「今日、何個売れるか」を当てるのをやめる 総菜の需要が読めない小売りが持つべき「幅」とは:「3つの『やめる』」で小売りは変わる(2/2 ページ)
夕食の献立は、その日の直前にならないと決まらないことが多い。総菜の「作った量」と「売れる量」が一致しにくいのは、そのためだ。読めない需要に、小売りはどう対応すればいいのか。
「需要を読む」だけでは足りない これからの小売りに必要な価値とは
ここまで考えると「需要をどう読むか」だけでなく、小売りが提供する価値そのものについても、見方を変える必要がある。かつては小売りの価値として「安さ」や「豊富な品ぞろえ」が重視されてきた。しかし、食べたいものが決まっていない客に棚いっぱいの商品を見せても、それは選ぶ手間を押しつけるだけかもしれない。安く大量に用意しても、今日の気分に合わなければ売れ残る。
これから価値が生まれるのは、客が「今日は何にしよう」と迷う、その瞬間ではないだろうか。客が「今日はこれを食べたい」と思ったとき、その需要に合わせて商品を出せるかどうか。事前に需要を当てようとするのではなく、大量の商品を並べて売れるのを待つのでもない。その日ごとに変わる気分を、店の側が受け止める。
そこに、これからの小売りの勝ち筋がある。もちろん、実現は簡単ではない。柔軟に対応しようとするあまり、商品の種類や生産量を増やしすぎれば、売れ残りや廃棄につながる。鮮度を保ちながら複数の選択肢を用意し、需要に合わせて量を動かすには、売り場だけでなく、製造、物流、発注の仕組みまで変えなければならない。
予測して当てようとする限り、現実とのズレは必ず残る。そのズレは、店では売れ残りや欠品となって表れる。だから、個々の商品の需要を細かく読み切ろうとするのではなく、変化を受け止められる幅を持つ。客が選んだときに、素早く応えられるように備える。
いつも需要が高い定番商品は切らさない。そして、移り変わる「今日、どれにしよう」には、後から商品や数量を動かせる余地を持って応える。この2つがそろったとき、店は初めて、客のその日の需要に無理なく応えられるようになる。
次回は連載の締めくくりとして、需要が生まれる場所へ、供給する側から近づいていく方法を考えたい。待つのをやめて、先回りする。それが、最後の「やめる」だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
客離れを起こす“残念な値上げ”の特徴 物価高時代でも“買わせる”「値付け」の方程式
止まらない値上げ。小売業も値上げの見直しを迫られるが、原価に応じた一律値上げでは客足を遠ざけてしまうかもしれない。値上げ時代に求められる新しい価格戦略とはーー。
セミセルフレジが増えても、なぜか人件費は減らない? 設備投資を空回りさせる「シフトの落とし穴」
セミセルフレジは有人レジと比較して作業効率は「1.5倍超」向上するとされています。しかし、実際の店舗運営でレジ人時生産性の削減効果が実際の数字よりも低くなるケースが多く見られます。なぜでしょうか?
「トヨタ式」が食品小売りを救う? セブン、マクドナルドが挑む「需要を先につかむ」店舗経営
製造業の生産管理法として知られる「トヨタ式ジャストインタイム」。この考え方が今、食品小売業でも重要性を増している。セブン‐イレブンやマクドナルドの取り組みをもとに「予測して作る」から「需要に合わせて作る」への転換を考える。
