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富士通、国産CPU「モナカ」販売 スパコン技術を結集した“小さなチップ”に託す「3兆円のAIビジネス」の行方

富士通が国産CPU「モナカ」を販売する。同社技術を結集した“小さなチップ”に託したのは、2035年度までに狙うAI市場での3兆円規模のビジネス創出だ。果たして、その行方は。

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 富士通は9月14日、同社が開発したAI向け国産CPU「FUJITSU-MONAKA」(富士通モナカ)と、同CPUを搭載した国産サーバ「Fujitsu MONAKA Server」を11月から販売すると発表した。まずは、データセンター事業者や金融分野などの顧客へ提供する。

 「FUJITSU-MONAKAは、これまでスーパーコンピュータ(スパコン)の『富岳』など世界トップレベルのコンピュータ開発で培った技術を結集している」――富士通の時田隆仁社長CEOは、5月28日の「中長期経営ビジョン2035」説明会でこう述べた。

 同社は、2035年度までにAI市場で3兆円規模のビジネス創出を目指しており、その中核の一つにFUJITSU-MONAKAを挙げている。“小さなチップ”に託した富士通の“大きな構想”、その行方は。

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中央にあるグレーの部品がFUJITSU-MONAKAの試作品(編集部撮影、5月28日)

富士通、国産CPU「モナカ」販売 “小さなチップ”に託した“大きな構想”

 富士通は、FUJITSU-MONAKAについて「日本国内で設計・開発した国産次世代CPU」と説明している。富岳に搭載したスパコン向けCPU「A64FX Fugaku」を前身としており、同社がコンピュータ開発で得た技術や知見を生かして開発した。

 FUJITSU-MONAKAは高い計算性能とデータ供給能力を両立しており、AI推論の処理能力は他社製CPUの2倍に上るという。また電力効率も他社製CPUの2倍に達し、同じ計算処理をする場合にサーバ台数と消費電力を半減させられる可能性がある。

 富士通は、同CPUを開発した背景について「計算資源の供給不足と電力需要の急増が新たな経営・社会課題となっており、限られた電力でより高い処理性能を実現できる低消費電力なCPUの重要性が増している」と説明する。

 生成AIの「学習」では、大量のデータを高速に処理できるGPUの需要が高まった。しかし、GPUは高性能だが「価格が高い」「消費電力が大きい」などの課題がある。

 AIエージェントが登場し、生成AIの主戦場が「推論」に移ると、CPUが脚光を浴びた。推論処理では、単純なデータ処理だけでなく「アプリケーションとの連携」「データの前処理・後処理」「タスクの配分」「GPUの管理」などが必要になる。CPUは、汎用(はんよう)性が高く“司令塔”として機能する。GPUよりも価格が安く、消費電力が小さいという特徴もある。

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シリコンウエハーを切り出してFUJITSU-MONAKAとしてパッケージングする(編集部撮影、5月28日)

モナカ搭載のAIサーバを販売 「国内製造」にこだわるワケ

 FUJITSU-MONAKAは、省電力性に優れた設計の「ARMアーキテクチャ」を採用。CPUのコア(計算処理ユニット)は、最先端の製造技術である「2ナノメートルプロセス」で製造する。データを読み書きするSRAMや入出力(I/O)のダイ(回路基板)は5ナノメートルプロセスで作り、各要素を重ねる積層構造にしている。

 AI推論の土台となる行列計算をハードウェア面で支援するといい、ソフトウェア側の最適化と組み合わせることで、富士通は「CPU単体で実用的なAI推論性能を実現する」と説明する。

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FUJITSU-MONAKAの構造を拡大した模型(編集部撮影、5月28日)
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FUJITSU-MONAKAの構成(編集部撮影、5月28日)

 同CPUを搭載したサーバが「Fujitsu MONAKA Server」だ。国内で設計・開発し、石川県かほく市の笠島工場で製造する。国内で製造することで、部品の出どころや製造履歴を追跡可能にし、サプライチェーンの透明性を確保する狙いがある。

 サーバラック1区画分に当たる「1Uサイズ」のサーバは、空冷で室温40度、水冷で水温45度の環境で利用できる。同社は、サーバの冷却における電力消費量を最大80%削減できるとする。

 FUJITSU-MONAKAは、クラウド事業者、データセンター事業者、サーバベンダー向けに11月から販売する。Fujitsu MONAKA Serverは、金融、通信、製造分野の顧客に先行提供し、2027年4月以降に日本と欧州向けに出荷する予定だ。サーバ製品は、富士通グループとして研究機関や防衛分野、HPC(High Performance Computing)用途など幅広く提供する。

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Fujitsu MONAKA Serverのイメージ(出所:富士通のプレスリリース)

2035年度までに「3兆円」 新CPUに託したAIビジネスの行方は

 国産CPUと国産サーバをリリースした富士通。同社が構想するのが「ソブリンオーケストレーション」だ。ソブリン性(主権)を確保した独自技術や国産製品、国産サービスを組み合わせて「主権ある最適なAIシステム」を目指す。

 同社はすでに、企業向けAIモデル「Takane」(タカネ)、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」(コヅチ)を提供しており、計算基盤となるスーパーコンピュータや量子コンピュータなども扱っている。AI導入を支援するコンサルティングサービス「Uvance Wayfinder」や、顧客の現場に入って支援するエンジニア「FDE」(前線配備エンジニア)もサービス化済みだ。

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ソブリンオーケストレーションの概要(出所:富士通「中長期経営ビジョン2035」)

 今回、FUJITSU-MONAKAとFujitsu MONAKA Serverの提供を始めたことで、計算基盤を支える“国産パーツ”がそろった。

 「FUJITSU-MONAKAをはじめ、当社が持つ世界有数の技術にさらに磨きをかける(中略)。地政学的な緊張、データ主権のニーズが高まる中、当社はFUJITSU-MONAKAやFujitsu Kozuchi、量子技術などを中核にし、計算インフラからAIプラットフォームまで自社技術で構築し、ソブリン性を確保することで、信頼できるテクノロジーを提供する」(時田社長)

 富士通は、2035年度までにAI市場で3兆円のビジネス創出を目指している。「ソブリンプラットフォーム」領域で、1兆5000億円の売り上げを立てる想定だ。FUJITSU-MONAKAの販売開始によって、ソブリンプラットフォーム領域に弾みをつけられるか。

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5月28日の説明会に登壇した時田社長(編集部撮影)

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  • 開催日:9月14日(月)〜 9月18日(金)
  • 形式:オンラインセミナー
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