企業がポッドキャストを始めるのは、なぜ? じわじわ効く「声」の力(3/6 ページ)
企業のポッドキャスト活用が広がっている。なぜ今、企業は「声」に注目するのか。認知や採用、ファンづくりにつながる音声の強みと、継続する上での課題を解説する。
声がつくる「信頼」の蓄積
では、なぜ「音声」なのか。カギは接触の質にある。自分から選んで再生するからこそ、その内容は身構えられることなく届く。
接触時間が長い
ポッドキャストには20〜40分、ときには1時間を超える番組も少なくない。それらは通勤・通学などの移動中や、家事、運動、ゲームなど、別のことをしながら聴かれることが多い。派手さはなくても、耳から届く声は日々の生活に自然に溶け込み、比較的長い時間にわたってリスナーとの接点を生み出す。
実際、筆者が手掛ける番組では、エピソード全体のうち、実際に再生された割合を示す「平均再生率」が、おおむね80〜90%となっている。30分の番組であれば、平均して24〜27分が聴かれている計算だ。これは筆者の番組だけに見られる傾向ではない。
2018年に『WIRED』が米国の主要ポッドキャストネットワーク各社に取材した記事では、Midroll Media(米国のポッドキャスト広告・配信会社)で平均約90%、Panoply(米国のポッドキャスト制作会社)およびHeadgum(米国コメディー系ポッドキャストの制作会社)で通常80〜90%までエピソードが聴かれていると報告されている。(関連リンク)
数秒から数十秒で情報に触れ、すぐ次のコンテンツへ移ることも珍しくない中で、一つのコンテンツにこれだけ長く接触してもらえることは、ポッドキャストの大きな特徴である。
押し売り感が薄い
また、ショート動画など尺の短い媒体ほど訴求が強くなりがちで、受け手は身構えやすい。一方、音声なら、経緯や体験談から自然に語り出せる。聴き手は「売り込まれている」というより「話を聞いている」感覚のまま、内容を受け取っていく。
声そのものが情報を運ぶ
さらに、間の取り方や笑い声、ふと熱が入る瞬間など、文字では伝わりにくい感情も、音声ならまっすぐ届く。喫茶店で隣の会話につい聞き入ってしまうような、自然な親しみやすさがある。
長い接触、感情の伝達、そして双方向のやり取り。これらが折り重なった先に生まれるのは、情報の伝達ではなく信頼だ。「なんとなく良い」「ここなら任せられそう」という感覚は、最後のひと押しを左右する。ポッドキャストは、数字では測りにくい信頼を少しずつ積み上げていくメディアだといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
やっぱり、すぐ辞める新人は世の中をナメているのか 「倍速退社」の背景にある企業の病
4月の入社後、すぐに退職代行サービスを利用して会社を辞める若者がいる。「そんな人は、ロクな大人にならない」と言いたくもなるだろうが、原因は若者だけにあるわけではなく……。
IT人材は東京のどこに住んでいる? 首都圏の“知られざるテックエリア”を地図で見る
首都圏に集中するIT人材の居住傾向を可視化。中野や下北沢、五反田など、意外な“隠れたテックエリア”の分布や、若手エンジニアが選ぶ街の特徴をデータで読み解く。
「辞めたけど良い会社」 ランキング ワースト30社の特徴は?
辞めたけれど良い会社は、どのような特徴があるのか。IT業界で働いた経験がある人に聞いた。
