雑誌『ぴあ』なぜいま復刊? 「ググる時代」に15年ぶり、矢内社長が語る“紙の勝機”
総合エンタメ情報誌「ぴあ」が4月、15年ぶりに「とぶ!ぴあ」として復刊した。ぴあの矢内廣社長にインタビューした。
総合エンタメ情報誌「ぴあ」が4月、15年ぶりに「とぶ!ぴあ」として復刊した。青春時代に「ぴあ」を小脇に抱えたシニア世代からは紙媒体での再登場に快哉(かいさい)すら聞かれた。一方、Z世代からは「ぴあに雑誌があったの?」との声も。映画、音楽、演劇、美術、スポーツなどエンタメ全般を支え続けてきた「ぴあ」の理念とスピリッツは「ひとりひとりが生き生きと」。「ぴあ」は深化し続けている
ぴあ矢内廣社長 1950年1月、福島県四倉町(現いわき市)生まれ。中央大学法学部在学中の1972年に雑誌「ぴあ」を創刊。1974年にぴあ株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。日本初のオンラインチケット販売サービス「チケットぴあ」を1984年にスタートさせた。2003年、東証1部(現プライム市場)上場を果たす(9月2日午後、東京都渋谷区 米岡佑輔撮影)
実は「単なる復刊ではない」 紙とデジタルとをつなぐメディア
「復刊だね!」などと皆さんからいろいろと声をいただきました。ただ、単なる復刊とも言い切れないところがあるんです。雑誌の「とぶ!ぴあ」から、チケットのオンライン購入や映画予告編をチェックできるアプリ版の「ぴあ」へと、二次元コードを使って「とぶ!」(リンクする)ということで、実は紙とデジタルとをつないでいるメディアなんです。こういう話をすると、皆さん「あぁ、なるほどね」という感じになります。
雑誌の「ぴあ」は1972年に矢内氏が仲間と創刊した。映画、演劇、コンサート、美術展などのスケジュール情報などを網羅的かつ均一的に掲載。斬新な編集スタンスから部数は急増し、ピーク時(1980年代後半)の部数は100万部を超えた。今春の復刊号の表紙は、2011年の休刊前と同じイラストレーターの及川正通氏による、野球のユニホーム姿でバットを握る「ゴジラ」が飾った
ネット検索が、グーグルを使うことから「ググる」とも言われて当たり前になっています。「ぴあ」の創刊当時はグーグルなどもちろんなかったわけです。ただ「ぴあ」は映画や演劇、コンサートなどの開催情報だけを客観的に網羅していた。この媒体特性から、直接的な検索行為である「ググる」ようなことができた。そして、直接の検索ではないあいまいな探し方にも「ぴあ」は対応できていたと思うんです。
私は「あいまい検索」と言っているのですが。「とぶ!ぴあ」はこの雑誌の特性を生かしつつ、アプリ版の「ぴあ」へとリンクしてそれぞれの特性機能を発揮します。
偶然性の発見 紙とネットの良さを両取り
あいまい検索の特性と、さらには近年再評価されている紙媒体の特性である「セレンディピティ」(偶然性の発見)を狙う復刊の企図もあった
「ググる」には検索ワードが必要です。例えば、今度の週末に何か面白いものないかなと漠然と考えている人は、特定のワードがないから検索ができないわけです。見たい映画名が決まっていれば検索できますが、雑誌の「ぴあ」というのはそうじゃなく、ページをめくっていたら「あっ、こんなものもやっているんだ、映画じゃなくて芝居もこんなのがあるんだ」というような、偶然性の発見のようなもの(セレンディピティ)が満載されていたと思うんです。あいまい検索ができることが紙媒体の良さです。
一方でデジタルには常にアップデートされた最新の情報が大量にあるわけです。こうした紙の良さとネットの良さをつなぎあわせて成立させたものが「とぶ!ぴあ」なのです。
2025年に開催された大阪・関西万博では、紙媒体の「ぴあ万博ガイドブック」シリーズが累計約120万部の大ヒットとなった。「とぶ!ぴあ」復刊決定の後押しにもなった
やはり、紙の良さが出たと思います。会場に行くと、ガイドブックを広げている人がたくさんいました。会場の地図を見ているんです。スマホでも地図は見られましたが、画面が小さくスクロールを繰り返すことが必要だった。ページを広げれば全体が俯瞰(ふかん)できる利便性が高く評価されたと思います。(聞き手 近藤豊和)
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矢内廣社長は、文化芸術、エンタメ界の発展に貢献したとして、文化功労者にこの度、選ばれた。
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