さまざまな「写真展」を随時案内していく本コーナー。ソニーイメージングギャラリー 銀座で、2016年2月24日から開催する山田博行 写真展「CABIN」を案内する。
長く滞在していたアラスカやその他山岳遠征での体験のなかで深く印象に残っているもののひとつにキャビン(山小屋)がありました。キャビンの窓の外には特別な絶景というのではなく、ただ木々が揺れ葉が重なり光が漏れている光景だったり、木漏れ日の奥にみえる空の表情だったり、ホワイトアウトの吹雪や霧であったりしたわけですが、それぞれの窓の風景体験こそがその空間や時間の記憶につながってそれらの記憶をたどり記憶から景色を描写したいと思い、このプロジェクトを開始しました。今回の作品シリーズの原点です。
自然の中に建てられた山小屋で味わえる独特の静寂やポジティブな孤独感、四季の自然の移り変わりなどを含めて景色は具体的なものをはっきりと描写、主張することを求めずにどこまでもぼんやりとしている景色の存在感、気配を描写したいと思いました。
屋外と室内の関係を持つという意味において、居住性は内部空間と外部空間を結ぶ窓の景色に依存し、居住空間デザインすることとは窓の景色をデザインするという事にも思えました。
視覚へのアプローチ
ものを見るということは視界の焦点を合わせることで日常的に自然なことですが、僕らが普段見ているものの周辺には凝視していない部分の横の世界がなんとなく存在しています。ディテールは見えないけれども、正面を見ながら左右の景色や空間を同時に認識しています。つまり視覚の端のあたりです。
毎日のように歩いていた山道があってカメラを片手に森の記憶を撮ろうと向き合っていた時期がありました。しかしシャッターを押しているけれども、撮影した写真を見て、なかなか撮ったという気持ちになれない日々が続いていました。主題に迫るために本来ぼくが撮りたかった、なんとなくの森の存在感が、いつの間にか、どんどん何かを森でみつけなければという運動にかわって、生まれたものがなんとなく本来の狙いからずれて不自然になってしまっていたのです。改めて考える時期が続いてあの気持ちよさは気配そのものだと確信して探求していった結果現在のような形となりました。焦点を外すということは実際やってみると、合わせるこよりもずっと大変で収束点の可能性が広がっています。その世界こそが実は記憶や気持ちにとても大切な要素であると感じました。
本シリーズでは、作品を飾るということで窓からの風景を擬似的に表現しています。
【山田博行(やまだひろゆき) プロフィール】
1972年新潟生まれ。写真家。
武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。
2013年「waterproof」で Japan Photo Award を受賞。
国内外で極地の大自然から日常まで美しいもの、瞬間を追い求めている。
写真集に「Tuesday」(bueno books) がある。
【ギャラリートーク開催のお知らせ】
山田博行氏によるギャラリートークを開催します。
■入場無料/事前予約不要
■場所:ソニーイメージングギャラリー 銀座(ソニービル6階)
■開催日時:3月5日(土) 15:00〜15:45
・ギャラリートークは記録のために録画します。
・座席はございません。
写真展の詳細
名称 | 山田博行 写真展「CABIN」 |
---|---|
開催期間 | 2016年2月24日(水)〜3月10日(木) |
開館時間 | 11時00分〜19時00分(最終日15時終了) |
定休日 | 無休 |
入場 | 無料 |
会場 | ソニーイメージングギャラリー 銀座(ソニービル6階) ギャラリー1&2 |
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