Interview:「Linuxは儲かる!」がテンアートニ,角田社長の信念

【国内記事】2001.11.09

「Linuxは儲かる!」といい続ける「会社」がある。いや,「社長」がいると言ったほうが正しいかもしれない。代表取締役社長である角田好志氏が率いるテンアートニは,JavaとLinuxにフォーカスしたシステムインテグレータ(SI)として1997年5月に設立。日本のビジネス分野でJavaソリューションを確立し,現在,Linux市場の確立に注力している。そこで,先日ノーザンライツの合併を発表したテンアートニの角田社長に,日本のLinux市場の現状や今回の合併の経緯,そして今後の展開について話を聞いた。

テンアートニの代表取締役社長,角田好志氏

eWEEK 現在のLinux市場をどのように見ていますか?

角田 現在のLinux市場には,大きく2つの見方があると思います。1つは大企業向けの市場であり,もう1つはマス向けの市場です。大企業向けの市場では,主にUNIXのリプレイスとしての利用が最も多い分野となっています。

 中でもWebシステムへのLinuxの導入は,既に確立された市場の1つと言えるでしょう。Windowsベースのものより,信頼性,安全性の高い,システムが低コストで実現できます。そして,次に狙っているのが情報系の分野です。

 情報系の分野では,企業に蓄積されたヒストリカルなデータを,高速に処理する高いパフォーマンスが必要です。Linuxカーネル2.4による大規模メモリやSMP対応,そしてItaniumサーバの登場など,情報系の実現に必要な環境がそろってきました。さらに,64ビット対応Linuxカーネルも登場しています。

eWEEK マス向けの市場はどうですか?

角田 マス向けの市場では,業務アプリケーションのオープンソース化が必要だと考えています。われわれは,率先して日本初のオープンソース化した業務システム「セルベッサ」を提供していますが,なかなかその意図を理解してもらうことができません。

eWEEK なぜ業務システムをオープンソース化しなければならないのでしょう?

角田 例えば,受注システムや,一般的な事務処理などのような基本的な業務の仕組みは,業種や業態で違うというものではありません。しかし,現在のIT化では,この基本的な部分を個々にシステム化しており,非常に非効率的なのです。

 このような基本的な部分は,オープンソースやわれわれが提供しているセルベッサなどを利用することにより迅速かつ低コストで実現し,もっと戦略的な部分にIT化のための予算を使うべきだと考えています。セルベッサは,外食産業で共通な受発注システムをパッケージ化した製品で,既に,ニユートーキヨーをはじめダブリュー・ディー・アイ,大戸屋などの外食チェーン企業に導入されています。」

 今後は,さらに賛同企業を募り,業種別の業務システムコミュニティを広げていきたいと考えています。

eWEEK 企業のシステム担当者に,「Linuxに興味があるか?」と聞くと8割以上が「ある!」と答えると思います。しかし,「では,Linuxを導入しているか?(あるいは予定はあるか?)」と聞くと,とたんに色よい返事が減ってしまいます。これはなぜでしょう?

角田 確かにそうかもしれません。Linuxは,Javaなどの標準的な技術とシナジー効果が出せていないために安心感が少ないのです。そのために注目しているが,導入には至らずという状況が多いのでしょう。しかし,Linuxを必要としている企業ユーザーは確実にいるのです。われわれの会社でさえ,数千万円規模のリピーター顧客企業が数社いるのですから。

 これは,われわれが会社を立ち上げたばかりのころのJavaと同じような状況です。当時のJavaも注目しているが,導入には至らない代物でした。しかし,企業システム構築のなかで,さまざまなトライ&エラーを繰り返しながら,Webアプリケーション開発フレームワークである「WebWorkBench」を実現しています。いまやJavaの導入を躊躇する理由はどこにもなくなりました。

 今後も「Linuxは儲かる!」を前面に掲げ,Javaと同じような市場展開をLinux市場でも強力に推進していきたいと考えています。

eWEEK Linux市場の本格化には何が最も必要なのでしょう?

角田 アプリケーションの充実です。特にOracleデータベースのサポートは不可欠といえます。Linux対応のOracleデータベース製品が充実してくれれば,既存の業務システムをそのままLinuxに移行することも可能です。

 64ビットLinux対応のOracleデータベースの計画を,早く発表してほしいものです。

ノーザンライツ合併の経緯

eWEEK 先日,ノーザンライツコンピュータとの合併を発表されましたが,この経緯について聞かせてください。

角田 常々,日本のLinux市場では,「大同団結」が必要だと考えていました。ITバブルといわれているころであれば,さまざまなベンチャー企業がそれぞれ資金を集めて,自分たちが目指すビジネスを展開することができました。

 しかしバブルがはじけた今,このままでは日本のLinux陣営は総崩れになってしまう可能性が否めません。そこで,Linux市場の拡大という共通の目的のために,小さな意見の違いにこだわらずに1つにまとまることが必要と考えたのです。

 その第1号がノーザンライツなのです。ノーザンライツとは,今年の6月ごろから打ち合わせをはじめ,先日,合意にいたったというわけです。

eWEEK 確かに,今の状況では,大同団結は1つの手段だと思います。しかし,SIであるテンアートニがハードウェアを持つということに危機感はありませんでしたか?

角田 ありません。ハードウェアもソフトウェアも適材適所で必要なものが違います。ノーザンライツのハードウェアは,これまでもHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)や科学技術計算の分野で高い評価を受けています。既に,一定の市場を確立しているといえます。また,ソフトを組み込んだアプライアンスサーバとして,既にわれわれも利用した実績があります。

 また,NECやコンパック,日本SGIなどは,われわれの株主でもあり,必要であればこれらの会社からもハードウェアを調達できます。

 ノーザンライツと合併することで,これまでわれわれが確立してきたビジネスソリューション分野に加え,HPCや科学技術分野にもビジネス範囲を拡大できるのです。

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[山下竜大 ,ITmedia]