エンタープライズ:ニュース 2003/06/18 10:52:00 更新


モデル駆動型とパターンでJ2EE開発に新しいパラダイムを提示するCompuware

先週のJavaOneカンファレンスでは、開発ツールがホットな話題となったが、米CompuwareのJ2EE開発ツール「OptimalJ」もその一つ。この秋には日本語版の投入も予定されている。

 先週の「2003 JavaOne Conference in San Francisco」でゴールドスポンサーを務めたミシガン州デトロイトのCompuwareが、モデリングとパターンによってJ2EE開発を40%迅速化する「OptimalJ」を大々的に売り込んだ。今回のJavaOneでは、Sun Microsystemsが「Project Rave」を発表したほか、BEA Systemsも「BEA WebLogic Workshop」の実績をアピールするなど、開発ツールがホットな話題となった。CompuwareではOptimalJの日本語化を進めており、この秋にも国内市場に投入する。米国市場では3月、バージョン2.2がリリースされている。

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会場周辺ではサンフランシスコらしく、フラワー系ヒッピーらが「OptimalJ」を売り込むパフォーマンスも行われた


 1973年に設立された同社は、メインフレームからオープンシステムまで幅広い開発環境をラインアップする老舗ソフトウェアベンダー。ミシガン州の自動車メーカーをはじめとするフォーチュン100の伝統的な企業のほとんどを顧客として抱えているが、ソフトウェアライセンスというよりは、保守あるいはプロフェッショナルサービスの比率が高く、売上高の8割近くを占めるという。

 ただ、メインフレームを利用する伝統的な顧客らも、標準をベースとし、アプリケーション開発を迅速化する必要に迫られている。そうした顧客らのニーズにこたえるべく、ここへきてCompuwareでは積極的にJava、.NET、Webサービスなど最新技術のサポートに取り組んでいる。J2EE開発を加速するOptimalJは、新しい製品群の中でも核となるものだ。

 Compuwareが5月、200人のITプロフェッショナルを対象に実施した調査によると、彼らが直面する最大の課題は「開発サイクルの迅速化」で、多くの企業がJava、.NET、Webサービスを実装中だという。また、具体的な開発手法としては、回答者の半数近くが、開発面において競争優位を手に入れるためには、モデリングとパターンをベースにした開発の採用が適していると考えている。

 パターンとは、いわゆるプログラミングの定石。プログラミングを繰り返す過程で「良いコード」が経験から生み出されていくが、それらを広く再利用するために本の形式で幾つか出版されている。最も知られているのは、著名な4人(Gang of Four)によってまとめられた「オブジェクト指向における再利用のためのデザインパターン」だが、もちろんJ2EEのためのパターン集も出版されている。

 OptimalJは、こうしたモデル駆動型(OMGのModel Driven Architecture)とパターンをベースとしたアプローチによってJ2EE開発を簡素化すべくデザインされたツールだ。展示フロアで受注アプリケーションを開発する過程をデモしてもらったが、主な流れは以下のとおりだ。

 先ず、UMLベースでミドルウェアに依存しないモデリングを行う。この段階ではビジネス要件だけを対象としている。次にパターンを利用してこれを特定のミドルウェアに特化した技術的なモデリングに落とす。つまり、Web層のモデル、EJB層のモデル、DBMS層のモデルといった具合だ。ここからHTMLやJSP、Javaコード、そしてRDB向けにDDL(Data Definition Language)のソースコードを自動生成するわけだが、その際にもパターンが利用される。

 こうしたモデリングとパターンによる開発で、40%の迅速化が図れるとCompuwareでは主張する。

 また、あくまでも標準をベースとしているため、RationalのRoseのようなほかのデザインツールで作成されたUMLもインポートできるし、RDBからデータモデルをインポートすることもできる。UMLに関しては、OptimalJで修正したものを吐き出してほかのツールに引き渡すこともでき、他社製品との組み合わせも可能だ。

 デモを行ってくれたOptimalJ担当のシステムエンジニア、シャバズ・カリッド氏によれば、EJB 2.0のパターンだけでなく、企業が望めば1.0のパターンを利用して開発を行うこともできるという。

 また、パターンによって自動生成されたコードは、確かに実証されたコードだが、開発の現場ではデベロッパーがさらに手作業でコードが追加されるケースがほとんどだろう。OptimalJでは、そうしたことを想定し、ソースコードのうち、パターンによって生成された部分が別の色で表示され、変更できないように保護される。

 カリッド氏は、その理由を「パターンによって生成されたのコードはインフラ。良いコードでかつテスト済みのコードだ。デベロッパーは必要とされるコードだけを追加すればいい」と話す。

 アーキテクトは、パターンを使い、ベストなコードを自動生成することでJ2EE開発を加速できるし、デベロッパーも必要とされるコードを追加できるわけだ。

 なお、CompuwareはJavaOne開催中の6月11日、BEA Systemsと提携し、OptimalJを含むライフサイクル管理製品群がBEA WebLogic Platformと緊密に連携できるよう統合していくことを明らかにしている。

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展示フロアのCompuwareブース


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[浅井英二,ITmedia]