謎の「“日の丸AI”開発企業」正体明らかに ソフトバンク、NECら大手がそろって出資するワケ
ソフトバンクやNECなどが出資する「国産AIモデル開発企業」がベールを脱いだ。一体なぜ、国内大手企業が出資するのか。
ソフトバンクなど国内大手が共同出資する「国産AIモデル開発企業」が、そのベールを脱いだ。社名は、Noetra(ノエトラ、東京都渋谷区)。7月1日から事業を始めると分かった。ロボットやフィジカルAIを動かすための「国産マルチモーダル基盤モデル」を開発し、国内企業に提供してAI活用を後押しする狙いだ。
同社の旧社名は「株式会社日本AI基盤モデル開発」。ソニーグループやNEC、本田技研工業などが出資する中、詳細が明かされておらず、その動向が注目を集めていた。6月30日には、経済産業省が同社の研究開発を支援すると発表している。
一体なぜ、国内大手企業がこぞって出資するのか。日本企業にどのような恩恵をもたらすのか。同社の発表を基に解説する。
謎の「“日の丸AI”開発企業」正体明らかに 大手がそろって出資するワケ
Noetraは、産業技術総合研究所と共同で国産マルチモーダル基盤モデルを開発する。「マルチモーダル基盤モデル」は、テキストだけでなく画像、動画、音声、物理法則などを理解できるAIモデルだ。ロボットやフィジカルAIなど現実世界で動作するAIに必要な情報を認識し、推論に生かす。並行して「高度な日本語理解」の実現や、物理空間を認識できる「世界基盤モデル」の開発なども掲げる。
国産マルチモーダル基盤モデル開発の背景には、生成AIの活用が多様な分野で進展する中、産業競争力の源泉である現場データを安全に扱える国産AIが求められていることがある。また、米Anthropicの先進AI「Claude Fable 5」が米国政府の要請を受けて提供が停止されたように、海外企業に依存することへの懸念があると同社は説明する。
「海外製基盤モデルへの依存が課題となっており、産業競争力や主権確保の観点からも自律的に開発・活用できるAI基盤の重要性が高まっている。(中略)製造や物流、インフラなどの産業現場で蓄積される重要なデータを、安全かつ継続的に活用できる環境の整備が不可欠だ」(Noetra)
こうしたビジョンや事業戦略に賛同する企業からの出資を受けているといい、同社は「国産AIの開発に取り組む企業や、製造業をはじめとするAI活用を推進する幅広い業種の企業から出資を受ける予定だ」とする。
経産省が支援 赤澤経産相「重要なプロジェクト」
Noetraと産業技術総合研究所による研究開発は、経産省が所管する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」に採択された。
同事業は、経産省の「AIロボティクス戦略」に関わるもので、赤澤亮正経済産業大臣は6月30日の会見で次のように述べた。
「AIロボティクス戦略において重要なプロジェクトと位置付けている、国産のマルチモーダル基盤モデルについて、Noetraと産業技術総合研究所のコンソーシアムが採択された。(中略)わが国の強みを生かせるフィジカルAIやロボットのデータ基盤を構築し成長させていく」(赤澤大臣)
研究成果を公開 企業のAI利用促進へ
Noetraらの研究成果は、国内のAIモデル開発者や、ユーザーとなる事業者に広く提供するという。NEDOの事業期間内(2026〜2030年度)に公開し、企業の利用を促進すると同時に、国内のAIエコシステムを形成する考えだ。
同社の指揮を執るのは、丹波廣寅社長だ。同氏は、ソフトバンク子会社でAIモデル開発を手掛けるSB Intuitions(東京都港区)のトップとして、国産AIモデル「Sarashina」(サラシナ)の開発を率いた経歴を持つ。
生成AIが重要な産業インフラになりつつある中、信頼できるAIモデルやAIインフラが求められている。Noetraらの取り組みは、そうしたニーズに応えられるか。
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