6代目007ことダニエル・クレイグが続投した、人気スパイ・アクション・シリーズの第22作目「007/慰めの報酬」。過去のボンド映画の中でも断トツのオープニング成績を各国で記録、なんて前評判を聞いていたので、期待は当然高くなる。が、心底楽しめなかった、というより、話についていけなかった。その理由は鑑賞後に判明。なんと前作「007/カジノ・ロワイヤル」の1時間後から物語がスタートする、シリーズ初の連作だったのだ。
恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)を失い、復讐を誓うジェームズ・ボンド。彼女を死に追いやったミスター・ホワイトをM(ジュディ・デンチ)と尋問するときに、イギリス諜報部でも把握してなかったクアンタムという謎の組織の存在を知る。そして、諜報部の中にも裏切り者がいたことが判明。調査の結果、ハイチに向かったボンドはカミーユ(オルガ・キュリレンコ)という美しい女性と出会う。親の仇討ちを胸に秘める彼女は、クアンタムの幹部であるグリーン(マチュー・アマルリック)の愛人になっていた。ボンドはカミーユを通して、グリーンに近付くが……。
脚本は「クラッシュ」「ミリオンダラー・ベイビー」のポール・ハギス、監督は「チョコレート」「主人公は僕だった」「ネバーランド」のマーク・フォースター。ドラマの名手2人だが、意外なことにアクションの迫力は増している。イタリア・シエナの古い街並みをジャンプ&激走、ボートが入り乱れてのチェイスなど、陸海空を駆使したアクションの連続で、全編緊迫感たっぷり。秘密兵器には頼らず、ダニエル・クレイグが顔面に8針縫うケガを負ったというのも納得できる、ハードな肉弾戦が続く。
今回のボンドは亡き恋人に未練たっぷりだから、ウィットに富んだ会話もラブシーンも驚くほど少ない。悲しみと怒りを原動力に、黒幕を地獄の果てまで追いつめる。そのストイックな姿は「ボーン」シリーズのジェイソン・ボーンを思わせる。
鑑賞後、12月にリリースされた「カジノ・ロワイヤル スペシャル・エディション」を見直し、登場人物やアイテムなどにつながりがあることを再確認。ようやくスッキリしたが、見る前に分かっていればもっと楽しかったのに、と後悔しきり。本作を楽しむためには「カジノ・ロワイヤル」はチェックする必要がある。そうすれば従来の甘いマスクのプレイボーイとは一線を画す、ハードボイルドな新生ボンドを容易に受け入れられるはず。
監督:マーク・フォースター/脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス
出演:ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、マチュー・アマルリック、ジュディ・デンチ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年1月24日より丸の内ルーブルほか全国ロードショー
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。
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