「グラン・トリノ」+D Style 最新シネマ情報

» 2009年03月18日 11時41分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo (C)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. and Village Roadshow Films (BVI) Limited. All Rights Reserved

 現在78歳という年齢をまったく感じさることなく精力的に映画を撮り続けているクリント・イーストウッド御大。アンジェリーナ・ジョリー主演の「チェンジリング」に続く監督作が、この「グラン・トリノ」である。本作では2004年の「ミリオンダラー・ベイビー」以来となる久々の主演も担当。

 グラン・トリノとはフォードのビンテージ・カーのこと。主人公のウォルト・コワルスキーは、フォードを退社して久しい偏屈な老人で、グラン・トリノを大切にしている。自分の孫はおろか息子夫婦とも分かり合えないウォルトは、妻に先立たれてますます意固地に。「ウォルト」と親しみを込めて呼ぼうとする神父にも、「なれなれしい、コワルスキーさんと呼べ」と声を荒げる始末。

 近所には黒人やアジア系などが増えてきた。白人以外への偏見に満ちた彼は、隣に越してきたモン族の一家が気に入らない。ある日、その家族の息子タオがギャングたちにそそのかされ、グラン・トリノを盗もうとする。銃で撃退したウォルトに、モン族の一家はおわびに息子に何でも仕事を言いつけてくれと謝ってくる。

 タオには父親がいない。心優しいが内気で好きな女の子にさえ声をかけられない彼に、ウォルトは男になる指導をする。タオとの交流が、孤独なウォルトの人生も変えていくが、それと同時にギャングたちから反感を買うようになってしまう。

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 一番の見どころはイーストウッド。本国アメリカでの公開時には「ダーティハリー」などが引き合いに出されることが多かったが、ウォルトは確かにイーストウッドが過去に演じてきた“孤高のヒーロー”に通じるキャラクターである。一見、隣人にしたくないタイプだが、実はユーモアがあり、本物の優しさもある。演じるイーストウッドが78歳という年齢に達したからこそ可能な説得力があり、魅力的なキャラクターにできたのだろう。

 人間愛を描いた感動ドラマだが、ウォルトが最後に下す決断にはしびれる。切ない思いで胸が締めつけられ、しばらく席を立てないほどの衝撃を受けるはずだ。このあたりのイーストウッドは圧巻。上映後に流れる主題歌「グラン・トリノ」も素晴らしく、余韻とともにいつまでも耳に残るだろう。なぜアカデミー賞にノミネートされないの? と憤りを覚えるほどのイーストウッドの魂の熱演をぜひスクリーンで!

グラン・トリノ

監督:クリント・イーストウッド/脚本:ニック・シェンク

出演:クリント・イーストウッド、ビー・バン、アニー・ハー、クリストファー・カーリー

配給:ワーナー・ブラザース映画

4月25日(土)より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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