【主張】そもそも正社員という呼び名をやめよう――竹中平蔵氏「正社員をなくせ」を受けて:働き方の見取り図(3/3 ページ)
「正社員をなくせばいい」。慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏がXで発信したことが、賛否両論を巻き起こした。そもそも「正社員」や「非正規社員」という言葉に法律上の定義はない。曖昧さを伴う観念的な議論の中で取り残されている雇用の現状を考えてみたい。
「正社員」という呼び名、やめませんか?
非正規や第3極など正社員以外の働き方の選択肢を広げると、悲観的な言説が聞かれることもあります。2015年に労働者派遣法が改正された際には、規制緩和と見なす考え方が広がり、派遣社員だらけになって正社員がゼロになるという主張が見られました。
しかしながら、10年以上経ったいまでも正社員は雇用者の60%以上を占め、派遣社員は2.5%ほどのままです。職場にとって強い配置転換権を行使できる正社員は、特に中核人材を囲い込むに当たって非常に便利で使い勝手の良い雇用形態に他なりません。
一方、安定性の高い正社員に魅力を感じる働き手がいることは先述した通りです。職場からも働き手からも要望がある限り、数の増減はあったとしても正社員という雇用形態はなくなることはなく、なくす必要もないはずです。
非正規社員にも、自らあえて選んでいる「本意型」の人がいます。長期就業に息苦しさを感じてあえて有期契約を望む人や、あれもこれもとマルチタスクを求められるのは避けたい人など希望はさまざまです。
それら多様な希望をかなえられるようにしていくことは、職場にも働き手にもメリットをもたらします。にもかかわらず、これまで多くの職場で「正社員か非正規か」という二元論の中に、働き方の選択肢を無理矢理押し込めてきたきらいがあります。
正社員だけを正しいと見なし、それ以外は非正規だとする考え方は限界を迎えています。第3極の働き方が広がる中で必要なのは、誰もが最適な働き方を選びやすくする法制度や職場体制の整備です。
一方でなくすべきは、正社員や非正規といった働き方の選択肢ではなく、それ以外を正しくないかのように思わせてしまう“正社員”という呼び名なのではないでしょうか。
著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)
ワークスタイル研究家。「実務×調査×生活」の横断的見地から、最適な働き方に関する提言を行う。1973年三重県津市生まれ。愛知大学文学部卒。20年以上に渡り、人材サービス企業の役員・管理職として事業現場から管理部門まで幅広い領域に従事。『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、厚生労働省委託事業検討会委員・技術審査委員などを務める。『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層のべ5万人以上の声を調査・分析。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」他メディア出演・執筆多数。
現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。
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