“投票用紙の会社”ユポ、実は「選挙の売り上げ数%」 世界で稼ぐニッチトップ技術のヒミツ、社長が明かす(1/2 ページ)
「選挙の投票用紙」で知られる合成紙大手ユポ。実は投票用紙の売上比率は数%にすぎない。同社の収益の柱は、洗剤ボトルなどと一体化する「インモールドラベル」だ。素材提供にとどまらず、成形金型やロボットの導入工程まで丸抱えで指南するエコシステムを構築。後発の参入を防ぎ、世界シェア2%からさらなる拡大を狙う。世間のイメージとは異なる同社の収益構造と、グローバルニッチトップの普及戦略に迫る
投票箱に投げ入れられた瞬間、折りたたまれた紙が自らスッと開いていく――。これは、合成紙メーカー、ユポ(東京都千代田区)の特殊紙だ。
国政選挙の投票用紙に使われる素材メーカーとして知られる同社は、開票作業を劇的に効率化させてきた。“投票用紙の会社”というイメージが強い同社だが、それとは裏腹に、実は選挙関連の売上高は全社の「わずか数%」にすぎない。
ユポが半世紀かけて築き上げた収益の柱は、大手日用品メーカーの洗剤ボトルや詰め替え用パックに融合する「剥がれないラベル」(インモールドラベル)や、バス停や電車内の高機能広告、さらには歯科医院の使い捨てシートなど選挙以外の用途だ。「ユポ」紙は、今や世界80カ国以上のビジネスを支えるニッチトップ技術に成長した。
同社は2030年に向け「利益率倍増」という目標を掲げている。7月には社名をユポ・コーポレーションからユポに変更し、ブランドロゴも刷新した。収益構造の秘密を、内藤勝弘社長と宮口卓也戦略企画本部長に聞いた。
投票用紙は「売上高の数%」のみ 驚きの収益構造とは?
――ユポといえば、投票用紙の会社のイメージが強いと思います。もともとユポは、どのような経緯で選挙に使われるようになったのでしょうか。
内藤: 顧客側の課題が出発点でした。「開票を早く終わらせたい」「人件費を抑えたい」といった要望があったのです。開票には人手がかかりますから、作業時間が短くなるほどコストは下がります。その集計作業で最も時間を取られるのが、折られた投票用紙を1枚ずつ開く工程でした。ユポであれば、投票箱に入れると勝手に開きます。
当社は昔から、折り目がつきにくく、折ってもすぐに戻ろうとする性質を持つ紙を作ってきました。実はこの性質は、先輩たちが地図の仕事を手掛けていた頃には「折れないじゃないか」と欠点として扱われていたそうです。それが投票用紙では、逆に利点になりました。
――需要が数年に一度に集中する商材でもあります。
内藤: 衆議院は遅くとも4年に1度、参議院は3年に1度は選挙がありますから、まとまった量が動くのは2、3年に1度です。国政選挙のインフラを支える位置付けの商品ですので、常に在庫を抱えています。今後、国民投票のような新しい制度が出てくる場合も、早い段階で時期が分かっていないと供給の仕組みが作れません。
――売上高に占める比率はどのくらいでしょうか。
宮口: 実は当社は、製品に貼るラベル事業が主力です。投票用紙の比率はそれほど高くありません。国政選挙があった年でも数%で、10%には届きません。選挙で稼いでいる会社というイメージは変えたいところです。消費財に使われるラベルのように、日常的に使われる製品の方が、圧倒的に(比率が)大きいのです。
――日常的に使われるラベルとは、具体的にどのようなものですか。
内藤: 詰め替え用洗剤のラベルがそうです。触ると分かりますが、普通のシールのような引っ掛かりがありません。「インモールドラベル」といって、容器を成形する金型の中にあらかじめラベルをセットし、プラスチックと直接一体化させる技術です。後から貼り付けるシールと違って剥がれず、境い目の引っ掛かりもない「ノンラベルルック」と呼ばれる美しい仕上がりになります。洗剤やオイルなどのボトル用ラベルで使われ、大手日用品メーカーなどが主要取引先です。
値札やキャンペーンまるごとシールなどで、きれいに剥がせるものがあるでしょう。あれもユポが多いです。昔は紙でしたから、剥がすとビリッと汚く破れていました。当社の製品は選挙以外でも、意外と身近なところで多くの方々が触っています。
――それほど多岐にわたる用途は、どのように開拓してきたのでしょうか。社内に専門チームがあるのですか。
内藤: 用途を当社が思い付くわけがないんです。どの製品も、顧客の側で考えて開発していただき、気が付いたら使われていた。そういう商品が実に多く、把握していない用途はたくさんあります。
細かいものまで含めると、6割から7割は分かっていません。顧客は何かしら困り事を抱えていて、ユポに行き当たり、自分たちで加工してみて、やりたいことを実現していくケースが結構あるのです。
当社の営業は「これはこの用途にしか使えません」と売るのではなく「こういう機能を持っていますので、困り事があれば使ってみる価値はありませんか?」というアプローチになります。顧客の課題解決に寄り添い、一緒に用途を作り出してきた結果です。
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