エンタープライズ:ニュース | 2003/06/07 20:14:00 更新 |
OracleのPeopleSoft買収提案はユーザーにとっては厄介ごとだ
PeopleSoftに対するOracleによる突然の買収提案は、当事者だけでなく、そのユーザーにも混乱を引き起こしている。PeopleSoftユーザーの反応は? 業界アナリストが問題点を探る。
OracleのPeopleSoft買収が成立すれば、ユーザーは移行に際し、大変な苦労をすることになるだろうと業界アナリストは予想する。
OracleがPeopleSoftに対し、故意に低い値段をつけたため、この買収案が成立するかどうか不透明だ。しかし、Oracleの企業文化、そして歴史的経緯を考えると、PeopleSoftの製品およびオペレーションをかみ合うものにするには相当の苦労をするものと予想できる。
「OracleとPeopleSoftの文化的相違は、昼と夜みたいなものだ」とYankee Groupのアナリストであるマイケル・ドミニー氏は説明する。
「この点について、私は懐疑的だ。OracleがどうやってPeopleSoftの顧客を怒らせずに事を運ぶつもりなのか、もっと詳しい情報を知りたいところだ」(ドミニー氏)
この買収が成立とすれば、それがどのような意味を持つのか、顧客は考える時間が必要だと話す。
「ポジティブなこと、ネガティブなこと、それぞれあらゆることが考えられる。ただ、それを検討するには時期尚早だ」とPeopleSoftユーザーであるImperial Sugarの副社長兼CIOであるジョージ・ミュラー氏は話す。
PeopleSoftとOracleの製品を両方とも購入している産業用製品メーカー、AmetekのCIOであるビル・ローソン氏は複雑な思いだ。
「(Oracleが)投資する費用を引き上げて、私が投資したOracle製品に費やしてくれたら、と思う」とローソン氏。
しかし、Oracleが両方の製品開発を進めていき、PeopleSoft製品のメンテナンスも続けていくとなると、Oracleの顧客はベンダーによる製品フラグメンテーションの被害を受けることになる。
OracleはPeopleSoft買収のために、51億ドルのキャッシュ(1株当たり16ドル)でPeopleSoft買収を提案している(6月6日記事参照)。同社幹部は、PeopleSoft製品の新規ユーザーへの販売は停止するが、既存ユーザーへの販売は継続する。ただし、徐々にOracleのアプリケーションへの移行をユーザーには進めていくという。OracleはPeopleSoftの技術の一部を自社のOracle E-Business Suiteに組み入れるとも表明している。
PeopleSoftのCEOであるクレイグ・コンウェイ氏はOracleの提案を「極悪非道な行為の歴史を持つ会社からの極悪披露な行為」と非難した。
PeopleSoft取締役会の賛同を得なければ、Oracleによる買収が成立する可能性は低い。これはPeopleSoftが敵対的買収に対する予防策を付随定款として準備していたからだ。
Oracleは過去のテクノロジー会社買収で、ほとんど動かないソフトウェアを組み合わせてきたと批判されている。Oracleはこの問題を回避するために、コードベースをPeopleSoftのものとは分離するつもりだ、とOracleのジェフ・ヘンリーCFOは説明した。
「われわれはPeopleSoftの開発サポートを長い間行ってきた。彼らの製品が持つ機能の一部をわれわれの製品に組み込むつもりだ。そうすることで、顧客がすべての機能を持ち、それ以上のものになったOracle製品に移行することになるだろう」(ヘンリー氏)
Oracle Applications User Groupの会長はこの提案を支持する。
「OracleがPeopleSoftを買収する提案をしたことは、Oracleアプリケーションのユーザーにとって長期的に見てポジティブなインパクトを持つ」とアーサー・ハント氏は広報を通して表明している。
「この買収によってOracleは新しいアプリケーションを開発し、既存のものをより良いものにする能力を、さらに拡大するものと期待している」(ハント氏)
市場調査会社Gartnerのアナリスト、テッド・ケンプ氏はこの合併はPeopleSoftの顧客の立場からすると、悪い出来事だと指摘する。
「(Oracleが)製品の開発に興味を抱いているとは考えていない。彼らは売り上げを上げたいだけだ。あなたが忠実なPeopleSoftのクライアントだとしても、Oracleに移行するか、そのほかのものにスイッチしなければならない」とケンプ氏。
しかし、IDGのアナリスト、アルバート・パン氏はPeopleSoftの顧客の要求に対しては聞き入れるだろうと考える。
「4000以上の優良顧客を見捨てることはないだろう」とパン氏。
この買い付けはPeopleSoftにとって驚きだったろうと複数のアナリストはみている。なぜなら、Oracleの動きを察知していたなら6月2日にJ.D Edwardsを買収するという発表はしなかっただろうからだ。
Oracleがこの提案にどれだけ本気なのかは、意見が分かれるところだ。
「昨年来のOracleのポジショニングと、市場の激震についてラリー・エリソン氏が発言していたことを考えると、エリソン氏はPeopleSoftが長期的に生き残ることになるとはみていなかったことは明らかだ」とYankee Groupのドミニー氏。
PeopleSoftの株価にわずか5%のプレミアムを付けただけの提案はちょっとした侮辱だ、とドミニー氏。一方、ドミニー氏はOracleが買収金額を引き上げたとしても不思議ではないという。
財務アナリストらも同様のコメントをしている。
「この取り引きを成立させるためには、Oracleは色をつける必要がある」とMorningstarのアナリスト、トッド・バーニア氏は6月6日の研究ノートに記している。
バーニア氏の予想では、この買収が成立すれば、エンタープライズアプリケーション市場の残りのベンダーによる連合がすぐさま形成され、Siebel Systemsなどはまた別の買収の対象となるという。
6月2日にPeopleSoftがJ.D. Edwardsを買収すると発表したが、これによりOracleはERP市場においてナンバー3に順位を落とし、その上には大きくなったPeopleSoft、さらにトップにはSAPが居座るという構図になってしまう。
バックシートの位置に甘んじることに不満なOracleがPeopleSoft買収の判断を下したというのがアナリストの見方だ。しかしPeopleSoft買収による巨大合併には連邦政府から赤信号が出される可能性もある。Oracleが買収に成功すれば、同社とSAPとがエンタープライズアプリケーション分野の大半をコントロールすることになる。
Siebelと同様、PeopleSoftも財務的には苦しんでいた。これは経済全体と同様、エンタープライズソフトウェア市場も景気が悪いからだ。同社のライセンシング売り上げは今年の第1四半期、昨年対比で40%落ち込んでおり、売り上げ合計では昨年第1四半期の4億8300万ドルから、今年の第1四半期は4億6000万ドルと、5%のダウンとなっている。また、同社は数度のレイオフに揺さぶられてきた。
しかし、OracleがPeopleSoftを飲み込まなかった場合、ほかのベンダーが食指を動かすのはありそうにないとYankee Groupのドミニー氏は推測する。IBM、SAP、Microsoftはいずれも買収のための資金は持っているが、彼らの戦略プランにはフィットしない、と同氏。
「Oracleが買収に失敗すれば、PeopleSoftは予定通りJ.D. Edwardsを買収し、彼ら独自の道を行くことになるだろう」とドミニー氏。
Oracleの買い付け案に何が起きるにしろ、近々予想されるアプリケーション市場の統合に向かってペースを早めることになるだろう、と複数のアナリストがみている。IDCのポン氏は、Oracleの「ジョーズ攻撃」はシェア獲得だけでなく、競合状態を不安定なものにすることが目的なのだと予想する。
「大胆な動きだ。事態の推移を見守りたい」(ポン氏)。
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[Stacy Cowley, Tom Krazit,IDG News Service]