「高額品でなく高級品を」――“50万円超”G-SHOCK開発の裏側に迫る:+D Style インタビュー(3/3 ページ)
“G-SHOCK”としてのタフネス性能を犠牲にすることなく、質感や仕上げを“高級”と呼ぶにふさわしいクオリティーに高める――“タフな高級品”という、いままでにない価値観に挑戦する腕時計「MR-G」の開発担当者に、インタビューした。
――8000シリーズから、ムーブメントの精度も高くなっていますね。
井崎氏: 電波を受信しない場合でも、月差プラス/マイナス15秒の精度にまで改良しています。それと、クオーツの精度だけではなくて、針打ちに関しても、自分たちができるぎりぎりまで精度を高めました。
――やはり高級モデルとなると、そういった部分の作り込みもチェックされるものなのでしょうか?
井崎氏: MR-Gの話ではないのですが、GIEZのGS-1000Jというモデルを出した時、ユーザーの方が明らかに変わったんです。デザインのベースとなったGS-300は、アナログ2針とデジタル表示のコンビネーションという、カシオらしい文字盤のデザインだったのですが、それがクロノグラフモデルになった途端、これまでのG-SHOCKファンにはないリアクションが出てきました。お客様が購入時に、文字盤をじっと見つめて、「ほかのヤツに変えてくれ」と。
――?
井崎氏: 在庫を1つ1つ確認して……何を見ているのかと思ったのですが、各針の微妙なズレを全部チェックしているんですよ。ここまでの要求にも応えられるようにしなければいけませんし、特にMR-Gに関してはとことんやる必要があります。これは針打ちの精度だけの問題ではなくて、文字盤の印刷や、都市コードリングの刻印なども、ずれてしまえば意味がない。すべての要素がピッタリ合うように、文字盤を作るメーカーさんや、都市コードリングを作るメーカーさんには無理をいって精度を上げてもらっています。
――そこまでいくと、機械式腕時計の領域ともいえますね。
井崎氏: そうだと思います。販売においてもこれまでは、対面でお客様としっかりコミュニケーションをして……というケースがどちらかといえば少なかったのですが、今回のモデルに関しては、普段高級時計を売られている方に「このモデルはここの仕上げがすごい」といった風に見て分かってもらえて、購入者もそういった部分に関心を抱いているようです。また、「耐衝撃性能を保ちながら、ここまでのレベルに到達しているのがすごい」といった声もありました。
――8000シリーズの海外での展開は?
井崎氏: 慎重にやっていこうと考えています。ただ海外でも評価されており、日本の電波を受信できる台湾などでは、少量ですが販売しています。中国なども、やはり最高峰モデルに対するニーズが強いようです。
――今後のモデルはどうなっていくんでしょう?
井崎氏: いつに何が出るというのは申し上げられませんが(笑)、高級モデルとしての取り組みは今後も続けていきますし、何かしらの進化や向上のあるものを出していきます。
――最後にお聞きしたいのですが、G-SHOCKといえばやはりデジタルのイメージがあります。デジタルの高級モデルという展開はあるのでしょうか?
井崎氏: 今はアナログ文字盤のモデルをラインアップしていますが、それに限定しているわけではありません。ですので、可能性としては、あります。1990年代、フロッグマン人気の全盛期に、そのスペシャルモデルを作ろうという話がありました。最終的には作りませんでしたが、「全部金で作ってやろう」なんて意見もありましたね……。うわついたものを作るつもりはありませんが、G-SHOCKの始まりはデジタルからでしたし、今でもデジタルで高級と呼ぶにふさわしいモデルというのは、考え続けています。
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