エンタープライズ:インタビュー 2003/10/08 12:58:00 更新


Interview:顧客がSunに望むのは価格性能を劇的に引き上げる技術革新

「Sun Partners Forum 2003」のために来日したポリュームシステム製品担当のニール・ノックス執行副社長は、価格性能に優れたエントリーサーバとワークステーションを手土産として持参した。北米のチャネルを統括した経験もあるノックス氏に話を聞いた。

 サン・マイクロシステムズは10月7日、都内のホテルにパートナーらを集め、「Sun Partners Forum 2003」を開催した。基調講演のために来日したポリュームシステム製品担当のニール・ノックス執行副社長は、価格性能に優れたエントリーサーバとワークステーションを手土産として持参した。製造業を中心に設備投資が上向いている中、Sunのソリューションを販売するパートナーらには「ウインテルにリプレースされるのでは」といった危機感があったという。新しいボリュームシステム製品ラインは、それを払拭するに足るのか? 北米のチャネルを統括した経験もあるノックス氏に話を聞いた。

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「データセンターから複雑さとコストを排除するのがSunの使命」とノックス氏


ZDNet Sunにおけるボリュームシステム製品部門の位置付けを教えてください。

ノックス Sun Fire 15Kのようなハイエンドサーバの成功が大きいゆえに存在感が小さく見られがちです。しかし、3年前に各部門のボリューム製品を集約して新設したボリュームシステム製品部門は、収益から見ても最も貢献している製品部門の一つです。

ZDNet 新たに投入されたエントリーレベルのサーバとワークステーションがパートナーや顧客らにもたらす恩恵について教えてください。

ノックス われわれはこの1年、ボリュームシステム製品を強化してきました。今回、東京で発表した「Sun Blade 1500」「Sun Fire V250」、そして「Sun Fire V440」によってライン刷新が完了します。これらの製品群は、パートナーにとっても顧客らにとっても、優れたパフォーマンスをローコストで提供するものです。

 Sun Blade 1500は、ハイパフォーマンスの64ビットUNIXワークステーション。タワー型サーバのSun Fire V250は、中堅企業や小規模事業者向け、あるいは大企業でも部門向けの最も統合されたサーバです。日本を含むアジア全域や欧州においては、(ストレージも内蔵できる)エントリーレベルのタワー型が長らく求められていました。

 Sun Fire V440は、4CPUまで拡張可能なラックマウント型サーバですが、価格は2万ドル以下(UltraSPARC IIIi×2の構成で161万9000円から)です。パートナーにとっては、全く新しい領域のビジネスを展開できるようになるでしょう。

 こうした価格性能に優れたハードウェアと「Sun Java System」という一連のソフトウェアスタックがあれば、パートナーらはこれらをビルディングブロックとして活用し、顧客に新しい価値を提供できます。

ZDNet 日本においてもセキュリティに対する関心が高まっています。データセンターや企業全体のシステムを運用管理していく上で、セキュリティへの対処が大きな負担となっているからだと思います。

ノックス セキュリティは、最初のデザイン段階から製品に組み込まれていなければなりません。特に基盤となるオペレーティング環境ではコードが何千万ラインにも及び、外部からの攻撃にさらされます。

 2002年初めになってビル・ゲイツが「Trustworthy Computing」(信頼できるコンピューティング)構想を持ち出してきましたが、Solarisはその1日目からネットワーク中心のセキュアなオペレーティング環境として生まれています。Sunがこの問題を熟知していたからです。セキュリティはSunのDNAなのです。

 われわれは、セキュリティをさらに高めた「Trusted Solaris」という別バージョンのOSも用意しており、多くの政府・官公庁から選ばれています。このTrusted Solarisを次期Solaris 10で統合していく計画です。

ZDNet インテルプロセッサの動作クロック数はさらに向上を続けていますが、SPARCプロセッサはどのように対抗するのでしょうか。「スループットコンピューティング」がその答えとなるのでしょうか。

ノックス スループットコンピューティングは、SPARCアーキテクチャを新しいレベル価格性能に引き上げてくれる牽引車となります。Sunはこの新しい技術の啓蒙にも努めており、インテルはこれに対抗すべくロードマップの変更を余儀なくされています。われわれもXeonを採用し、新しいレベルの価格性能を提供するサーバ製品を投入していますが、所詮32ビットに過ぎません。64ビットのItaniumは依然としてISVアプリケーションの問題を抱えたままです。

 近い将来、(マルチコア化と“Chip Multi Threading”によって)1個のSPARCプロセッサが32のストリームデータに同時に対応できるようになります。これはもう胸躍る革新的な技術で、道路を32レーンの「スーパーハイウェー」にしてしまうようなものです。今まで到達したことのない高いプライスパフォーマンスのシステムを生み出せると思います。

ZDNet 素晴らしい革新かもしれませんが、株価を見る限り、市場はあまり評価していませんね(直近の四半期決算発表を受け、10月7日現在3ドル台半ば)。

ノックス それはシンプルです。今は市場がSunの実行を待っているのです。Chip Multi Threading(CMT)ベースのシステムが出荷されれば、評価は高まるはずです。

 CISCからRISCへ、あるいはSMPへといったSPARCの変革や、あのJavaでさえ、製品が実際に市場に投入されるまでは疑問符だらけでした。「本当にいいのか?」とね。

 Solarisでもそうです。かつてはWindows NT脅威論が、最近ではLinux脅威論がいつも付いて回りますが、われわれはIP(知的所有権)ドリブンな企業で、そのリーダーとして成功を収めてきました。顧客らもわれわれに技術革新を望んでいるのです。

 彼らがSunに求めているのは、ほかの企業の技術を寄せ集めてディストリビューションすることではありません。そうしたことはほかのベンダー、例えば、Dellなどで十分間に合うからです。「次のパラダイムシフトは何か?」をSunに見せてほしいと望んでいるのです。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]