エンタープライズ:コラム 2002/10/07 20:08:00 更新


Opinion:ブレード戦争の秘密兵器

近いうちに、すべての調査会社、メディア、およびベンダーがブレードに置き換えるようにと大合唱を始めることになるだろう。そして、ブレード戦略の選択は、ハードウェアのスペックや機能だけではなく、どの管理ソフトウェアが自社に適しているかが大きなポイントになると言えそうだ。

 あなたの会社にあるサーバを捨てなさい――近いうちに、すべての調査会社やメディア、およびベンダーが、不格好で、場所を取り、大量に電力を消費するサーバを廃棄し、ブレードに置き換えるようにと大合唱を始めることになるだろう。

 ブレードという名前には2つの由来がある。まず、これらのカード型システムは、通常のフル機能搭載システムの外観と比べると薄い。離れた場所から見ると、まるでかみそりの刃(ブレード)のように見える。もう1つの由来は、「かみそりとかみそりの刃」として知られる実証済みの収益創出戦略をコンピュータ業界が採用したということだ。

 プリンタメーカーは、この価格戦略で批判を受けている。インクジェットプリンタ(かみそり)は、HPをはじめとするプリンタメーカー各社がインクカートリッジ(かみそりの刃)から大きな収入を稼ぎ出すのに貢献しているのだ。

 サーバの世界では、ユーザーはまず、特殊なエンクロージャー(かみそり)を購入するよう求められ、次にこのエンクロージャーにサーバ(ブレード)を詰め込む必要がある。ヒューレット・パッカード(HP)などは既に、顧客がまるでスーパーマーケットのレジの手前で衝動買いをするように“10パック入り”のブレードを購入していると自慢している。

 2003年は、年初からインテルベースのサーバプロバイダー最大手3社(デル、HP、IBM)の本格的なブレード製品が出そろう最初の年になる。既にゲームは始まっている。(比較的知名度の低いRLXテクノロジーズは、これらの大手がこのニッチ市場を支配する前に有利な立場を確保しようと必死になっている。)

 大手メーカー3社の中で先行したのはHPで、同社は1年近く前にブレード分野に進出した。もしあなたがHPのエンクロージャーを購入したのであれば、あなたは既に同社のブレードを購入するしかないのである。その場合、あなたは多分、本記事をこれ以上読む必要がないだろう。特にHPのシステムは(IBMのシステムと同様)、同社のサーバ管理ソフトウェアと密接に結び付いているため、筆者が本コラムでどんなことを書こうとも、あなたが他社の製品に鞍替えすることはあり得ないだろう。

 しかし、もしあなたの会社が今日の多数派に属しているのであれば、言い換えれば、ブレード市場に関心はあるけれども、実際にはまだほとんどお金を使っていないのであれば、以下を読み続ける価値があるだろう。結局、上で述べた管理ソフトウェアは、あなたがブレードサーバ戦略を推進することを決めた場合に、あなたの決定に重要な影響を与える2つの要素の1つと言えるかもしれない。もう1つの要素は価格である。

 そんなふうに言うと、IBMとHPの製品マネジャーが私を罵る声が聞こえてきそうだ。「合理的なデザインのボックスを開発するのに注ぎ込んだ努力をなぜ過小評価するのか」というわけだ。しかし基本的に、各社のブレードデザインの主眼は、できるだけたくさんのブレードを詰め込むこと、ブレードの実装密度(エンクロージャー1台当たりのブレード数)を高めること、エンクロージャーの後部から出るケーブルの数を減らすこと、電源やネットワークスイッチなどのリソースの共有を最適化すること、Storage Area Network技術および各種のクールな機能(ブレード本体、ファンやメモリ、HDDなどのコンポーネントのホットスワップなど)を組み込むことなどにある。

 厄介な問題は詳細な仕様部分に潜んでおり、既にベンダーの間で微妙な違いが見られる。しかし、あるベンダーが最新製品の詳細な仕様を公表すると同時に、ほかのベンダーは社内の技術者にこれらの仕様を盛り込むよう命じ、技術者は製図板に戻って先行ベンダーに追いつこうとするのだ。

 しかしどのベンダーの製品であれ、これらの技術的妙技の結果はいずれも、冷蔵庫ほどの大きさのサーバに慣れてきたユーザーに大きな感銘を与える出来栄えとなっている――プロビジョニングが容易でフォールトトレラントなサーバ、小さなシャーシ上で美しく点滅するランプ、そして後部から出ているケーブルは驚くほど少ない。

 ハードウェア面で目立った違いは、デュアルプロセッサ型ブレードで採用されているプロセッサの種類だ。HPでは、1.4GHzのPentium IIIを、インテルが高密度ブレード向けに特別に開発した133MHzのシステムバスと共に使用している。IBMは、自社独自の技術を用いてインテルの2.4GHz版Xeon DPプロセッサ(400MHzのシステムバス)をデュアルプロセッサブレードに組み込んだ。このブレードは、同社が最近発表した「BladeCenter」に搭載される。デルはHPと同様、Pentium IIIを採用するもようだ。

 IBMとHPはいずれも、競争を意識した価格を筆者に知らせてくれたが、これを評価の判断材料とすることは難しい。というのも、これらの価格とユーザー企業が実際に支払う金額は大きく異なるからだ。IBM、HPおよびサンの各社は、サーバを売るために年がら年中、新たな値下げ攻勢で互いを牽制しているのに加え(ただし、デルはいつも他社を寄せ付けない低価格バリュープロバイダーとして割り込んでくる)、ほとんどのベンダーが、筆者が取材で入手した価格とは厳密に対応しない独自の個別企業向け値引きプランを用意している。

 結局、最後にはソフトウェアの良否が判断の決め手となるかもしれない。設置スペースと消費電力の節約に加え、ITマネジャーがサーバリソースの割り当ておよび割り当て変更を素早く行える柔軟性がブレードサーバの大きな魅力だ。

 需要の急増に対応するのに必要なサーバリソースをネットワークマネジャーが用意しなければならないような場合、適切な管理ツールがあれば、OS/アプリケーション/データイメージを備えたサーバを素早く構成・配備し、これを負荷分散ソリューションによって利用できる追加リソースとしてVLANに組み込みことができる。このような状況にはブレードが理想的だ。

 このようなツールだけでなく、資産の管理、コンポーネントの障害予測、管理データのエンタープライズ管理システムへの転送といったタスクを処理する一般的なサーバ管理ツール(HPの「OpenView」やIBMチボリ部門の「Enterprise Console」など)も依然として必要だ。

 今のところ、デルの管理ソフトウェアポートフォリオ「OpenManage」が、どの程度の管理/プロビジョニング機能をカバーするのか詳細は不明だ。HPとIBMは、それぞれの管理ツールの仕様を明らかにしており、両社とも非常に内容が充実した管理ソリューションを提供している。

 HPのソリューションは、コンパックの「InSight Manager」のスクリプティング機能を、アルティリス(プロビジョニングおよびソフトウェアの配付)やF5ネットワークス(ロードバランシング)のソリューションに組み合わせたものだ。IBMの管理ソリューション(「IBM Director」および「Tivoli」ソフトウェア)は、自社開発によるもの。

 あなたのブレード戦略の選択は、どの管理ソフトウェアが自社に適しているかが大きなポイントになると言えそうだ。あなたは多分、ずっと以前に(ブレードブームが起きるよりも遥かに前に)その選択を行ったかもしれない。どんなベンダーの管理ソリューションでも、他社のハードウェアを管理するのは、そのベンダー自身のハードウェアを管理するほど得意ではない。これは、すべての管理ソリューションがそれに対応システムに搭載されたカスタムチップの機能を利用しているからだ。

 もしあなたが既に特定のソリューションを導入し、それを利用しているのであれば、そのベンダーのハードウェアソリューションを選ぶべきだ、というのが筆者のアドバイスだ。ただし、あなたがどうしても必要とする製品があり、選択を行う時点でそれを提供しているのが1社だけである、というような場合は別だ(例えば、Xeon DPプロセッサなど)。

 すべてはこれから、という企業の場合は、ブレードベンダーの販売担当者から、そのベンダーの管理ソフトウェアで何ができるのか、そしてそのソフトウェアの価格はいくらなのか、といった点についてじっくり説明してもらうのがいいだろう。

 ハードウェアレベルでもベンダーによってある程度の違いがあり、これらの差異は今後縮まるものもあれば、拡大するものもあるだろう。特定のベンダーのハードウェアや価格面でのアドバンテージが長期に続くことはない(デルの場合は例外だが)。

 どんなに素晴らしいハードウェアであっても、その利点を十分に引き出すには優れたソフトウェアが必要だ。このため、特定のハードウェアで何ができるのかを知る上でソフトウェアが判断材料となるのだ。

 あなたの場合、長期的な管理ソフトウェアのアドバンテージと短期的なハードウェアのアドバンテージのどちらが重要だと考えているのだろうか?

関連リンク
▼迫るブレードサーバの波
▼新生HPのブレードサーバは管理ソフトで勝負
▼Gartner Column:第41回 ブレードサーバという新たな戦場
▼Interview:デル幹部、「2003年、サーバの主流はブレード/ブリックへ」

[David Berlind,ITmedia]