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人を増やしても“泥沼化”? なぜ「自治体DX」は同じ失敗を繰り返すのか 「3つの法則」で解説(3/3 ページ)

「人を増やしたのにプロジェクトが遅れる」「システムを導入したのに現場で使われない」――。自治体DXの現場で起きるこうした課題は、実はIT業界で古くから知られる“法則”によって説明できる部分も少なくない。自治体のデジタル化に携わる筆者が、3つの法則から現場の課題を読み解く。

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3.「カニンガムの法則」 正しい情報を得るには「間違える」のが近道

 「インターネット上で正しい答えを得る最良の方法は、質問することではなく、間違った答えを投稿することである」――最後はカニンガムの法則です。

 これはSNS上の現象として語られることが多い法則ですが、自治体のデジタル化の文脈においても、意外な形で示唆を与えてくれるのではないかと考えています。

 例えば、申請者が窓口で書類に記入する手間をデジタル化によってなくす「書かない窓口システム」の導入を検討しているとします。多くの場合、まずは他自治体の先行事例を探し、それを参考にしながら自分たちも同じように導入しようと考えがちです。

 しかし、自治体間の情報共有は、往々にして「成功事例」ばかりが共有され「失敗事例」や「裏話」はなかなか出てきません。

 そこで、恥ずかしがらずに「うちではこのような課題を抱えている。書かない窓口システムを導入しても自分たちの課題は解消されないのではないか、あるいは新たな課題が発生するのではないか」と自分の考え(仮説)を外に出してみることで、思いがけない反応や有益な情報が集まることがあります。

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仮説や疑問を外部に発信することで、反論や補足情報が寄せられ、当初は見えていなかった論点が浮かび上がることがある

 以下に筆者が抱いている率直な疑問をいくつか挙げてみます。

 「住民が記入しなくなった分を職員が代わりに入力しているだけであれば、業務全体の省力化効果は限定的なのではないか?」

 「窓口から庁内システムへのデータ連携にRPAを活用する事例も見られるが、そもそも窓口手続きは自治体が保有する情報を更新する場と考えると、窓口と庁内システム間のデータは双方向にやり取りできなければ十分な効果は望めないのではないか?」

 あえて外に出してみることで有識者から反論や補足をいただきたいという意図があります。もし「それは違う」「こう考えるべきだ」という指摘が集まれば、それ自体が新たな学びになるはずです。

 カニンガムの法則を自治体業務に当てはめると、以下のようになります。

 情報収集は「聞く」だけではなく「発信する」ことから始まる。先進事例視察も良いが、まず自分たちの検討状況を全国の自治体に発信してみる。それだけで、想像以上のナレッジが集まってくることがある。失敗を恐れずに「まだ固まっていない検討段階の情報」を共有する文化が、自治体DXのスピードを加速させる。

「法則を知る」ことは、次の一歩を考えるヒント

 今回紹介した3つの法則は、どれも私たちの「ものの見方のクセ」や「組織というものの性質」に根差しています。

 こうした法則は、決して「知っていれば簡単に避けられる」ものではなく、分かっていてもうまくいかないケースが多いでしょう。しかし、全く知らないよりも「知っている」方が、気持ちがラクになります。

 何がうまくいかないのか理由が見えずに同じ失敗を繰り返すと、閉塞感を感じます。一方で「もしかしてブルックスの法則かも」「これはコンウェイの法則が表れているのかもしれない」と、いま何が起きているのかを少し俯瞰(ふかん)して見ることで、次の一歩を考えやすくなります。

 自治体DXに「万能の特効薬」はありません。でも、先人たちの知恵としての「法則」を自分たちの現場の問題に当てはめて考えることは、進むべき道の「ヒント」になるはずです。

 今も日本のどこかの自治体で、ブルックスの法則の壁にぶつかり、コンウェイの法則に悩み、カニンガムの法則を実感しつつ、デジタル化の歩みを続けている方がいると思います。同じく自治体DXに関わる者の一人として、皆さんの背中を少しでも押すことができればうれしいです。

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