「OLYMPUS XA」の撮影:-コデラ的-Slow-Life-
簡単な修理で直ってしまった「OLYMPUS XA」。早速撮影に出かけてみた。露出がアンダー気味な点や、最短焦点距離が長めなど若干の不満はあるが、スナップカメラと割り切れば、その気軽さが旅をより楽しくしてくれそうだ。
バネ2カ所が外れたことにより動作不良に陥っていたXA。簡単な修理で直ってしまったので、掃除もそこそこに早速撮影に出かけてみた。
普通これぐらいのコンパクトカメラなら、パンフォーカスの露出オートでバシバシ撮れるようなルックスなのだが、実際にはマニュアルフォーカス、絞り優先のカメラである。撮影にもそれなりの手間がかかるが、それがまた楽しくもある。
レンジファインダは二重像がはっきりしており、フォーカスが合わせやすい。ただ被写体によっては、左側に表示されるシャッタースピードのメーターが見えにくくなるのが難点か。
絞り開放で何枚か撮ってみたが、レンズの口径が小さいこともあって、被写界深度はそれほど浅くはならない。ということは適当でもピントは合いやすいので、気軽にスナップ撮影という用途でも使えるということであろう。
描写は独特の柔らかさがあり、ツァイスやNikonなどのシャープさとは違った趣がある。また発色は渋めで、このあたりは好みが分かれるところだ。
また周辺部は、若干輝度が落ちる傾向があるようだ。以前OLYMPUS PEN EE2を使ったことがあるが、これも若干周辺落ちがあり、写りとしては古くさい感じがするカメラだった。XAも開放ではそういう傾向があるのかもしれない。
フェザータッチのシャッターは、思いのほか使いやすい。少し触るだけでシャッターが切れるので、小さなカメラだが低速でも手ブレがしにくくなる。
今の目で見れば不満もあるが……
一方でF5.6ぐらいまで絞れば、深度はそれほど変わらないくせに、とたんにシャープな描写をするようになる。ISO400ぐらいのフィルムを使って絞り目で撮るほうが、現代のシャープさに慣れた目にはフィットするだろう。あるいはモノクロのフィルムを使って、コントラストを楽しむのも面白いかもしれない。
ちょっと気になったのは、全体的に露出がアンダー気味になっているところである。もともと機能として+1.5の露出補正機能があることから、露出計の構造から、ややアンダー気味の傾向があるのかもしれない。
それ以外に原因があるとすれば、電池だろう。もともとXAは、SR44という酸化銀電池を使用する設計となっている。だが手元になかったので、LR44という同型のアルカリ電池を使って撮影した。
SR44は1.55V、LR44は1.5Vなので、0.5Vぐらい大して変わらないだろうと思ったのだが、正確な露出を期待するなら、ちょっと高いがSR44を入れた方が良好な結果が得られたかもしれない。これはまた後日、試してみようと思っている。
もう一つ物足りない点は、最短焦点距離が85センチ止まりであるところだ。コンパクトなカメラで被写体に近寄りやすいのに、画角が35ミリという比較的広角のレンズを積んでいることもあって、テーマ性を持った構図が作りにくく、客観的な印象の絵になってしまうのが惜しい。せめてあと20センチ近づけたらずいぶん違うはずだが、そういうニーズもあって、後年マクロ撮影もできるXA4が生まれたのかもしれない。
これは風景を含め、ルーズショットを撮るタイプのカメラであるようだ。旅行などにちょっと鞄につっこんで、サブカメラとしてスナップを撮る、といった使い方が望ましいのだろう。そう考えると、なんだか小旅行に出かけたくなる。
なんとなくふらりと立ち寄った街で、XAを首からぶら下げて散策するというのは、実に楽しそうだ。行動の主体が撮影ではない気軽さが、旅をより楽しくしてくれそうな気がするではないか。
小寺 信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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