「トヨタ式」が食品小売りを救う? セブン、マクドナルドが挑む「需要を先につかむ」店舗経営:「3つの『やめる』」で小売りは変わる(4/4 ページ)
製造業の生産管理法として知られる「トヨタ式ジャストインタイム」。この考え方が今、食品小売業でも重要性を増している。セブン‐イレブンやマクドナルドの取り組みをもとに「予測して作る」から「需要に合わせて作る」への転換を考える。
「事前注文」の裏で増える、現場の段取り
ここまで事前注文について紹介してきたが、現場を知る人ほどこう思っているはずだ。
「その段取りを、誰がやるのか」
もっともな疑問だ。事前注文の導入は、少なくとも当面、店の仕事を減らさない。店が処理するのは1件の予約だけではない。複数の予約、店頭の客、デリバリー、レジ対応、品出しが同時に進む。問題は「一つの注文の品をいつ作るか」ではなく、複数の需要を、限られた人員と設備で、どの順番に処理するかだ。予約分と店頭分の在庫は分けて管理することになり、受け取り時刻から逆算する段取りは、これまでの「まとめて作って並べる」より細かい。判断すべき事項は従来より増える。
コンビニエンスストアの場合、その負担の多くは加盟店が負う。人員の少ない時間帯に新しい作業が乗れば、それは本部の施策ではなく、店の現実の問題になる。
筆者は自動車メーカーで生産技術と工場経営に携わってきた。製造の現場でも、需要に合わせて細かく作る仕組みは、導入した直後には必ず手間を増やす。段取り替えの回数が増えるからだ。それでも定着したのは、増えた手間を上回るほどに、作り過ぎと欠品が減ったからだ。逆に言えば、そこが釣り合わない施策は続かない。
事前注文を「客の利便性が上がるサービス」としてだけ見るのは危うい。見るべきは、増えた段取りの手間に対して、廃棄と欠品がどれだけ減ったか。この収支が合う設計になっているかどうかが、持続性のある施策になるかの分かれ道となる。
「事前注文」は本当に利益につながるのか
収支を合わせる鍵は、作る量の決め方にある。必要なのは、1日の販売量を当てることではない。確定した注文と、これから生まれる店頭需要を組み合わせ、どの商品を、何個ずつ、どの時間帯に準備するかを小刻みに調整する仕組みだ。事前注文が入るほど、当てにいく部分は小さくなり、調整で吸収できる部分が大きくなる。
かつて、需要がはっきりするのは、客が店に来て商品を手に取ったときだった。そのため店は、過去の実績や経験をもとに商品を用意し、待つしかなかった。予測が外れれば、欠品か売れ残りのどちらかが発生する。
モバイルオーダーや予約は、店が需要を把握できる時点を来店前へ前倒しする。ただし、客が自然に事前注文へ移るのを待つだけでは足りない。商品を想像でき、必要な数を確保でき、新鮮なまま、待たずに受け取れる仕組みを、店側がつくらなければならない。
そして、事前に把握できるようになった需要を受け止めるには、店舗運営も変える必要がある。必要な数量と受け取り時刻に合わせ、調理、補充、作業配置まで動かすところへ踏み込んでいく。
これまで小売業は、需要をどれだけ正確に予測できるかを競ってきた。しかし、需要を来店前に把握できる手段が広がる今、競走軸にも変化が生まれている。予測をやめて、需要をどこまで早く把握し、その情報に合わせて供給を柔軟に動かせるかがカギになっているのだ。
予測する時代から「需要を先につかむ」時代へ
需要と供給のズレを、在庫と売れ残った品の値引きで埋める――このやり方に頼る時代が、変わり始めている。需要を来店前に把握できれば、必要な量を必要な時刻に合わせて用意できる。欠品と廃棄を減らしながら、客には新鮮な商品を渡せる可能性が生まれる。
ただし、そのためには、注文方法だけでなく、店の動き方まで変えなければならない。
焼きたてのパンが売れたのは、パンがおいしかったからだけではない。客が欲しいと思う時間と、店が商品を用意する時間が重なったからだ。これまで、その一致は経験や勘によって生み出されてきた。これからは、仕組みによって生み出すことができる。
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