カジュアルに楽しみたい人向けのミラーレス――キヤノン「EOS M10」(1/2 ページ)
「EOS M2」までのカジュアル路線を継承した、スタイリッシュなミラーレス一眼「EOS M10」は、ハイエンド志向の「EOS M3」とは対照的なエントリーモデルだ。
「EOS M3」で大きく飛躍したEOS Mシリーズ。でも初代「EOS M」や「EOS M2」と比べると、デザインも機能もハイエンド志向になり、それまでの「カジュアルに使えるミラーレス一眼」的カメラから脱却した。逆に言えば、エントリーユーザー向けの手軽さを失った代わりに、本格的に使える高性能なカメラになったわけだが、じゃあカジュアルなEOS Mはどこへ行ったか。
「EOS M10」となって現れたのである。これでEOS Mにエントリー向けのM10と、ミドルレンジからハイエンド向けのM3という2つの流れができたのだ。だからM10はカジュアルさ重視のデザインや使い勝手のカメラとなっており、カメラとしての機能よりも「おしゃれさ」が先。例えば、かつて「PowerShot N」でやったような、専用の7種類のフェイスジャケットや2色のグリップを装着することで、自分好みのスタイルで楽しめるというキャンペーンも行っているし、キャッチコピーが「もっとキレイな写真が撮りたくて、ミラーレスでちょっぴり背伸びする」である。つまりはそういうカメラなのだ。
M3の弟分というよりはM2の後継機か
EOS MはAPS-Cサイズのセンサーを搭載したキヤノンのミラーレス一眼。EF-Mマウント対応のレンズを装着できる。
操作性や拡張性を重視したM3に対し、M10はかつてのM同様、フラットなボディを持ち、操作系は最小限にとどめたシンプルなデザインとなっている。センサーは像面位相差AFセンサーを搭載したハイブリッドCMOSで、画素数は約1800万画素。M3が2420万画素だったので、恐らくはM2と同じ一世代前のセンサーを搭載しているのだろう。
画像処理エンジンはM3と同じDIGIC 6。ここはM2より進化した。ISO感度は100〜12800。連写速度は秒約4.6コマ。シャッタースピードは最高1/4000秒。測拠点は49(ここはM2より増えている)。
しつこくM2と比べてしまうが、M10を使っていると「これはM3のエントリー向けモデルではなく、M2の後継機」と感じるからだ。特にM2っぽいのはAF回り。EOS M3は多くのシーンでAFが快適で、すっと気持ちよいリズムでピントが合うのだが、M10のAFは快適とは言い難く、M2を使っている感覚に近いのだ。ちょっと条件が悪かったり望遠だったりするとAFで少し待たされる。
昨今のミラーレス一眼はコントラスト検出AFのみでもスッと一瞬でピントが合うのが当たり前だが、M10は一世代前の感じなのだ。そこでついMやM2を思い出してしまうのである。しかもミラーレス一眼ならではの多彩なAF(AF枠の大きさを自由に変えられたりグループAFができたり)を持っているかと言えば、EOS M10は顔検出+自動追尾AFと1点AFのみ。タッチAFは便利だが細かくフォーカスを追い込みたいときはMFに頼らざるを得ない。EOS Mに初代機が登場した時からついてまわった「AFが遅い」というイメージをM3で払拭(ふっしょく)したかと思っていただけに、残念である。
でも画質はさすがキヤノン。APS-Cサイズならではの階調の柔らかさやディテールのリッチさがあり、エントリー向けモデルだからか全体に鮮やか目で見栄えのする写りだ。
キットレンズは15-45ミリでF3.5-6.3。望遠側がF6.3なのは残念だが、このクラスのキットレンズでワイド端が15ミリ(24ミリ相当)始まりなのは使いやすい。このレンズは沈胴式で、レバーを押しながら回して繰り出すことで撮影可能になる。収納時はかなりコンパクトだ。
タッチパネル中心のシンプルな操作系
M10の操作系はM3ではなくM2を継承している。モニターはチルト式で、上に180度回転し、自分撮りにも対応するほか、タッチパネルも搭載。
本体のボタン類が最小限な分、多くをタッチパネルで操作する。前面はフラットで、出っ張りなし。グリップが欲しい人は別売りのグリップを、だ。
シャッターボタン回りに電子ダイヤルが置かれたのはよし。背面のホイールよりここの方が操作しやすい。撮影モードスイッチはほんとに簡素なもの。全自動の「シーンインテリジェントオート」、カメラモード、動画の3ポジションのみだ。
プログラムAEや絞り優先などの各種露出モード、クリエイティブアシストやプラスムービーオート、各種シーンモード、デジタルエフェクト系のモードは全てこの中にあり、切り替えはタッチパネルで行う。タッチパネル左上の撮影モードの項目をタッチすると撮影モード一覧の画面になり、ここで上下にスクロールさせて選ぶのだ。
この3画面が主な撮影モード。クリエイティブアシストはフルオートをベースに、彩度や絞り、コントラスト、色合いなどを自分で設定できるもの。PowerShotが搭載する自動的にエフェクトをかけた写真を作ってくれる「クリエイティブショット」機能はない。付けてもよかったのに。
十字キー操作で各種設定も可能だが、絞り値や露出補正などをタッチパネルを使ってコントロールすることもできる。
構えたときの右側にはワンタッチスマホボタンが、左側にはカードスロットがある。このクラスのカメラだと底面のバッテリーの脇にカードスロットを持つ製品がほとんどなので、側面に設けられていることにちょっと感心。
凝った撮影をしたい人には、撮影モードを変えるのにいちいちタッチパネルを介する必要があるなど面倒に感じることもあるわけだが、このカメラはそういう使い方をしたい人向けじゃない。M2と同様、普段は「シーンインテリジェントオート」とタッチAFでカジュアルにスナップを撮るカメラであり、自撮りが気軽に楽しめるミラーレス一眼であり、APS-Cサイズの画質を誰でもすぐ楽しめるレンズ交換式カメラなのだ。
これの登場で、しっかり撮りたい人のM3と、カジュアルユーザー向けのM10という2つのラインが出来上がった。AFに関しては不満があるけれども、シャッターチャンス重視というよりは、気軽に自撮りもスナップ撮影もできるAPS-Cセンサーのカジュアルミラーレス機と思えばアリである。価格的にもレンズキットならかなりお手頃だ。ライバルはソニーの「α5100」といったところだろう。
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