秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。同人誌の用語を解説していく「ミソノ流ワンポイント用語解説」も必見。
一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメやマンガのパロディや、コスプレの写真集などさまざまなジャンルがありますが、こちらの連載では、私設図書館「シャッツキステ」の司書メイド・ミソノが、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心にご紹介します。作家の「好き」が形になった同人誌、その魅力を体感してください。
タイトル:『教会巡りin五島列島』
サークル名:マタタビMIX
形態:A5 56ページ 表紙カラー 本文モノクロ
Webサイト:http://www.matatabimix.com
同人誌入手先:マタタビMIXさんのWebサイトから(http://www.matatabimix.com/order_round_in_church.html)
連絡先(mail):cat@matatabimix.com
風がすっかり秋めいて、どこかへ旅するにはよい季節になりました。前回は北海道の蜃気楼の本を紹介しましたが、今回は長崎の島にある教会をめぐる旅行記同人誌です。
長崎の島に、古い教会が多くある……というのは聞いた事があったのですが、「島の中だけで50教会がある」という冒頭に出てきた言葉に、早速びっくり。そんなにあるんですねぇ! 本では教会をめぐるモニターツアーに参加された様子を、4コマまんがとイラストがふんだんに使われたコラムでリポートされています。さすがに解説は島内の幾つかの教会に限られているのですが、さっぱりとした、親しみやすい絵柄の4コマで、出発からいきなりエンジントラブルに見舞われたフェリー様子から、実は離脱者続出のハードなモニターツアーの様子、ミサの時間を知らせるのは鐘の代わりにホラ貝で! など、目を白黒させながらも教会めぐりを楽しむ様子がいきいきと伝わってきます。
教会はほとんどが高台にある→高台にある教会を訪ねる→心臓破りの坂登り! でもその先にあるのは、重厚な白い天井と、床に敷かれた真っ赤なじゅうたん、柱の木目が美しい教会や、椿の花のモチーフが柱についた、パステルカラー色の教会。わー! 何てすてきな描写なのでしょう。しかも道々で出会った教会の様子をはじめ、教会の建築方法、教会を建てた建築家さんのこと、名物の幻のうどんのことまで、詳細につづられたコラムページも合わせると、すごい情報量が1冊に詰まっています。2010年に発行された本なので、今では変わってしまった部分もあるかもしれませんが、時を経ても役立ちそうな情報もたくさん! 絵柄も文字もかわいらしくて、読みやすく構成されているので、キリスト教の豆知識まで、興味深く読みました。
紙面では、ハードな教会めぐりのスケジュールに作者さんははあはあ息を切らしていますが、読者のわたしはわくわくページをめくるだけですてきな教会建築への気持ちが高まる。申し訳なくも、何と楽ちんなのでしょうか!
こちらの本、写真が一枚もないんです。丁寧なリポートは全てイラストと文章で構成されています。細密に描かれた教会のイラストや、かわいい飾り枠で囲まれたコラムに、本作りへの細やかな気配りが感じられます。そして、その細やかな気持ちは、4コマやコラムで、ちょっと添えられた作者さんの一言からも強く感じることができます。「窓ガラスに手描きの花柄模様。はげかけているところがたまらない」と書かれれば、わたしも紙面のこちら側で、「そうそう、古びて味が出てくるものってありますよね。実物はどんな感じかしら〜」と思いをめぐらせ、「長崎の教会でおやっと思ったのはお祈りする女性や子供たちがベールを被っていたこと」とのコメントに、その様子を想像してみたり。「ようやくわかってきました 島の人たちの独特のおかし味が」の一言には、島を歩いて、触れ合った方ならではの視点に、ほっと息をついて、「いつかわたしも訪ねてみたいな」という気持ちになったのです。
『聖地巡礼』
「大好きな作品の舞台になった場所を見に行く」という意味でも使われますね。刑事ものが好きな方から「私の周りでは『地取り(じどり)』って呼んでるよ」と教えてもらったことがあります。大切な場所を巡礼して風景を心に刻むか、絵柄の構図やたどり着く時間などを丹念に検証しつつ足取りを追うか……。いろんな旅する楽しみがありますね。
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