エンタープライズ:ニュース 2003/06/13 10:37:00 更新


Javaによる市場機会創出で自らのソフトウェア事業を加速させるSun

Sunのシュワルツ執行副社長は、マッキンゼーのコンサルタントとしてキャリアをスタートさせ、現在は同社のソフトウェア事業を統括する。弱冠36才の彼はJavaのブレークスルーを追い風にし、Sunのソフトウェア事業拡大に取り組んでいる。「コンシューマーを巻き込んだ市場は巨大で、その一部のパイだけでも十分に大きい」とシュワルツ氏は話す。

 Sun Microsystemsのソフトウェア事業を統括するジョナサン・シュワルツ執行副社長は、Javaの遍在化によって新しい市場を創造し、そうしたデバイスにサービスを提供するSun ONE製品群の需要をさらに喚起させていく戦略を明確にした。米国時間6月12日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催中のJavaOneカンファレンスで話したもの。

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1996年までオブジェクト指向開発ツールのLighthouse DesignでCEOを務めていたシュワルツ氏


 この日、日本人プレス向けにブリーフィングを行ったシュワルツ氏は、家電向けに開発が始まったJavaプロジェクトのビジョンが、いよいよ現実味を帯びてきたとする。携帯電話での成功を皮切りに、Javaはあらゆるデジタル機器や家電製品にさえ組み込まれようとしている。

 「とてつもないボリュームだ。もはやだれも疑わない」とシュワルツ氏。彼らが「Java is Everywhere」を今年のJavaOneカンファレンスのテーマに掲げた理由でもある。

 また、ジョナサン氏自身が11日の基調講演で誇らしげに明らかにしたように、Hewlett-PackardとDellがJava VMのプリインストールを決めた。MicrosoftがWindowsからJava VMを外そうとしていることへの防御措置でもあるし、携帯電話の成功で実証された優れたアーキテクチャをPCにも拡大したいという攻めの措置でもあるとジョナサン氏は話す。

 「Javaの潜在的な需要はデスクトップPCにもある。携帯電話でJavaは成功を収め、欧州でも着メロ市場が16億ドルに達している。これはユーザー認証やデジタル著作権管理のようなセキュリティ機能がJavaやサーバサイドのインフラに備わっているからだ。これらの機能をデスクトップPCに組み込めば、同じような市場機会が創造されるはずだ」(ジョナサン氏)

 やはり11日の基調講演でJavaの生みの親であるジェームズ・ゴスリング氏が「お気に入りのガジェット」の一つとして、携帯電話向けのナビゲーションサービスを紹介しているが、ジョナサン氏も既存のカーナビに不満を感じているひとりだという。

 「DVDの地図情報がすぐに古くなってしまう」とジョナサン氏。携帯電話は初めからネットワークに接続されていることを前提としているデバイスのため、アプリケーションやデータはサーバに格納され、常に新しい道路やお店の情報にアクセスできる。ネットワークコンピューティングの利点を端的に理解できる良い例だ。

 ジョナサン氏によれば、そうした利点に多くのメーカーや通信事業者らが魅力を感じているという。

 「例えば、ソニーのようなメーカーは、自社の製品を購入してくれたユーザーに対して、長期に渡ってサービスや価値を提供したいと考えている。デジタルカメラやさまざまな家電製品、あるいは自販機のようなものまで、ネットワークに接続できれば、機能を追加することによって製品寿命を長くすることができる。携帯電話で証明済みだ」(ジョナサン氏)

Javaでどう儲ける?

 1995年にJavaがデビューして以来、Sunには「Javaでどのように利益を生み出すのか」という課題があった。生みの親であるゴスリング氏はビジネスとは縁遠いエンジニアだし、Javaを業界に広めるためにJavaSoftという子会社を設立してJava関連事業を本体から切り離していた時期もあった。ソフトウェア事業を統括するシュワルツ氏は、昨年の就任以来、まさにこの課題に取り組んでいる。

 シュワルツ氏は、JavaによってSunの売り上げが拡大したことは間違いないと話す。携帯電話におけるJavaの成功は、ユーザー認証サーバやWebサーバ、メールサーバ、ポータルサーバといったさまざまなサーバ群によって支えられたきたといっていい。コンテントが先かインフラが先かという議論は別にして、着メロのようなデジタルコンテントを販売したいという需要が高まれば、デジタル著作権管理のインフラが必要になる。

 シュワルツ氏が狙うのは、Javaのブレークスルーが携帯電話で新しい市場を創造したように、さまざまなデジタル家電で新しい市場が生まれ、それらによって同社のSun ONEをはじめとするインフラソフトウェアのビジネスも拡大していくという好循環だ。

 シュワルツ氏は「Windowsにはこうした市場機会はない」とキッパリと話す。それは、単に着メロのような市場がないと言っているのではない。Microsoftは自らのために市場を生み出し、その機会は独り占めしてしまっているというのだ。

 「Sunはパートナーシップによって市場を創造し、その一部のパイを受け取ればいい。コンシューマーを巻き込んだ巨大な市場であれば、一部でも十分大きい。われわれが単なるサーバカンパニーだったら、こうしたことを理解できなかっただろう」(ジョナサン氏)

 Sunは今回のJavaOneを機にロゴを露出しやすいようにシンプルなものに変え、大規模なマーケティングキャンペーンを開始する。Javaを所有していないものの、同社はブランドを所有している。その認知度を高めることは、ビジネス上、極めて重要なのだ。

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[浅井英二,ITmedia]