「グレーゾーン」のカスハラ、どう対応? 時間拘束、過度な要求……客の怒りを“エスカレートさせない”企業の工夫:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/2 ページ)
10月1日、全ての企業にカスハラ対策が義務付けられた。こうした中、カスハラと正当なクレームの「グレーゾーン」の線引きの難しさや、加害側の自覚不足が課題となっている。組織はどんな取り組みを実施すべきか。
10月1日から労働施策総合推進法の一部が改正され、全ての企業に対して「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」が義務化されます。具体的には、従業員が相談できる窓口や専門家の設置、従業員を毅然(きぜん)と守る企業側の体制づくりなどが求められます。
これまでは「現場の忍耐」や「個人のスキル」の問題とされていた状況が、改善されるきっかけになればと願ってやみません。
一方、カスハラはグレーゾーンが多いため、自分の行為が「カスハラと認識しにくい」という特性もあります。
弁護士ドットコム(東京都港区)が実施した調査では「カスハラの加害側になったことがある」と答えた割合は約1割で、そのうち7割超は「自身の言動がカスハラに当たる可能性があると認識していなかった」と回答しました。「カスハラの動機」については「正当な批判・論評だと思ったから」が最も多く、約6割を占めていました。
カスハラ周知動画が話題に 線引きが難しいケースも
そんな中、話題になっているのが、ANAやJALなどエアライン19社が加盟する業界団体が制作した「カスハラ対応周知動画」です。
「次のような行為はカスタマーハラスメントに該当する可能性があります」という言葉で、9つの項目に分類したカスハラ行為を紹介しています。その内容には「こんなひどいお客がいるのか?」と驚きつつも「これに近いことを、ひょっとしたら自分もやってしまうかも」と思わせるリアルさがあります。
例えば「暴言・大声、侮辱・差別、誹謗中傷」や「脅威を感じさせる言動」の項目にある「バカ」「あほ」「辞めた方がいい」「女のくせに」「男の上司を出せ」「死ね」「仕事をできなくさせてやる」などには、その乱暴さにあきれてしまいます。しかし「過剰な要求」に関する項目の「規定やルールを超えた特別対応を執拗(しつよう)に要求する行為」(補償・付添・アップグレードなど)は、どこからが「執拗」で、どこからが「執拗でない」のか。その線引きはケースによって異なり、曖昧(あいまい)で判断が難しいところです。
言うまでもなく、カスハラはあってはならない行為です。
しかし、コミュニケーションという視点から考えると、客が投げた「ボール」を、相手(現場の従業員)がどう打ち返すか次第で、グレーゾーンを「カスハラ」にせず、スムーズな解決へ導くこともできるはずです。
グレーゾーンのカスハラをどう受け止めるか
私自身、国際線の新人客室乗務員だった頃、機内でエコノミークラスの乗客から「アップグレード」を依頼され、ルール通りにお断りしたことがあります。それでも諦めない乗客に「申し訳ございません」と断り続けました。すると乗客はさらに逆上し、機内に響き渡る大声で罵声を浴びせたのです。「お前は謝ることしかできないのか! だからダメなんだよ! 最低だな!」と。
あまりの理不尽さに驚いた22歳の私はその場で号泣し、慌てて飛んできた先輩CAが引き継ぎました。すると、なんとその乗客はそのままエコノミーの座席で大人しく過ごし、機内を出るときには、満面の笑みを浮かべていたのです。
先輩はフライト後に「断ったのは正しい。でも、どんなことがあっても客の前で泣くな!」と一言。どう対処すべきだったかは教えてくれませんでした。
以降、フライトの経験を重ねるうちに、過剰な要求をされても、うまく対応できるようになりました。
念の為に断っておきますが、カスハラは現場の対応次第、と言っているのではありません。グレーゾーンをカスハラにしないためには、顧客である「私」たちが気を付けるだけではなく、従業員が顧客の真意に少しだけ寄り添うためのスキルや知識を身に付けることも有効だと思うのです。
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