形骸化する障害者雇用、出社回帰、消えない男女格差……制度を変えても職場にはびこる「昔の価値観」:働き方の見取り図(2/3 ページ)
働き方改革関連法の施行から7年が経ち、有給休暇の取得促進や残業時間の上限規制など、制度面での改革は着実に進んできた。一方で「本当に働き方は変わったのか」と問われると、首をかしげる人も少なくないだろう。骨太方針2026の議論を手掛かりに、働き方改革が抱える誤算を考える。
「改革」と呼ぶには足りなかったもの
ここに、働き方改革のミスリードと誤算があります。
「改革」とは、強い言葉です。現状に疑問を投げかけて根本的に改め、新しく作り変える意味合いで使われます。ところが「長く働けば給与は増えるもの」という世界線のままでは、未来の姿もその世界線に沿って描かれることになります。有休取得や残業上限に関する制度だけ変えて、過去からの世界線を保持したままの状況を働き方改革と呼んでよいのか大いに疑問です。
根底にある価値観や考え方は踏襲し、状況を少しでも前へと進めることが目的であれば「働き方改善」と表現した方が、実態との齟齬(そご)が出にくいように思います。
働き方が改革されていないと感じる状況は、他にも見られます。2026年7月から、障害者雇用の法定雇用率は2.7%へと引き上げられました。職場はより多くの障害者を雇用する義務を負うことになりますが、共同通信の記事では以下のように、経済団体幹部の不満の声が紹介されています。
「障害者を雇用すれば、支援にあたる社員も必要になる。半分以上が達成できていないのに、基準を引き上げるのは疑問だ」
そもそも障害者雇用が進んでいない中で、さらに多くの障害者を雇用させようとすれば、制度が形骸化してしまうかもしれません。もっともな言い分にも思えますが、その背景にあるのは「職場で働く社員には障害がないもの」という世界線です。
障害者は人口全体の9%強を占めることから考えると、2.7%は遥かに低い数値に設定されています。「職場で働く社員に障害の有無は関係ない」という認識が定着している社会であれば、半分以上が法定雇用率を達成できていない状況の方に合わせて、基準の引き上げに疑問を呈するような声など出ないはずです。
障害者雇用、年齢、性差、テレワーク……残る“昔の世界線”
年齢についても同様の印象を受けます。多くの職場では、定年年齢が設けられています。「部長職は55歳まで」といった役職定年なども見られます。また、早期退職募集の際には45歳以上を対象にするなど、年齢基準もよく目にします。
これらの深層にあるのは「職場で働く社員には年齢に上限があるもの」という世界線です。年齢を理由に働き方や役職などが区切られる仕組みが残っている職場は、この認識が刷新されていないことになります。
コロナ禍で一気に広がったテレワークも、いまは出社回帰が進みつつあります。出社には出社のメリットがあるので一概に善しあしを言えるものではありませんが、中にはテレワークが可能な職務であっても「仕事は出社して行うもの」という世界線のまま改革されていない職場も見受けられます。
テレワークという選択肢が一時的に広がったとしても、過去の認識を踏襲したままであれば、出社回帰へ向かいやすくなります。いざとなればいつでもテレワークを利用できる環境を整えた上で、あえて出社を優先している職場と出社しか認めない会社とでは、属している世界線は大きく異なります。
また、管理職の男性比率が依然として高い背景には「管理職は男性がなるもの」という世界線の存在が感じられます。育休取得期間は女性の方が長い背景には「育児は女性が担うもの」という世界線が横たわっていることが見てとれます。
男女格差をめぐる制度は改善が進んでいるように見えるものの、ペースが遅すぎることは、以前書いた記事(「男女格差『着実に縮まっている』の罠 男性育休『2週間未満』が4割弱の形骸化 」)にて、指摘した通りです。
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