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2003/07/29 17:53 更新

UNIX USER03年8月号特別企画より転載：
FreeBSD 5.1-RELEASEにおける新機能の概要と活用例 (4/6)


UNIX USER 2003年8月号より転載

　ULEスケジューラ（注5）は、SMP環境における性能強化を目的として開発が進められた新しいスケジューラである。これによって、従来のスケジューラは4BSDスケジューラと呼ばれるようになった。デフォルトでは4BSDスケジューラが有効化されているので、ULEスケジューラを用いる際は以下の手順を踏むことになる。
注5　カーネルのスケジューラ関連の関数では、schedulerがschedと省略される習慣がある。ULEという名称は、schedと組み合わせてscheduleと読めるようにした単なる語呂合わせである。

●ULEの有効化

　ULEスケジューラを利用するには、カーネルコンフィグファイルで次の指定を行えば良い。


options SCHED_ULE

　たとえば、ULEスケジューラを有効化したカーネルを作るには、まず/usr/src/sys/i386/conf/MYKERNEL（任意のファイル名）にリスト5のような内容を記述する。5.1-RELEASEから用意されたカーネルコンフィグファイルの新しい文法（注6）によって、このような書き方が簡単にできるようになった。
注6　ファイルを取り込むincludeや、optionsを無効化するnooptionなどが追加された。

リスト5　/usr/src/sys/i386/conf/MYKERNELの一部

include  GENERIC
ident    MYKERNEL
nooption SCHED_4BSD
options  SCHED_ULE

　後は、通常どおりカーネルをコンパイルし、インストールすれば、ULEスケジューラが有効となった環境が構築される。


# cd /usr/src
# make buildkernel KERNCONF=MYKERNEL
# make installkernel KERNCONF=MYKERNEL
# shutdown -r now

●性能測定

　ここで、簡単なテストによって性能測定を行った。測定にはDual Pentium Ⅲ/866MHzマシン（メモリ512MB）を用いて、Byte BenchmarkとApache Benchmarkを実行した。
　Byte Benchmarkの結果としては、表3の項目において顕著な差が表れた。多くのテストで4BSDスケジューラのほうが5～20％程度高速であり、とくにコンテクストスイッチングのテストでは10倍近い差が開いている。

表3　Byte Benchmarkにおいて顕著な差が表れたテスト項目

スケジューラ ULE 4BSD
Pipe-based Context Switching Test 6897.1回/秒 66057.8回/秒
Process Creation Test 1620.1回/秒 1864.7回/秒
Shell scripts (1 concurrent) 881.8回/秒 1320.9回/秒
Shell scripts (8 concurrent) 173.2回/秒 175.6回/秒
File Read  (30 seconds) 367421.0KB/秒 413350.0KB/秒
File Write (30 seconds) 18666.0KB/秒 19153.0KB/秒

　Apache Benchmarkでは、表4のような結果となった。これは、クライアントを含めて1台のマシン上において、Apache標準の初期ホームページを5000回、並行性20で測定したリクエスト処理時間である。こちらも、旧スケジューラのほうが高速である。
　アプリケーションによって最適なスケジューリングは異なるうえ、今回はスレッドの試験は行っていないこともあり、「今後の発展に期待」というところだろうか。

表4　Apache Benchmarkの結果（単位はミリ秒）

スケジューラ ULE 4BSD
平均処理時間（標準偏差） 80（18） 50（13）
最大処理時間 137 114

［UNIX USER特別企画］
FreeBSD 5.1-RELEASEにおける新機能の概要と活用例
（１） 完成度の向上した5.1-RELEASE
（２） nsdispatchのNSSモジュール対応
（３） jailに追加された機能
（４） ULEスケジューラ
（５） FireWire/DVTS～新ブートローダー
（６） VMware 3用のports～5.2-STABLEに向けて

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