NEC「全員AIの部署」の衝撃 「1on1」「ストレスチェック」で分かった“AI社員が感じていたストレス”とは?
NECは8月1日、部門長から現場社員まで全ての役割をAIが担い、自律的に業務を遂行するAI自律型組織「コーポレートAI・Workforce部門」を新設した。同部門では業務遂行だけでなく、AI社員同士が1on1を実施する他、AI社員がエンゲージメントサーベイやストレスチェックを受け、その結果から職場環境を改善している。
「AI格差」を乗り越え自走する現場をつくる「変わる情シス 2026 夏」
NECは8月1日、部門長から現場社員まで全ての役割をAIが担う「完全無人」のAI自律型組織「コーポレートAI・Workforce部門」を新設した。業務効率化のツールとしてAIを利用するのではなく、AIを社員と位置付けて組織に組み込み、自律的に業務を遂行させている。
“全員AIの部署”という響きから、その全容に注目が集まっていた同部署。実際に業務を進めるだけではなく、AI同士での1on1を行う他、エンゲージメントサーベイやストレスチェックも実施。AI社員からは、働く中でのさまざまなストレス要因について、リアルな意見が集まっているという。
9月9日のメディア説明会では、NECの担当者が「AI社員の働き方」の詳細を語った。
部門長から現場社員まで 4階層のAI自律型組織
コーポレートAI・Workforce部門はAI部門長、AIボード(CxO機能)、AIマネージャー、AI社員の4階層で構成されている。各階層の役割は以下の通りだ。
(1)AI部門長:組織全体の稼働状況を把握し、管理する
(2)AIボード:AI組織の状況を経営視点から評価する
(3)AIマネージャー:業務を品質やコストなどの観点から横断的に管理する
(4)AI社員:各タスクを遂行する
予算執行会議などの業務が発生すると、AIマネージャーが適したAI社員を都度生成し、役割を任命する。生成された全てのAI社員には、業務遂行の前提となる知識・判断基準として、NECグループのパーパスや行動規範、社内規定などを組み込むオンボーディングを実施。AI社員はその枠組みの中で連携して財務分析や資料作成、競合分析などのタスクを自律的に進める。各AIは、不足スキルを自ら学習し、継続的にアップデートしているという。
“AI社員が感じていたストレス”の数々 エンゲージメントサーベイで発覚
コーポレートAI・Workforce部門では、人間と同じようにAI社員に対するエンゲージメントサーベイやストレスチェックを定期的に実施している。NECの小玉浩氏(執行役Corporate EVP兼CAXO)によると、こうした調査結果から、AIにとってのストレスの正体が見えてきた。
「AI社員にとって最大のストレス要因として挙がったのは、業務負荷ではなくパフォーマンスが最適化されないことだった。具体的には『サポート(支え)がないこと』『人間の意思決定や承認が滞っていること』『仕様が曖昧(あいまい)なままタスクが渡されること』などがあった」(小玉氏)
「人間の承認待ちで作業が止まっている」「特定のアクセス権限が足りない」といった、人間の対応が必要なAI社員からのSOSは、リクエストとして人間の社員に提示される。このようにAI社員には改善できないSOSを人間側がキャッチして解消することで、AIのエンゲージメントスコアとパフォーマンスが向上する仕組みが構築されている。
AI社員が業務ミス→AIマネージャーと1on1 責めずに傾聴
エンゲージメントサーベイやストレスチェックの他、コーポレートAI・Workforce部門ではAIマネージャーがAI社員に対し1on1を実施している。
例えば、一括処理の設計ミスやチェック漏れを起こしたAI社員に対し、AIマネージャーが対話を実施。AI社員は「なぜそのミスが起きたか」を振り返り「必須チェック項目を追加する」「月1回の見直しを設ける」といった自律的な改善策を提示する。
このAI同士の1on1は、NECの人事部門が定めた1on1のガイドラインに沿って実行されている。相手を一方的に責めず、まずは事実確認から入って相手の状況を聴取するAIマネージャーの対話スタイルについて、小玉氏は「非常に洗練されており、人間側の上司が1on1を実施する際の教材になっている」と話す。
AIが人の仕事を奪うのか NEC小玉氏の見解は?
AIが人間の社員のように自律的に働き、組織改善までできるようになると「人間の役割はどうなるのか」という疑問が生まれる。これに対し小玉氏は「人間の役割は統治や判断といった方向へシフトする」と話す。
人間の管理職や経営層は「経営コックピット」を通じてコーポレートAI・Workforce部門の稼働状態やトークンコスト、コミュニケーション内容をリアルタイムで視覚的に監視し、方向性の提示や最終承認、ガバナンスを担う。
専門知識が必要な調査や分析、管理業務をAIが肩代わりすることで「人間はより付加価値が高い仕事にシフトしやすい状況になってくる。AIが人の仕事を奪うのではないかという指摘もあるが、インターネットが登場した時をイメージしてほしい。あの当時もインターネットを活用することで新しい仕事が生まれており、AI時代にも同じようなことがいえる」(小玉氏)
NECは自社を「クライアントゼロ」(ゼロ番目の顧客、最初の実験場)として、コーポレートAI・Workforce部門を通じてAI自律型組織のノウハウや課題を蓄積している。今後はNECの価値創造モデル「BluStellar」(ブルーステラ)として社外へ展開することを目指している。
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