「DSC-HX9V」第2回――1080/60p記録について考える:長期試用リポート
DSC-HX9Vの特徴のひとつといえば、1080/60pまで到達したAVCHDでの動画撮影機能だが、いろいろ悩ましい点も多い。
DSC-HX9V(以下HX9V)の特徴のひとつといえば、1080/60pまで到達した動画撮影機能だ。昨年のDSC-HX5Vでは、コンパクトデジカメながら1080/60iのフルハイビジョンを実現したことで話題となったが、1年が経過し、ついにプログレッシブ記録にまで到達したことになる。
1080/60pの映像についてはレビュー記事(1080/60p記録対応、進化した全部入りコンパクト ソニー「DSC-HX9V」)にて紹介しているのでそちらを参照してもらいたいのだが、その際、「DSC-HX5VやNEX-5に比べると、録画ボタンを押してから録画が開始されるまでにライムラグがあり、機敏さに欠ける印象だ」と書いた(HX9V、HX5V、NEX-5のいずれも、モードダイヤルがどこであっても録画ボタンを押すと動画撮影が開始される)。
長期試用の間もその印象はぬぐえていなかったのだが、同様の問い合わせが多かったようで同社のFAQにもその件についての記載が行われている(MOVIE(動画)ボタンを押してもなかなか撮影が開始されません)。結論から言えば根本的な解決策はなく、素早く動画撮影を開始したい際にはモードダイヤルを「動画撮影」に切り替えてから撮影を行うべしとの記載であり、ファームアップなどでの解決は望めそうにない雰囲気である。
長時間使うことで気が付いたことはほかにもある。ひとつは1080/60pの記録であってもパンしたりするとエンコード能力が追いつかなくなるためかブロックノイズまではいかなくとも、映像にちらつきが見られること。1080/60p記録での映像ビットレートはAVCHD規格の上限(24Mbps)を超える28Mbpsとなるが、1080/60iならばとにかく、1080/60pとなると28Mbpsでも足りないのかもしれない。
さらにもうひとつ、動画スナップカメラとして問題に感じたのが、撮影中に顔認識が失敗すると、復帰がなかなかうまくいかないことだ。顔認識そのものの精度は高く、フレーム内に顔を見つけると上手にその顔へフォーカスをあわせてくれるのだが、何かのきっかけでこれがはずれてしまうと、フレーム内に顔がある状態が続いてもなかなか再認識してくれない。こうなると、一度動画撮影を止めて静止画の撮影状態として顔認識をやり直すぐらいしか対処法がない。ハンディカムの利用ではこうした事態には遭遇したことがないだけに、何とかならないものかと感じてしまう。
ついでにいえば、動画撮影中にはほぼフルオート撮影になるのにも困る場面があった。フルオート撮影で利用できるシーン認識や追尾フォーカスなどは確かに便利だが、静止画撮影については撮影設定が詳細に施せるのに対して、動画撮影がシーンセレクトを除けばほぼフルオートというのはいささかアンバランスに感じる。HX9Vが動画撮影について設定できるのは露出や顔検出の優先度、手ブレ補正のアクティブ/スタンダード程度で、HX5Vではホワイトバランスや測光モードも変更できたことを思い起こすと、物足りなさを感じてしまうところだ。
未整備な1080/60p編集環境
1080/60pの動画だが、現在、AVCHDの規格上、1080/60pは規定されていないため、本製品で撮影した1080/60pの映像は同社の独自規格となる。しかし、ファイル構造や拡張子などはAVCHD規格と同一であるため、Windows 7環境など、AVCHDフォーマットの再生に対応したパソコン上ならば再生は可能だ(Windows 7ならば、.mtsファイルをダブルクリックすればWindows Media Playerで再生できる)
問題となるのが編集を含めた運用だ。
まず、1080/60pの録画モードを選択した際に警告されるよう、同社製デジタルレコーダーへの映像取り込みは行えず、また、パッケージに付属するソフトウェア「PMB」(Picture Motion Browser)を使えばBDあるいはDVDへの保存が可能となるが、BDならば1080/60i/24Mbps、DVDならば1080/60i/17Mbpsへと変換されてしまう。1080/60pの映像をそのまま保持したければ、パソコン上での運用が前提となる。
そのパソコン上での編集だが、1080/60pが規格として存在していないため、アドビのPremiereやコーレルのVideoStudioなどメジャーどころの家庭用動画編集ソフトでも、編集は可能だが、1080/60pを保持しての書き出しができないなど、完全な対応には至っていない。将来的にはサポートされることになるだろうと想像できるが、現時点ではPMBで編集するのが無難だろう。
PMBの編集は簡易的なものだが、トリミングや結合、静止画切り出しなどを行えるため、短いクリップをつなぎ合わせながら、1080/60pの.mtsファイルで書き出す程度の編集は行えることになる。ただ、シーン転換時のエフェクト挿入や音量レベル調整、結合後映像のプレビュー確認などはできないので、あくまでも簡易的なものにとどまる。
ちなみにWindows 7環境でのWindows Live ムービーメーカーでも1080/60p動画編集は可能だが、1080/60pでの出力が行えないため、1080/60pを保持したままという目的にはそぐわない。いずれにしても、1080/60pの編集環境はまだまだ整っていないというのが現状だ。
家庭用ビデオカメラ用フォーマットとして誕生したAVCHDという規格の性質上、夏モデルの同社製BDレコーダーでは1080/60pの取り込みと編集にも対応してくると思われるので、本製品を1080/60pの映像機としてフル活用したいと考えているならば、レコーダーの夏モデル発表を待つ方がよいかもしれない。
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