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「頑張る人が損をする」 増える「静かな退職」、社員の“自己犠牲”にタダ乗りしてきた企業が見直すべき8つのこと:AI・DX時代に“勝てる組織”(2/4 ページ)

「静かな退職」は個人の怠慢ではなく組織のゆがみへの防衛反応だ。精神論を脱し、社員が正当に報われる環境へと導く「8つの具体策」と実務に役立つ組織の診断項目を提示する。

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施策4:マネジャーの「過負荷からの解放」

 「直属の上司との関係性」すなわちマネジメントの問題も静かな退職を引き起こす原因です。米調査会社のGallupによるレポートでは、低エンゲージメントによる世界の生産性損失を10兆ドルと推計し、その主因を「管理職自身のエンゲージメント低下」としています。 マネジャーに求められるのは、部下を鼓舞するカリスマ性や熱い話術ではなく、以下の5点の実務スキルです。

1.期待値を明確に設定・合意する

2.業務量を客観的に把握し調整する

3.評価理由を忖度(そんたく)なく論理的に説明する

4.キャリアの選択肢を(会社都合だけでなく)一緒に考える

5.チームに害をなす問題行動には早く介入する

 日本企業においては「管理職自身がプレイヤー業務と管理業務の二重苦で極限まで疲弊しており、部下の静かな退職に対処する余裕などない」というケースが多発しています。管理職の過負荷と権限不足を放置したまま「もっと丁寧な1on1を実施しろ」「チームのエンゲージメントを高めよ」と命じても機能しません。

 マネジャー自身の業務負担軽減(プレイング比率の引き下げや権限委譲)とサポート体制の構築こそが、組織として着手すべき施策となる場合もあるのです。

施策5:「心理的安全性」と「成果に対する責任」の両立

 米Googleの研究チーム「re:Work」は、成果を生み出すチームの最重要要素として「心理的安全性」を挙げました。心理的安全性とは「質問や意見の表明、ミスの報告をしても、罰せられたり否定されたりしない」状態を指します。

 しかし、心理的安全性を「何をしても、やらなくても許される甘やかし」と誤解してはいけません。「意見や懸念を恐れずに言える」という安心感と同時に「合意して決めた成果にはプロとして責任を持つ」というアカウンタビリティー(実行責任・説明責任)が強く求められます。

 目指すべきは、困りごとや異論を率直に言える一方で、引き受けた成果への責任は厳格に果たす、自律的で規律あるチーム文化の構築です。

施策6:多様なキャリア観への対応

 現在はもはや、全社員に「右肩上がりの昇進意欲」と「経営視点」を求める時代ではありません。会社は多様な価値観に応えるため、社員と会社の期待値をすり合わせる「3つの貢献契約」(キャリアトラック)を用意し、かつ本人のライフイベントや志向の変化に応じてトラック間を行き来できるようにすることが望ましいでしょう。

  • 【安定遂行型】昇進や役割の拡張よりも生活の安定やプライベートを重視。会社からの期待は「定義された定型業務・運用業務を高品質かつ安定的に担うこと」。
  • 【専門深化型】管理職としてのピープルマネジメントよりも、専門領域の深化を望む。会社からの期待は「専門成果の創出、技術継承、後進への技術レビュー」。
  • 【挑戦成長型】昇進、権限拡大、新規事業などの挑戦を強く望む。会社からの期待は「組織変革のけん引、横断課題の解決、次世代育成、事業への大きな貢献」。

 人事課題において問題なのは、安定遂行型の社員に対して「やる気がない静かな退職者」とレッテルを貼り、挑戦成長型だけを正義とすることです。組織の運営には多様な人材ポートフォリオが必要です。

 ただし、どのタイプの契約であっても、それぞれの役割に応じた「成果責任」と「最低限のチーム義務」は厳格に要求しなければなりません。また、会社の成長ステージやビジネスモデルの変化によって、用意できるトラックや許容できる人数も異なります。

 会社としてどのトラックにどの程度の人材を配置できるか(人材ポートフォリオの定員管理)については、常に経営レベルで整理しておく必要があります。

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