「皿になるフライパン」の開発秘話 燕三条の老舗メーカーに聞く“当たり前”を取り払った商品の生み出し方は?(2/5 ページ)
皿とフライパンが一体となった「Hetta!」をヒットさせた和平フレイズ。こうしたアイデアは、どのように生まれ、形になっているのか……?
大衆と個人、どちらも重視 商品開発で重視する3つの視点
同社の商品開発では、大きく分けて3つの視点を重視している。
まず、市場規模や社会環境などを捉えるマクロの調査だ。カテゴリーごとの市場動向を独自に調べるほか、PEST(政治・経済・社会・技術)分析なども用いながら大きな流れを把握する。
次に、取引先から得る情報だ。和平フレイズはナショナルブランド(NB)に加え、OEM(相手先ブランドによる生産)やPB商品も手掛けており、大手量販店やEC事業者との取り組みも多い。個別企業との情報は守秘義務の対象となるが、そこで得た知見をNB商品の開発にも生かしているという。
そして最後に、特定の一人の生活者に目を向ける「N1」の視点だ。伊東氏は「開発担当者自身も、その家族や友人も一人の生活者です。マクロのデータを見ることも重要ですが、使うのは一人ですから」と話す。
そのため、開発メンバー自身が料理をした時に感じた使いにくさや、家族が道具を使う状況などもアイデアとして取り入れている。チームは年代やライフステージも異なるため、それぞれの生活から見つけた違和感を持ち寄っているという。
また、気付きはすぐに共有する。市場調査の際、見慣れない商品を発見したらその場で写真を撮り、Teamsのグループチャットへ投稿。「これ、どう思う?」「うちならこうしたい」とやり取りが始まるという。
「会議だと“お披露目会”のようになってしまうことがあります。それより重視しているのが、アイデアがまだふわふわした柔らかい時の議論です」と伊東氏。
「身近な一人の困りごと」から生まれた商品
その「身近な一人の声」から生まれた商品の一つが、自立する片手鍋「ココミッケ」だ。
きっかけは、チームの一人が目にした義母の姿だった。年齢を重ねるにつれて調理器具を収納棚から出し入れすることを負担に感じ、フライパンをコンロ脇に立てて置いていたという。
自身も狭いキッチンで小鍋を使う際、出しっぱなしにすると取っ手が邪魔になることに不便さを感じていた。そんな中、自立する湯桶を知り「これを鍋に応用できるのではないか」と考えて商品化につながったという。
しかし、こうした困りごとを起点にしても、必ずしも市場に受け入れられるとは限らない。ココミッケは取引先の営業担当者から好評だったものの、販売実績は想定を下回った。同社では、「鍋が立つ」というアイデア自体は魅力的でも、消費者が重視する機能との優先順位や、実現するための価格との間にズレがあった可能性があると分析している。
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