売上の3割を捨てた「下請け町工場」 自社ブランドのコーヒーフィルターが世界80の国・地域で求められる理由(1/5 ページ)
売上の3割を失う覚悟で、OEM中心の事業から自社ブランドへと舵を切った大分県の町工場。社長自らが世界を飛び回り、コーヒーフィルターを世界80の国・地域へ広げた。下請けから脱し、海外でブランドを育てた方法とは。
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大分県別府市にある三洋産業は、コーヒーのペーパーフィルターを主力とするコーヒー器具メーカーだ。かつては大手メーカーやコーヒーショップ向けのプライベートブランド(PB)製品を手掛ける小さな町工場だったが、現在は自社ブランド「CAFEC(カフェック)」を展開し、世界80以上の国・地域に販路を広げている。
同社の現社長である中塚茂次氏が入社した1984年当時、売上高は4億〜5億円、従業員はパートを含めて20人ほどだった。現在では、2025年度の売上高が過去最高の17億7800万円に達するまでに成長している。
地方の町工場が下請けを脱し、世界に販路を広げられた背景には、中塚氏自ら育てたブランドと、代理店を「ファミリー」と位置付けて長期的な関係を築く独自のパートナー戦略があった。
日本のものづくり企業が生き残るための「自立のヒント」を探るべく、中塚氏に話を聞いた。
売り上げの3割を捨て、自社ブランドへかじを切る
三洋産業の創業は1973年。喫茶ブームの中、家庭用コーヒー商品の開発をきっかけに設立した。同社は長年、自社ブランドを持たず、全国のコーヒーショップや大手メーカーのPB製品を手掛けるOEMメーカーとして成長してきた。
「他社のブランドを作るのが、得意分野だった」と中塚氏は振り返る。中でも消耗品のペーパーフィルターが売り上げの多くを占めていた。
ただ、下請けビジネスには限界があった。よく売れる商品ほど発注元から値下げを求められ、原材料費や人件費が上昇する中で、価格だけが下がっていった。注文が増えて残業が続いても、残業代を支払えば利益はほとんど残らない。良いものを作っても主導権は発注元にあり、事業の先行きを描けなかった。
粗利率が理想とする水準の半分以下にまで落ち込んだとき、中塚氏は「OEMの取引価格を適正な水準まで引き上げる」と決めた。値上げに応じない取引先とは取引を終了する覚悟だった。当時の売上高は10億円弱で、値上げによって2億5000万〜3億円が失われる計算だったが、その穴は、これから立ち上げる自社ブランドで埋めると腹をくくった。
「ゼロになる覚悟でやりました。社員には一切責任を取らせない。全て私が責任を取るから、と伝えました」(中塚氏)
クオリティーで勝負すれば、それを分かってくれる人たちが世界には必ずいる。そう信じ、2016年に自社ブランド「CAFEC」を立ち上げた。
三洋産業の製品の品質は、コーヒー業界ではすでに高く評価されていた。同社のペーパーフィルターは、他社ブランドとして販売されていた時代から、ハンドドリップの全国競技会に出場するトップバリスタや、コーヒーの味にこだわる専門店のオーナーといった「コーヒーのプロ」に愛用されていたのだ。
さらに、下請け時代から全国のコーヒーショップと付き合いがあったため、販路も確保できていた。品質への信頼と既存のネットワークを土台に、CAFECへの切り替えは比較的スムーズに進んでいった。
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