正統派ホラーからジワジワ系まで、怖い漫画おすすめ17選(3/4 ページ)

» 2015年08月17日 11時15分 公開
[ぶくまる]
ぶくまる

ジワジワ怖い! シュール系ホラー漫画8作

 鉄板作品が叫び声を上げてしまうような怖さなら、シュール系のホラーは、読後にジワジワとくる怖さや、どこかおかしみのある怖さが特徴です。こちらも、王道作品と話題作をそれぞれご紹介します。

間違いなしの王道作品はこちら

 ここから紹介する4作は、忍び寄るような怖さを実感できる作品です。読み終わった後もモヤモヤとしたものが残るのが、ある意味病みつきポイントとも言えます。

伊藤潤二先生の美しく怖いホラーを堪能するなら『伊藤潤二傑作集』

伊藤潤二傑作集 1 富江 上

伊藤潤二傑作集』 全10巻 伊藤潤二 / 朝日新聞出版

 ホラー漫画界の鬼才・伊藤潤二先生の作品は、端麗な絵柄でありながら、じわじわ引きずるような独特な怖さが魅力。『伊藤潤二傑作集』は、映画化もされた「富江」(第1巻・第2巻)や、テレビ番組「マツコ&有吉の怒り新党」で紹介された「首吊り気球」(第8巻)の話も収録されている、まさに傑作ぞろいの作品集です。

 恋愛にとらわれた末に不幸な末路をたどる人々を描いた「死びとの恋わずらい」(第4巻)は、読み応えのある中編作品です。霧の深い夕暮れ時に現れる「四つ辻の美少年」。彼に恋占いをお願いした人は、みな否定的なことを言われ、自殺してしまいます。一体彼は何者なのか? そこには主人公の過去との因縁があり……。美少女は美しく、美少年は麗しく描く伊藤潤二先生だからこそ、より一層悲劇度が際立ちます。

 結論があって無いような終わり方もされるため、謎が謎を残したままで、読者は余計に不安をかき立てられます。それこそ、伊藤先生の思うつぼなのかもしれませんね。

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「栞と紙魚子」シリーズはこの作品から始まる! 『栞と紙魚子の生首事件』

栞と紙魚子の生首事件

栞と紙魚子の生首事件』 全1巻 諸星大二郎 / 朝日新聞出版

 『栞と紙魚子の生首事件』は、2008年の第12回文化庁メディア芸術祭でマンガ部門優秀賞を受賞し、「栞と紙魚子の怪奇事件簿」として連続ドラマ化もされた「栞と紙魚子」シリーズの第1作です。女子高生の栞と紙魚子が怪奇現象に巻きこまれていく、基本的には1話完結のストーリー集です。

 表題作の「生首事件」は、近所の公園でバラバラ死体の一部が発見されて周囲が騒然としている中、栞が紙魚子に「相談がある」と打ち明けます。実は栞は、公園でその生首を発見し、興奮のあまり思わず持ち帰ってしまったのです。2人は考えた末に「生首の正しい飼い方」という本を参考に、生首を飼い始めることに……。

 このあらすじだけでも、この作品のシュールさの一片が伝わるかと思います。うら若き女子高生が、死体にさほど驚きもせず、なぜか生首に餌を与えている……そして生首もなぜか生きているように動いている……。ギョッとするような設定なのに、なぜかクスっとさせられてしまうのが、このシリーズの最大の魅力! 怖さと笑いを兼ね備えたホラーコメディです。

 もし、栞と紙魚子をだんだんと可愛く感じてきたら、続編の

も、ぜひ読んでみてくださいね。

『栞と紙魚子の生首事件』を立ち読みする

恐怖を感じる前の「あの違和感」が満載『不安の種+』

不安の種+(1)

不安の種+』 全4巻 中山昌亮 / 秋田書店

 『不安の種』の続編である『不安の種+』は、各話が最短2ページから数ページ程度で完結する超短編集です。

 小さいころ、寝つく前の布団の中で、窓やカーテンを見ながら漠然とした恐怖を感じたことはありませんか? 怖さを感じるふとしたきっかけのような、そんな小さな「不安の種」が、本作にはちりばめられています。違和感が不安になり、そして恐怖へ。どの話も、ほとんどの理由が明かされないことが多く、結末に含みを持たせている展開のおかげで、薄気味悪さがずっと尾を引き、後からジワジワと怖くなってきます。

 ネットでは「検索すると怖い画像」としても有名な「オチョナンさん」は、本作の第1巻に収録されています。これも非常に短い話ですが、一度見てしまうと、オチョナンさんの顔が頭にこびりついて、いつまでも離れてくれません。ちなみにこの「オチョナンさん」は、2013年にまさかの実写映画化。ショッキングなポスターや映像が話題となりました。

 中山昌亮先生の畳み掛けるようなストーリーテリングにハマってしまった方には、最新作の『後遺症ラジオ』もお勧めです。

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江戸川乱歩の名作を漫画で見事に具現化した『パノラマ島綺譚』

パノラマ島綺譚 1巻

パノラマ島綺譚』  全1巻 丸尾末広・江戸川乱歩 / KADOKAWA / エンターブレイン

 江戸川乱歩の傑作小説『パノラマ島綺譚』を、丸尾末広先生が脚色して漫画化。2009年に手塚治虫文化賞を受賞した作品です。

 独特の理想郷を夢見る売れない物書き・人見広介が、双生児と言われるほど瓜二つだった大富豪の同級生・菰田源三郎が死んだことを知り、自らの自殺を装って、菰田になりすます計画を立てる。彼は菰田の財産を使い、誰からも相手にされなかった理想郷を具現化するために、大人が楽しめる壮大な楽園「パノラマ島」の建設を進めていく。

 土葬されている菰田の墓を掘り返し、死体から差し歯を抜いて自分の歯に埋め込むなど、人見の偽装工作のための執念の行動にはゾッとさせられます。彼は、菰田の取り巻きや妻に正体がバレることを恐れながらも、着々とパノラマ島計画を進め、ついに完成させます。

 丸尾先生による、その理想郷の具現化は素晴らしく、圧巻の一言。江戸川乱歩の原作通り、いや、それ以上と言っていいでしょう。見開きで広がるパノラマ島の光景は、水中回廊をはじめ、ありとあらゆる美しい建造物が並び、男女が裸で楽しげに交わる、まさに「楽園」。1枚の絵画のような美しさに、思わずストーリーを追う手を止めて見入ってしまいます。

 他のホラー作品とは性質の異なる本作は、人の欲望の果てを描ききったという意味で、人間本来の「怖さ」を堪能できる作品といえるでしょう。主人公がたどる結末は、ぜひその目で確かめてみてください。

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