魚肉ソーセージは、なぜ「あの形」のままなのか 縮小市場で見えてきた、ロングセラー商品の戦い方(4/4 ページ)
市場が縮小する中、水産加工大手Umiosは魚肉ソーセージを大きく変えなかった。健康という価値は加えながら、味や形は守る。既存顧客には健康を、新規層には食べるきっかけを提供する――ロングセラー商品の価値を更新する戦略を追った。
新規層には「食べるきっかけ」をつくる
既存顧客との接点を見直す一方で、Umiosは若年層へのアプローチも進めている。
上山氏は「さまざまな年代の方にとって、魚肉ソーセージをフレンドリーな存在にしていきたいです」と話す。
一方で、若い世代を取り巻く環境は、かつてとは大きく異なる。現在は畜肉ソーセージやスナック、プロテインバーなど、手軽にたんぱく質を摂取できる食品の選択肢が多い。そもそも魚肉ソーセージを食べたことがない人も少なくないという。
「おいしさには自信があるので、一度食べてもらえたら続けてもらえると思います。魚肉ソーセージを過去のものではなく、今もおいしく食べられるものだと伝えていきたいです」
そこで同社が重視しているのが「まず食べてもらうきっかけ」をつくることだ。商品の味や形を大きく若者向けに変えるのではなく、売り場での販促やキャンペーンを通じて親しみを持ってもらう取り組みを進めている。
その一つが、クリエイターの牛人(うしひと)氏がデザインしたオリジナルキャラクター「魚肉ソーセージくん」の活用だ。カプセルトイとしても展開しており、出荷量は約10万個を記録したという。
若年層向けの取り組みは始まったばかりで、明確な反応を得られているわけではないが、社内からは「変化の意思が感じられる」「目線が変わるので面白い」などの声があるという。上山氏も、自身の子どもに魚肉ソーセージを食べさせながら、「どのサイズなら食べ切れるのか」「どの味なら受け入れられるのか」を日々観察している。
「魚肉ソーセージが最も売れていた頃に慣れ親しんでくださった世代が今も手に取ってくださっているように、若い世代の方たちも今の魚肉ソーセージの味や形状を記憶してもらえるよう、取り組んでいます」
市場が縮小すると、新たな顧客を求めて商品そのものを大きく変えたくなる。しかし、Umiosが選んだのは、変えるべきところだけを変えるという戦略だった。健康という新たな価値を加えながら、味や形はできるだけ変えない。既存顧客には健康を入り口に再び接点をつくり、新しい世代にはまず「一度食べる」という体験を届ける。
魚肉ソーセージを「懐かしい食品」で終わらせず、世代を超えて選ばれ続ける食品へ。その積み重ねが、縮小市場の中で魚肉ソーセージが再び存在感を高められた一因になっている。
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