「顧客アプリ」は格好の餌食に 相次ぐ不正アクセス、自社を守る手立ては?: がっかりしないDX 小売業の新時代(3/5 ページ)
企業を狙った不正アクセスなどによる情報漏洩が後を絶たない。攻撃者がAIを使っていた例も明らかになったほか、顧客向けアプリが攻撃の入り口になっていることも分かった。今回は一連の不正アクセス事例を基に、守る側は何から手をつけるべきかを整理する。
攻撃者はAIに「入り口探し」を任せていた
ここから少し技術の話になります。この先に出てくる用語を先に表にまとめました。分からない言葉が出てきたら、この表を参考にしてください。
小売業が抱える標的となりやすい入り口を、攻撃者はどのように見つけているのでしょうか。調査機関の分析を読み解くと、攻撃者の作業は4つの工程に分かれています。
(1)アプリを解析し、APIを特定
(2)弱点を探し、既知の脆弱性を自動で探す
(3)APIから攻撃し、失敗すれば手を変える
(4)盗んだデータの売り先を探す
国内のセキュリティ事故への対応支援や情報収集を担う一般社団法人「JPCERTコーディネーションセンター」(JPCERT/CC、東京都中央区)は10月15日、攻撃者が使ったとみられるサーバーの調査結果を公表しました。サーバーには、Androidアプリの配布ファイルを解析し、アプリが使うAPIを特定した痕跡が残っていました。JPCERT/CCは、攻撃者がAIを使って既知の脆弱性を探し、API経由で攻撃していたことも確認しています。標的には、日本以外の地域向けのWebサービスも含まれていました。
この手口には名前もつきました。NICT(情報通信研究機構)は10月13日、公開アプリを解析して接続先のサーバーを狙う攻撃を「A2B攻撃(App-to-Backend Attack)」と名付け、注意を呼びかけています。
また、GMOサイバーセキュリティ byイエラエ(東京都渋谷区)は10月19日、日本企業を狙った攻撃元のサーバーで、攻撃者が「ARTEX」を使っていたと発表しました。ARTEXは、中国で開発されたオープンソースの侵入テスト自動化ツールです。本来は守る側に代わってAIが弱点を探す道具ですが、攻撃者はこれを攻撃に転用しました。
韓国の金融機関への攻撃についても、米サイバーセキュリティ企業のCrowdStrikeが10月7日に報告しています。攻撃者はARTEXとAnthropicのClaude Codeを使っていました。攻撃者のサーバーに残っていたAIの利用履歴から、攻撃の進め方が分かっています。
侵入の様子は、サイバーセキュリティクラウドの観測から分かります。同社は9月18日〜10月8日の観測記録を調べ、10月9日に結果を公表しました。同一とみられる攻撃者は、約40分間に326個のIPアドレス(接続元を示す番号)を使い分け、1200件を超えるアクセスを繰り返していました。本人確認のすり抜けに失敗するとログインを試し、それも失敗すると、他の利用者のポイントを抜き取る方法を探しています。応答を見ながら手を変える動きです。同社は、AIを使った直接の証拠ではないとしたうえで、AIエージェントによる攻撃の可能性を指摘しています。
もちろん、全ての事案でAIの関与が判明したわけではありません。原因は事案ごとに異なります。
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