エンタープライズ:ニュース 2002/08/23 21:08:00 更新


Accelioによってフォームだけでなくプロセスも電子化するアドビ

アドビシステムズはカナダのアクセリオ買収に伴い、フォームだけでなく、「プロセス」も自動化するソリューションを手に入れ、従来から評価の高いAdobe Acrobatソリューションを補完する。

 7月15日付けで社長に就任したアドビジステムズの石井幹氏は、自身の昇格の背景を「日本人の社長が常駐することで、アドビのコミットを分かりやすくし、日本法人の責任の所在を明確にする必要があった」と話す。それは、官公庁をはじめ、製造、金融といった日本の大企業にe-ペーパー(電子ドキュメント)ソリューションを売り込む体制を整えるためだ。それを裏付けるかのように社長就任後、初めてとなるプレスブリーフィングでは、4月に買収を完了したばかりの旧アクセリオ製品を取り上げた。

 カナダのオタワに本社を置いていたアクセリオは、その社名が「ジェットフォーム」だった時代から電子帳票やワークフローの技術を培っており、新たに登場したXML技術にもうまく乗り、ビジネスプロセスの自動化へと、そのソリューションを拡大していた。

 単なるe-ペーパーだけでなく、Adobe Acrobatをベースにe-フォームへとシフトを始めていたアドビは、2月にアクセリオの買収を発表した。Accelio製品群を手に入れ、一気にポートフォリオを整えた格好だ。

 都内のオフィスで行われたブリーフィングでは、AcrobatとAccelioが、どのような特徴を持ち、どのように補完できるかが中心的なテーマとして選ばれた。

 旧ジェットフォーム時代からマーケティングを担当してきた小島英揮氏は、「これまでのアドビ製品がリッチなコンテントを製作するソリューションだったのに対して、Accelioはビジネスプロセスの自動化をデザインし、実行するソリューション」と説明する。

 フォームを例に挙げれば、アドビが忠実さを追求してきたのに対し、アクセリオでは忠実さだけでなく、ロジックも埋め込めるようにしている。アドビのソリューションは人が介在することを前提としているが、XMLにも積極的に対応し、システム間の連携も視野に入れている。平たく言えば、フォームとプロセスの双方を電子化しようというのがAccelioだ。

 Adobe Accelioの製品群は、「Capture」「Integrate」、および「Present」の3つに大別される。

 フロントエンドを構築するCaptureは、単なる電子フォームの作成機能だけでなく、ウイザード形式でデータを入力させていく、インタラクティブなフォームを開発する機能もある。

 例えば、旅行傷害保険の申し込みをWebで受け付けるシステムを想定しよう。インタラクティブなWebアプリケーションで必要な項目を順に入力してもらい、自動計算したり、入力漏れをチェックする機能を埋め込める。入力がすべて終わると、印刷用の忠実なフォームに仕上げられる。入力されたデータは、社内のプロセスに回され、印刷後、署名や捺印された書類が届くと、正式に契約が結ばれるというわけだ。

「PKIの普及がこれから、ということもあり、今のところは、署名や捺印のために忠実な書式で印刷する必要が出てくる」と小島氏。

 フォームだけでなく、プロセスも自動化できるAccelioソリューションの好例だ。

 フォームをアウトプットするソリューションであるPresentも、Acrobat Distillerや、そのサーバ版であるAcrobat Distiller Serverとは大きく異なるものだ。

 既に出来上がっているWordやExcelをAcrobat DistillerがPDF化するのに対して、Presentはデータをソースとし、PDFを含む、印刷、FAX、電子メールというさまざまな形式でアウトプットする。受け取るデータはXMLでもよく、加工したあと、再びXMLでほかのシステムに渡すこともできるという。

「ビジネスや行政ではフォームが基本だが、Accelioソリューションのキーワードは、その“自動化”だ」(小島氏)

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[浅井英二,ITmedia]