エンタープライズ:ニュース 2003/06/12 15:21:00 更新


基調講演:JavaOne恒例、お気に入りのガジェットを繰り出すゴスリング氏

Javaの生みの親、ジェームズ・ゴスリング氏の基調講演は、毎回、さまざまなガジェットが登場することで知られ、今年も期待を裏切らなかった。しかし、何日もかけて製作したTシャツ発射機は、どうも効率が悪い。ゴスリング氏は、「来年は発射機のコンテストを実施する」と宣言した。

 JavaOneカンファレンスは2日目を迎え、恒例となっている「ゴスリングのお気に入り」が基調講演で披露された。Tシャツ発射機、火星探査車、携帯ナビ……、さまざまなガジェットが飛び出した。

 米国時間6月11日、「2003 JavaOne Conference in San Francisco」の基調講演に、Javaの生みの親、ジェームズ・ゴスリング氏が登場した。Sunではフェローの称号を持つ彼のステージでは、自作デザインのTシャツを参加者に「発射」するのが恒例となっている。過去には、ゴムを使った大型パチンコや圧縮空気を使ったエアバズーカなどが使われたが、今年は中世の戦いに出てきそうな武器を持ち出してきた。

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巨大なTシャツ発射機、こんなものまで作ってしまう……


 大掛かりな仕掛けの割には、今年のTシャツ発射機はどうも効率が悪い。数枚しかTシャツを飛ばせなかったゴスリング氏は、開口一番、「来年はコンテストを開く」と宣言した。

 「消防法にひっかかってはダメ。ステージに載ること。遠くの席まで届くこと……」とゴスリング氏は真面目にルールを読み上げ始めた。たかがTシャツだが、大真面目でやるのがゴスリング氏らしい。

 続いてステージのスクリーンに映し出されたのが、期せずしてJavaOne初日に打ち上げられた火星探査車だ。残念ながら火星に向かって旅を始めた火星探査車には、Javaは搭載されていないが、地上の制御システムにはJavaが採用されているという。

 また、「Rocky7」と呼ばれる将来の探査車を試作するプロジェクトでは、米TimeSysの組み込みシステム向けリアルタイムJava VM、「JTime」が採用され、さまざまな実験が行われているという。JTimeは、Real-Time Specification for Java(RTSJ)に準拠している。

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リアルタイムJavaが組み込まれた実験用のRocky7


 ゴスリング氏は、基調講演後に行われた日本人プレスとの共同インタビューで、「探査車のプロジェクトからは多くのことが学べる」と話した。ビデオカメラからの画像で進路に障害物があれば、探査車は自動的に迂回しなければならないし、車輪がスリップすれば、センサーでそれを検知して自ら回避策を取らなければならない。

 これらはすべて、火星が遠く離れており、そのため通信のタイムラグが大きいことから起因している。進路に大きな穴があることが送られてきた映像で分かったとしても、実際にはそのときは既に探査車はその穴に落ちてしまっている。つまり、遠隔操縦が難しいということだ。

FAに応用できる火星探査車の技術

 こうした技術はファクトリーオートメーションに応用できるとゴスリング氏は話す。

 ステージでは、こうした組み込みJavaと「AUTO-ID」技術を組み合わせた小売り店のシステムがデモされた。小売り店の棚から例えば、音楽CDがなくなるとセンサーがそれを検知してバックヤードの倉庫からロボットが該当製品をピックアップして、補充するというものだ。倉庫では組み込み向けのリアルタイムJavaでロボットが制御されるというわけだ。AUTO-IDでは、タグとして貼られたJavaチップとセンサーが無線で通信をするため、こうしたことが可能となる。

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毎年、自らデザインしたTシャツで現れるゴスリング氏


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AUTO-IDのデモ、ロボットは三菱電機製という


 これまでにもゴスリング氏は、本物のガソリン給油機をステージに持ち込み、好んで「e-GasStaion」のリアルなソリューションを紹介した。給油機には,Javaチップが組み込まれ,そのPOS情報はJ2EEサーバからWebサービスによって接続されたSAP R/3に送られる仕掛けだ。組み込みJavaからJ2EEまでエンドツーエンドでJavaプラットフォームが連携し合うソリューションは、彼にとって理想なのだろう。

 やはりプレスとのインタビューでAUTO-IDの可能性について聞かれた彼は、「AUTO-IDはすべての物にインテリジェンスを付加する。無線を利用するため、バーコードのように一つ一つ読ませる必要もない」と話した。

 例えば、冷蔵庫。食材を入れるだけで、賞味期限を管理してくれる。「家庭の冷蔵庫でもいいが、レストランにとってはこれができれば凄い」とゴスリング氏。

 部品単位でタグが埋め込まれていれば、自分がどの部品と組み合わされるのかを生産管理のアプリケーションに伝えることもできる。そうなれば製造工程はもっと柔軟になるかもしれない。

 「5年もすれば、コストが下がり、今のスマートカード並みの能力を持ったチップをタグとして貼ることができるようになるだろう。そうなれば、よりアクティブなネットワークの一員になれる」(ゴスリング氏)

 さらに基調講演のステージでは、P2PのためのプロトコルであるJXTA(ジャクスタ)を利用した道路交通情報の未来像もデモされている。携帯電話やGPSを組み合わせれば、あるクルマがどのルートをどれくらいのスピードで走行しているのかについてのデータをP2Pで集約できる。これらの情報をカーナビゲーションシステムに取り込めば、最短時間で目的地に到達できるルートも容易に割り出すことができる。だれがモニタになるのかといった疑問はあるものの、「交通渋滞のひどい東京にいい」とゴスリング氏は大喜びだ。

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[浅井英二,ITmedia]