上位機の画質と付加価値を注ぎ込んだ中級機 ハンディカム「HDR-CX370V」:フルHDビデオカメラ新時代(3)(2/2 ページ)
ソニーのメモリタイプ“ハンディカム”「HDR-CX370V」は強力な手ブレ補正や裏面照射CMOSセンサー、多彩な顔検出など、同社らしさがつまった製品。シーン認識技術も投入され、さらにスキがなくなった。
おまかせオートでさらに快適に
このクラスの製品は、フルオートで安心・快適な撮影を行なえることが重要になってくるが、HDR-CX370Vでは、撮影シーンを自動認識する「おまかせオート」が同社で初めて搭載された。液晶モニターの内側に用意された緑色の「iAUTO」ボタンを押すと、「顔」「揺れ」「シーン」の3つの要素を組み合わせた90以上の組み合わせから、現在の状況を判別し、最適な設定を施すというものだが、なかでも三脚の有無を認識してくれるのが秀逸だ。
HDR-CX370Vの手ブレ補正は、アクティブモードでも振る舞いがきわめて自然で、カメラを大きく動かしても不自然な挙動はほとんど感じられないが、それでも三脚に据えたときは、手ブレ補正そのものをオフにしたほうが良好な結果が得られる。三脚を多用するユーザーにとっては、手ブレ補正のオン・オフは半ば儀式のようなもので、必ず行なうべきものともいえるが、自動で行なってくれるに越したことはない。認識の精度も十分に高く、試用した限りではカメラ任せで困ったことはなかった。
FXモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。オートの状態では画面全体のバランスを重視する傾向にあるようで、顔に日差しが強く当たっている部分は大胆に飛ばしてしまっている。歩きながらの撮影だが、手ブレ補正アクティブモードは自然な振る舞いが好印象だ
自動認識といえば、同社お得意の顔認識の機能ももちろん健在で、大人と子供の見分けや笑顔度の判定、大勢の子供の中からわが子を優先的に認識させるといった高度な認識が可能だ。笑顔が検出されると動画撮影中でも静止画を同時記録する「スマイルシャッター」機能もやはり搭載されており、これも相変わらず面白い。これらの顔検出情報は、再生時のインデックスとしても利用されるなど、機能の使いこなしぶりが徹底している。
FXモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。さまざまな種類の顔認識機能を搭載した製品だけあって、こうした難しい場面でも顔にピントを合わせ続けるのは得意のようだ。サンプル以外にもいくつかのシーンで試したが、他社製品と比べて、ピントが意図せず背景にいってしまうことが少ない印象を受けた
こうした高度な機能を手軽に扱えるよう、液晶タッチパネルによる操作系が引き続き採用されている。撮影中に現れるズームや録画ボタンの位置なども適切で、この分野の老舗らしく非常に扱いやすい。ただ、日差しの強い日中の屋外でもよく見える「クリアフォト液晶」の特性上、どうしても色のノリが薄いように見えるため、せっかくきれいに撮れているのに、撮影したその場で実感しにくいのが惜しい。液晶モニターは、視認性と見た目のきれいさのどちらを取るかが本当に難しいところだ。
なお、メニュー画面も今回一新されている。よく使う機能を登録可能な「マイメニュー」は引き続き搭載されているので、一度設定してしまえばメニューの各項目をチェックする機会はほとんどないのだが、相変わらず一覧性に乏しく、ページを繰る操作が面倒なのは残念だ。
24Mbpsモードをついに搭載
肝心の画質は、やはり裏面照射型CMOSの採用が奏功して、光量の少ない室内でもノイズの少ない映像を得られる。家庭で子供やペットを撮ることが多いのなら、わざわざ真っ暗な夜景を撮らずともすぐに実感できる。夜間の室内は、人間の目には十分な明るさと感じられる蛍光灯の照明下でも、カメラにはまだまだ苦手な明るさで、従来型のセンサーを搭載したカメラでは途端にノイズが増えてしまうのだが、HDR-CX370Vならクリアな撮影が可能だ。
FXモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。こうした夜景でのノイズの少なさはHDR-CX370Vの魅力のひとつ。感度に余裕があるためか、全体的に明るくしすぎない傾向のようで、画面全体は若干暗めながら、肉眼の印象に近い映像となっている
同社のカメラは、オートホワイトバランスやオートフォーカスなど、ほとんどの自動設定が安定志向を特徴としていたが、今回オートフォーカスのアルゴリズムが見直され、従来機種よりもすばやいピント合わせを行なうようになった。既存モデルではままあった、ピントが意図しないところに外れたまま待たされるといったことがなくなり、快適さは上がったように感じる。
AVCHDの規格上限である24Mbpsの記録モードをついに搭載してきたのもトピックだ。ざわめく緑の木々なども圧縮ノイズの少ない描写ができるようになった。上位機種ならではの機能や性能をコンパクトなボディに詰め込みながら、ライバルと比べて弱点とされてきた数少ないポイントを着実に解消してきたHDR-CX370Vには、今回もソニーの底力を見た思いだ。とくに室内や暗いシーンで撮影する機会が多そうなら、間違いなく最有力候補になるだろう。
FXモード(フルHD/24Mbps)で撮影した映像からのスクリーンショット。直射日光の当たっているハイライト部分は思い切って飛ばしてしまう傾向がここでも見て取れるが、緑の描写にノッペリした部分がなく、細部までしっかり描ききれているのは、やはり24Mbpsモードならではといえるもので、フルHDならではの精細さを楽しめる
静止画撮影については、710万画素相当(3072×2304)/530万画素相当(3072×1728)/190万画素相当(1600×1200)/30万画素相当(640×480)が選択できるが、16:9になるのはこの作例で掲載した530万画素相当のみ。静止画撮影時の有効画素数は最大265万画素なので、それ以上の画素数については補完処理によるものだが、小サイズのプリントなら十分な印象だ
モデル:倉岡生夏(くらおか きなつ)
1991年7月17日生まれ、東京都出身、AB型。チョコレート大好き(1日約1キロ食べています)! 動画共有サイト「zoome」で「チョコ姫★倉岡生夏」ムービー日記更新中
チョコ姫★倉岡生夏:http://zoome.jp/kinatsu/
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