オープンなグラフィックスカードが現実のものにTrend Insight(1/2 ページ)

完全にオープンなビデオカードの恩恵をユーザーが受けられるのはもう少し先になるだろうが、その動きは確実に実を結びつつある。

» 2006年07月25日 08時00分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 ビデオカードのクローズドソースドライバは、フリーソフトウェア信奉者を長年悩ませてきた厄介な問題である。たいていのビデオカードにはオープンソースドライバが存在するが、そうしたドライバはビデオカードの性能を完全に利用できていなかったため、ユーザーはコストを取るか、パフォーマンスを取るかの二者択一を迫られていた。最近の朗報は、Open Graphics Projectが完全にオープンなビデオカードの実現を目指して前進しているということだ。しかし残念ながら、フリーソフトウェア信奉者が完全にオープンなビデオカードを使用できるようになるまでには、まだしばらく時間がかかるだろう。

 OGPの発端は、2004年にティム・ミラー氏がオープンソースフレンドリなビデオカードを作成するというプロジェクトをLinuxカーネルメーリングリスト(LKML)で発表したことである。当時のミラー氏はTech Sourceに勤務していて、同社からこのプロジェクトについて支援を受けていた。

 Tech Sourceは撤退したが、このプロジェクトは今も進行している。ミラー氏はこのプロジェクトを支える「企業側の柱」として、Traversal Technologyを設立している。「われわれは、OGPの仕様に基づくハードウェアを作成し、ほかの営利ビジネスとの仲介役を務めるための営利法人を設立した。われわれの目的は、オープンアーキテクチャのグラフィックスハードウェアの販売を通じて、われわれの活動を維持し、今後もオープンアーキテクチャハードウェアの開発を続けていくための資金を得ることである」。

 Open Graphics Foundation(OGF)の設立も進められている。ミラー氏はOGFの役割を次のように説明している。「(OGFは、)OGPを正式に代表する中心的エージェントとしての役割を果たす。さらに、OGFは寄付金を受け付けて、それをOGPの開発者に必要なハードウェアを購入するための補助金に回す予定である」。

 このプロジェクトの目標は、特許や知的所有権に煩わされずに利用でき、しっかりとドキュメント化されたプログラミングインタフェースを備え、完全なOpenGL実装をサポートし、高パフォーマンスの2Dグラフィックスを実現し、ビデオ再生をサポートしている適正価格のビデオカードを作ることである。

 このプロジェクトは、NvidiaやATIのようなヘビー級の3Dビデオカードに対して競争を挑むものではなく、Xglのようなソフトウェアや軽めの3Dゲームに必要な程度の3D機能をサポートするビデオカードを作成しようとする試みである。このカードで「Doom 4」をプレイするのは難しいが、Linuxデスクトップマシン用の動作保証されたビデオカードがあればいいというユーザーにはぴったりである。このビデオカードの仕様はOpen Graphics DevelopmentのWebサイトで見ることができる。

Open Graphics Developmentシリーズ

 ミラー氏によれば、Traversalは遅くとも9月までにOpen Graphics Developmentシリーズ1(OGD1)カードを出荷する予定である。ただし、これはビデオカードではない。OGD1は、最終製品の開発に使用できるField-Programmable Gate Array(FPGA)ベースのテストカードである。ミラー氏は、このカードそのものにも市場があると語っている。

 「Tech Sourceから分離したため、われわれはこれを自社の製品として販売してもよいだろうと判断した。FPGAベースのプロトタイプボードにはかなり大きな市場がある。さらにわれわれの製品は、これまで市場に出ていた製品に比べて、何分の一かの価格でより大きなロジックエリアを備えている。この製品は、われわれに大きな利益をもたらすだけでなく、関心を持ってくれているパートナーに対して、われわれの真剣さと競争力を示すことにもなる」。

 ミラー氏によると、このカードの価格は「最低1000ドルだが、大量注文には割引がある」ということだ。競合製品はだいたい1200ドル前後であるということについては、「機能はわれわれの製品の方が優れている」と語っている。

 さらに、コントリビュータはこのカードを割安価格で入手できる。ミラー氏によれば、「OGPに何らかの貢献をしたことを証明できる開発者」であれば、ODG1を600〜700ドルで入手することができる(具体的な金額は実際のハードウェアの価格による)。

 この技術を利用した固定機能ビデオカードのリリース時期や価格は、現時点ではまだ公表されていない。

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