説する。
倒産寸前なのに年収100万円アップ 売上38億円のV字回復を実現した、山梨のプリント企業の「決断と狙い」
Tシャツなどのオリジナルプリントグッズの製作を展開するフォーカスは2020年のコロナ禍、倒産の危機に陥った。しかし現在はV字回復を果たし、売り上げは約38億円に上る。この5年間、どのような戦いがあったのか?
病院内のカフェ、なぜ「タリーズ」が多い? 100店舗展開を支える運営戦略
タリーズは4月、100店舗目となる病院内店舗をオープンした。他のカフェチェーンの病院内出店は30〜50店規模にとどまるが、なぜタリーズが抜きんでているのか。タリーズが病院内に出店する理由を取材した。
退職一時金を「廃止」する会社は増えるのか 優秀人材が逃げる給与シフトの成否
王子ホールディングスは退職一時金を廃止すると発表した。過去3年間で廃止した大企業の事例はないが、今後この動きは加速するのだろうか。


