「モバイルバッテリーの発火」8月が最多 事故どう防ぐ? 160万個・1億回レンタルしたCHARGESPOTに聞いてみた:1億回レンタルしたのに重大事故ゼロ
モバイルバッテリーのレンタルサービス「CHARGESPOT」の貸し出し回数が1億回を突破した。サービス開始以来、発火などの重大事故を0件に抑えているという。その仕組みを取材した。
外出時のアイテムとして定着している「モバイルバッテリー」。スマートフォンやカメラ、ハンディファンなどを充電するために必要なことから、現代人の“ライフライン”になりつつある。イベントや旅行などが増える夏の時期に、利用する人も多いだろう。
しかし、外気温が高くなるこの時期に気を付けたいのが「モバイルバッテリーの発煙・発火」といったトラブルだ。製品評価技術基盤機構(NITE)によると、リチウムイオン電池搭載製品の事故は8月がピークで、事故の約8割が火災につながっているという。
そこで気になるのが、街なかで見かける「モバイルバッテリーのレンタルサービス」だ。国内最大のシェアリングサービス「CHARGESPOT」(チャージスポット)は、国内に約6万2000台のバッテリースタンドを設置しており、2018年から取り扱ってきたモバイルバッテリーは累計約160万個に上る。屋外や多拠点に散らばった大量のモバイルバッテリーを、どのように管理しているのか。
CHARGESPOTを運営するINFORICH(東京都渋谷区)は8月4日、サービス開始からのレンタル回数が累計1億回を超えたと発表した。その間、発火などの重大事故を0件に抑えているという。
同社は、モバイルバッテリーの安全対策にどう取り組んでいるのか。取材すると、約6万2000台のバッテリースタンドを24時間監視し、バッテリーを管理してきた仕組みが明らかになった。
モバイルバッテリーの事故は8月が最多 「暑さ」が致命傷に
INFORICHは8月4日、CHARGESPOTの安全対策に関する記者説明会を開催した。同説明会に登壇した、電池の研究開発を専門とする関西大学の石川正司教授(化学生命工学部)は「リチウムイオン電池の事故件数が増加傾向にある。特にモバイルバッテリーの事故が増えており、2011年に比べて3倍以上になっている」と説明した。
モバイルバッテリーの材料となる「リチウムイオン電池」は、2種類の電極板(負極、正極)でできている。両電極は、電解液を染み込ませた「セパレータ」で仕切られている。石川教授によると「粗悪な製造」「落下の衝撃」「バッテリー内部でのガスの発生」などで負極と正極が接触してショートし、発煙や発火につながるケースがあるという。
モバイルバッテリー事故の原因として「熱」も見過ごせない。リチウムイオン電池は「熱に弱い」という特性があり、推奨使用温度は0〜45℃とされる。60℃以上の高温環境にさらされると、電池内部の化学反応が不安定になってバッテリーの膨張やガスの発生といったトラブルが起きる可能性がある。
石川教授は、製品評価技術基盤機構(NITE)のデータを引用して「8月に事故発生件数が増えている。周囲の環境が暑くなると、バッテリーが発熱して危険な温度領域に近づきやすい」とし、車内に放置しないなど適切な利用を呼び掛けた。
モバイルバッテリーの発火、どう防いでる? CHARGESPOTに聞いてみた
モバイルバッテリーに関連する事故が増える中、CHARGESPOTは事故をどのように防いでいるのか。記者説明会に登壇したINFORICHの広瀬拓哉氏(執行役員 Group CPO)に、独自インタビューを実施した。
広瀬氏は、安全策の1つ目として「高品質なバッテリーを採用している」と説明した。世界的スマートフォンメーカーが使うバッテリーセルを用いて、日本など各国の規制基準を満たす製品を利用しているという。「残念ながら、基準を満たさない安価なバッテリーが流通している。私たちは、お客さまの安全を第一に、品質について妥協しない」(広瀬氏)
安全策の2つ目が「リアルタイム監視」だ。駅や商業施設などに設置しているバッテリースタンドがインターネットにつながっており、返却されたモバイルバッテリーの状態や充電中の様子を24時間365日リアルタイムで監視している。
全てのモバイルバッテリーを個別にスコア管理しているといい「バッテリーの温度」「充電効率から導いたバッテリー容量」などのデータを基に、劣化具合を計算する。さらにユーザーのクレームなど多数のパラメーターを加味して、異常を検知した場合は客に貸し出さないようにロックする。異常なバッテリーへの給電を遮断する機能も備えているという。
「2018年のサービス開始直後は、ここまで監視体制を整えていなかった。徐々に整備しており、いまでは自信を持って運営している。(バッテリーのスコア計算は)8年かけてかなり改善してきた。回収すべきバッテリーを効率よく回収できている」(広瀬氏)
モバイルバッテリー「1年で8割回収」 コストは
バッテリーに異常が見つかったら、すぐに新品と交換する。CHARGESPOTでは、モバイルバッテリーの利用回数が650回に達する前に回収しており、現場投入から1年以内に回収するものが約80%に上るという。劣化していなくても最大3年で入れ替える。
広瀬氏は「サービスの利用数が増えるほど、故障や劣化が早く進む。サービスが拡大することで、回収までの時間が短くなっている」とコメントした。
回収・交換のコストについて、広瀬氏は「具体的な金額は答えられない」としながらも「黒字で運営できるくらいだ」と話した。
安全性に対する関心の高まり「CHARGESPOTとして応える責任」
INFORICHは8月上旬に、モバイルバッテリーの安全啓発活動を実施。東京都新宿区の東急歌舞伎町タワーやビックカメラの店舗に、不要になったモバイルバッテリーを回収する専用ボックスを設置した。
広瀬氏は「安全性を前面に打ち出した施策は初めてだ。世の中の関心の高まりに対して、われわれも応える責任がある」と述べた。
「モバイルバッテリーを個人で管理するものから(事業者が管理するシェアリングサービスの)管理を通すことでリスクを軽減し、必要な時にだけ借りる、返すものにする。シェアリングサービスで、安心で快適なライフスタイルを提案していく」(広瀬氏)
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