人を増やしても“泥沼化”? なぜ「自治体DX」は同じ失敗を繰り返すのか 「3つの法則」で解説(2/3 ページ)
「人を増やしたのにプロジェクトが遅れる」「システムを導入したのに現場で使われない」――。自治体DXの現場で起きるこうした課題は、実はIT業界で古くから知られる“法則”によって説明できる部分も少なくない。自治体のデジタル化に携わる筆者が、3つの法則から現場の課題を読み解く。
2.「コンウェイの法則」 組織の形がシステムを決める
「組織構造は、そのままシステム設計に反映される」――続いて、この言葉で表現されるコンウェイの法則について考えます。
前述のとおり、自治体では事業を進めるために組織を編成し、そこに職員を配置します。同時に、組織ごとに予算が割り当てられ、その枠内で事業を実施していきます。
各組織は自らの業務範囲しか把握できないことが多く、通常はその範囲の中で自分たちの業務をいかに効率的に進めるかを重視して行動します。その結果、各組織で導入されるシステムも個別最適が優先される傾向にあります。
少し規模の大きな自治体の場合、業務システムの調達も各所属主導で行われることが多く、いわゆる「サイロ型」のシステムが並ぶことになります。
職員や市民が、業務ごとに毎回同じような情報を何度も記入し、システムに入力している場面が見受けられるとすれば、それはまさにコンウェイの法則が現場に表れている一例でしょう。
コンウェイの法則の観点から言えば、以下のようになります。
組織が「縦割り」だからシステムも「縦割り」になるのは当然の帰結である。システムを統合したいのであれば、先に組織や業務プロセスを統合する必要がある。
実際、この問題は10年以上前から指摘されていて、それを解消するために「全体最適化」やEA(エンタープライズ・アーキテクチャー、企業全体の業務やITシステムを可視化し、最適な構造へ導くための方法論)が提唱されてきたのですが、なかなか成功した事例を見たことがありません。
自治体において、情報システムの統合のために「組織を統合」するのならば、いわゆる情報政策部門が全庁の情報化事業を巻き取るような、中央集権型の組織編成となります。実際、情報政策部門に予算や執行権限を集約させることを検討している自治体もあります。
また「業務プロセスの統合」は現在の言葉に言い換えればBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング、業務プロセス改革)ということになるのでしょう。しかし現実には現行業務をフロー図に書き起こして可視化したところで止まっている自治体も多く、ゴールに向かって進んでいるようには見えません。
筆者が考える現実的な答えはシステム統合ではなく、システムの分散を前提として、互いのシステムを「疎結合」で連携させていく形です。ただし、その場合でも連携のためのルール策定や管理、さらに全庁横断的なシステム(連携基盤)の整備が欠かせません。こうした部分は中央集権型でなければ成立しないのだろうとも考えています。
なお、コンウェイの法則はシステム統合だけでなく、一般的な組織のあり方にも該当するかもしれません。
自治体DXという言葉が広く使われるようになって以降、全国の自治体の中にはDXを実現するための専門の組織を編成しているところもあります。その組織は、従来の情報政策部門の中に配置されることもあれば、政策企画系の部門の中に配置されることもあります。
筆者は、自治体DXが最終的に情報システムの整備を伴うのであれば、情報政策部門と不可分であると考えています。しかし、組織が分離している場合はそれぞれが部分最適を優先して事業を進め、結果として庁内の軋轢(あつれき)を生んだり、事業が滞ったりするケースが増えるのだろうと予想しています。
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