ため息、舌打ち、強いタイピング音は、なぜ嫌われるのか? 職場で広がる「音ハラ」の根っこ(4/4 ページ)
ため息や舌打ち、強いタイピング音――。かつては見過ごされてきた職場の音が、いま「音ハラ」として問題視されている。なぜ今になって不快な音がハラスメントと捉えられるようになったのか。その背景を探った。
個人を注意するより、職場を変える
では、職場は音ハラにどう向き合えばよいのか。村嵜氏は、個人への注意喚起よりも環境の調整に比重を置くべきだと考える。
音ハラは法的に規制されておらず、企業が単体で処分するのは難しい。そのため、個人への注意だけでは限界がある。注意もお願いレベルにとどまり、繰り返し注意すると、逆に注意した側がパワハラだと受け取られかねない。
その点、職場環境の調整は企業にとって取り組みやすい。フリーアドレスやイヤフォンの容認で働き方の自由度を高めておけば、トラブルが起きても、各自が工夫して対応しやすくなる。明らかな嫌がらせ目的の騒音は別として、企業が負うリスクも軽くなる。
静音設計の文具やキーボード、サウンドマスキングなど、対策をうたう商品も増えている。村嵜氏はこうした傾向を評価しつつ、それだけでは不十分だと指摘する。商品による対策が及ぶのは、導入した人や場所に限られるからだ。
「自腹で対策する人としない人がいれば、気をつける側に不満がたまる。会社が支給したり、経費での購入を認めたりした上で、商品による対策と互いの配慮を組み合わせるのが理想」と語る。
職場の音が問題化した背景には、音そのものよりも働き方や受け止め方の変化がある。音ハラは、変化した職場環境や人間関係が表面化した現象ともいえる。個人の感受性を責めるより、職場環境そのものを整えることにこそ、解決の糸口がある。
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