「社長は君しかいない」 社会人2年目が廃業寸前の「老舗かまぼこ店」を黒字化できたワケ:キャリアを180度変え、斜陽産業に挑む挑戦者たち(3/4 ページ)
後継者不在で休業した創業130年超の老舗かまぼこ店を救ったのは、当時24歳の女性。価格を3倍に見直し、EC中心へ転換。営業利益率20%近くまで改善した事業再生の舞台裏を追う。
事業の何を守り、何を変えたのか
社長就任後、考えたのは「何を守り、何を変えるか」だった。
まず守るべきものは「技術」だった。
工場で先代の横に付き、レシピだけでは伝わらない職人の感覚を学んだ。先代は同じ塩でも、その日の気温や魚の状態によって投入方法を1回または2回に分けていた。すり身の強度や表面の状態を見ながら、工程ごとの温度や時間を微調整する。
先代はこうした判断を長年ノートに記録していた。林田さんたちは、その記録をデータ化しながらかまぼこの製造技術を習得していった。現在は先代も「君たちなら大丈夫」と現場を離れ、若いスタッフだけで製造を担っている。
もう一つ守ったのが「健康社会に貢献する」という代々掲げてきた理念だ。
完全無添加で、体に優しくおいしいかまぼこをつくり続ける。顧客と交わしたその約束こそが、吉開のかまぼこの存在意義だと考えた。
一方で、かまぼこ以外の部分は大きく変えた。公式Webサイトやパッケージデザイン、ロゴを見直し、商品の価値や職人のこだわりも積極的に発信するようにした。
かまぼこ板一つとっても品質を左右する重要な役割があるが、先代にとっては当たり前すぎて、その価値を言葉にしてこなかった。「職人にとっての当たり前と、お客さまの当たり前には大きな差がある」。林田さんは自身が素人だからこそ、消費者目線で価値を翻訳して伝えられると考えた。
価格戦略も見直した。休業中に原料価格は大きく上昇し、一部の魚は3倍近くまで高騰していた。そこで全国のかまぼこを取り寄せて比較分析し、価格は従来の3倍に当たる1本918円に設定。贈答品としてリブランディングした。
販売先も大胆に転換した。かつて売り上げの多くを占めていたディスカウントスーパー向け卸売から、自社ECを中心とする直販モデルへ移行。その大半をオンラインショップが占める。「どこに卸すかもブランディングの一つだと思っています」。商品の価値を理解してくれる顧客に届ける。その考え方が経営改革の軸になった。
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