なぜ一眼風?、画質はPro1と同じ? 「FUJIFILM X-T1」誕生と狙い:インタビュー(2/2 ページ)
画質と機動性の両立を掲げ、富士フイルム創立80周年記念製品として誕生した「FUJIFILM X-T1」。クラシカルな雰囲気は変わらずながら、ボディデザインを一眼レフ風とするなど、Xシリーズ製品として異色な部分も散見される。そのわけを尋ねた。
X-T1のポジション
――そのX-T1の操作性ですが、X-Pro1やX-E2に比べるとダイヤルの数が増えており、撮影時の即応性に優れる一方で、やや煩雑になった感も否めません。また、画質は「X-E2相当」とされていますが、X-Pro1、X-E2とのすみ分けはどのようになるのでしょうか。
上野氏: シリーズとしては説明書を見なくても、写真を知っている人なら使えるカメラを意図していまして、「撮る」と「準備」のオペレーションを切り分けています。X-T1のボディデザインを行う中で、天面にISO感度とドライブモードの操作ダイヤルは入れたいと考えていました。ただ、X-T1に限って言えば実装する操作UIはカメラを知っている人、写真についての知識を持っている人向けであることは確かですね。
シリーズ製品中におけるポジショニングですが、X-T1は「プロ」と「写真で表現をしたい人向け」を意図しています。X-Pro1は「作品指向」のモデル、X-E2は価格面を含めた「バランス指向」のモデルです。それぞれの製品化についてオートホワイトバランスなどの微調整はしていますが、画質についてはどれも同等といえます。
ちなみにX-E2は現在予定しているファームウェアアップデートによって、EVFの表示タイムラグをX-T1と同じ0.005秒まで短縮させますので、撮影機能についてもX-T1とX-E2はほぼ同等となります。
――X-T1はそのファインダーの大きさ(236万画素有機ELパネル採用、倍率は0.77倍)も大きな特徴です。大画面高精細の部材を使うことが決まった際、どのようにファインダー内の情報を整理・表示していく方針を立てたのでしょうか。
上野氏: ファインダーの見えを良くするためにはまず倍率を上げ、撮影時に拡大ボタンを押さなくてもいいようにと考えました。加えて、フレームレートを上げて、タイムラグをなくしてと、可能なことはすべて取り入れようとしました。
そして236万画素という高精細なパネルを搭載することとなり、表示領域が大きくなることで何ができるかを考えましたが、最終的に「フォーカスを合わせる能力を高める」ことを第一としました。EVF内を2画面分割するマルチモードではフォーカスアシスト画面を別画面としましたが、これによってレンズアダプターを使ったオールドレンズでのスナップ撮影が快適になったと自負しています。
ちなみにEVFユニットには高屈折率ガラス2枚と両面非球面レンズ1枚の計3枚から構成されており、ボディに比較するとかなり大きめなサイズとなっています。このEVFユニットをレンジファインファー風ボディに入れるとなると、ファインダー部分が大きく張り出すかボディ自体が大きくなるか、どちらにしてもあまり現実的ではありません。X-T1が一眼レフ風のボディデザインとなったのは、このEVFを搭載するための必然でもあると言えます。
――ボディは防じん防滴配慮とありますが、同仕様のレンズが登場していません。対応レンズとの組み合わせた際に、どこまでの防塵防滴を実現しているのでしょうか。
上野氏: 利用シーンで言えば、日常的に使って雨がかかってしまっても大丈夫という程度を想定しています。メモリカードスロットのフタがやや軽く動きやすいという声もありますが、フタが閉まってさえいれば日常的な使用における防滴は保持されます。ちなみに防塵防滴のほかにマイナス10度までの耐寒性能も有していますが、マイナス40度の環境下でも問題なく利用できたという報告を受けています。
――発売から1カ月少々が経過しましたが、ユーザーからはどのようなフィードバックが届いているでしょうか。個人的にはAF-Cでの動体予測AFの精度がもう少し高ければと感じています。
上野氏: 要望についてはすでに多くを頂いております。ISO感度ダイヤルのロックに対する是非、露出補正ダイヤルの重さ軽さ、十時キーのフィーリングなど、利用される方の撮影スタイルや好みによる部分も多いので、どこまで反映させて頂けるかは慎重に検討していきたいと考えています。
動体予測AFについては、例えばXF55-200mmレンズを使用し、対象が時速40キロまでの速度で動いていて、カメラに対して奥/手前の連続的な動きをしている、というような状況下で有効に働きます。これは、ミラーレス機としてはかなり高性能と言えると思います。尚、被写体との距離が15メートルを切ってしまうと追従しなくなります。動体予測は連写中のAF追従精度を高めるためのものなので、どんな状態でも動体撮影時にAF-Cの測距精度を求めるというならば、まだ、測距センサーを別に搭載する一眼レフに分があるのかもしれません。
――最後に、今後の予定をお話し頂ける範囲で構いませんのでお願いできますでしょうか。
上野氏: 今年の重点はレンズです。発表済みである「XF18-135mmF3.5-5.6 R OIS WR」「XF16-55mmF2.8 R OIS WR」「XF50-140mm F2.8 R OIS WR」の投入をまずは急ぎます。ボディについては、コンパクトさならX-M1、オールマイティならX-E2、ハイスペックが必要ならX-T1、光学ファインダーが欠かせないというならX-Pro1と、4ラインを用意できましたので、このボディがないからXシリーズに入れないという領域はなくなったと思っています。
CP+に展示されていた、発表済みである交換レンズ新製品。左から「XF50-140mm F2.8 R OIS WR」「XF16-55mmF2.8 R OIS WR」「XF18-135mmF3.5-5.6 R OIS WR」いずれも防じん防滴仕様となる
投入予定の「XF18-135mmF3.5-5.6 R OIS WR」は7.5倍ズームという利便性の高い製品ですが、高倍率ズームレンズとしては高い描写力を持つ、画質にこだわった製品としていますので、メインレンズとしても利用いただけます。手ブレ補正も強力で、望遠ズーム「XF55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS」(最大4.5段分)と変わらぬ効果を発揮します。
実はX-T1の付属ストロボ「EF-X8」は、この「XF18-135mmF3.5-5.6 R OIS WR」との組み合わせも考慮されており、装着してもストロボ光がケラレることがありません。この組み合わせならばボディとレンズ、いずれも防じん防滴となるのでX-T1の“ふたつのT”「信頼」(Trust)と「堅ろう」(Tough)を体感いただけます。
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