変わりゆく企業ネットワークのあるべき姿ITmedia 特別鼎談 ITmediaエンタープライズ×@IT:ITの棚卸し

ITの仮想化が進み、SOAの概念が浸透した現在、企業ネットワークやIT部門は内部統制という新たな課題で大きな変革を余儀なくされている。法令に準拠しながら、新技術に対応できる柔軟な企業ネットワークとは何か。2007年、企業が実施すべき対策とその指針を示す。

» 2007年02月28日 18時00分 公開
[ITmedia]
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2006年が示すキーワードは「仮想化」と「内部統制」

 機能とプロセスを分離して抽象化する「SOA」のアプローチが普及し、少数のサーバ機に多数のサーバ機能を集約する「仮想化」の概念が浸透した2006年。業務の効率化とネットワーク統合という指針を見出した企業は、新しい企業ネットワークの未来へと大きく前進したかに見えた。

 しかし、これらの革新は企業にとって新たなる変革の幕開けに過ぎない。内部統制の評価/報告などを求める金融商品取引法(いわゆる日本版SOX法)への対応が要件に加わった今、企業ネットワークにはさらなる進化が求められている。

 2007年、企業ネットワークはどうあるべきか。IT部門は何をすべきなのか。ユーザー企業の動向を長年見つめてきたITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏、@IT発行人の新野淳一氏、そして@IT情報マネジメントプロデューサーの三木泉氏が2006年に顕在化したITの新潮流や企業ネットワークの限界と課題、進むべき方向性について語った。

浅井:2006年に顕在化したITの潮流の1つが、いろいろな意味での「仮想化」だと思います。もともとは、高価なリソースをフル活用するという発想からきたものですが、ハードウェアとソフトウェアを分離し、抽象化することによって、アプリケーションを書き換えることなく展開できるようになりました。仮想化によってはじめて、真のサーバ統合が現実のものになったと言えるでしょう。一方でアプリケーションに目を転じると、ここでもSOA的なアプローチによってプロセスと機能の分離が進み、必要に応じて必要な部分だけを書き換えれば済むようになってきました。

ITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏

新野:仮想化の概念は、業務アプリケーションの開発者にも大きな影響を与えましたね。アーキテクチャの疎結合は、例えば呼び出したい機能やプロセスがネットワークを越えた先にある場合、その場所を指定するだけで呼び出せるといった機能を充実させました。その結果、開発者はデータがどこにあるのかを意識せずにアプリケーションを開発できるようになりました。アーキテクチャの疎結合が業務アプリケーションの疎結合を生んだと言えるでしょう。

三木:実際、このような仮想化システムを支える機器が充実してきたのも、2006年の傾向だと思います。サーバの信頼性や拡張性は向上し、ミッションクリティカルな業務を任せられるネットワーク機器が増えました。

新野:もう1つの潮流は、何と言っても「内部統制」でしょう。情報保全のニーズから、ストレージの導入やディザスタリカバリが企業で真剣に検討されるようになりました。データを確実に保全するためのリモートサイトへのレプリケーション(複製)、ネットワーク経由のバックアップを実現するための帯域の確保などは、さらに活発化すると思われます。

浅井:バックアップなどは事業の継続性に関わることから注目を集めていましたが、内部統制によってさらに重視されるようになりましたね。

三木:たしかに、内部統制は好むと好まざるとに関係なく、さまざまな課題を考える契機となりました。しかも、内部統制はIT部門のあり方を変質させるきっかけともなりました。

新野:これまでのITは効率化やROIの向上という目的で導入されてきましたが、内部統制によって法令を遵守するという新たな目的が追加されました。それにより、ネットワークの課題が経営層の課題へと変質したのです。このことから、IT部門と経営陣の関係が近づいてきた、むしろ混じり合ってきているように感じます。IT部門の役割そのものが、業務の効率化から経営層の補佐へと変化しているのです。

浅井:内部統制は、ITの課題というより経営上の課題です。2000年問題などは純粋にITの問題だったので、経営層の意思決定に関係なくIT部門で解決できました。しかし、内部統制は経営層の判断抜きでITを整備できません。経営層とIT部門が一体化してネットワーク整備をする、そんな時代が到来したのです。

IT部門を廃止する?!経営者の視点でアウトソースを考える

 こうした仮想化と内部統制の流れは、IT部門の位置付けだけに影響を与えているのではない。IT部門の役割、そして企業ネットワークのあり方にも新たな課題を投げかけている。

三木:最近衝撃だったのは、国内企業でIT部門を廃止するところが出てきていることです。これは、ある意味でITの重要性が高まったからこその動きだと思います。コストやITサービスの品質を考えたとき、内部ですべて抱えるよりもアウトソースした方が見合うということなのでしょう。

新野:アウトソースの動きは、ITが難しくなってきているのも原因にあると思います。以前は、とりあえずサーバやPCを導入してつなげればすんでいたのが、今はインフラを整備して疎結合し、マシンの設置場所やネットワークの設計、必要なサービスなどをBPMに基づいて考慮しなければなりません。しかも、内部統制も考慮しなければならない。これは、企業のIT部門で考えるレベルをはるかに超えています。ITにおいて、より横断的な知識や専門性が必要とされているからこそ、専門会社に設計から運用管理までを任せるというスタイルが顕在化しているのだと思います。

@IT発行人、新野淳一氏

浅井:ただし、どこまでアウトソースするかといった判断はIT部門だけで行えるものではありません。例えば、競合他社に対する差別化要素や新製品開発を支援するようなシステム作りには、社内で絶えず改良していくことが求められます。業務にかかる時間などを統計レポートから割り出し、それに基づいてビジネスプロセスを改善して生産性を高めるという、経営的な視点からアウトソースを考えなければなりません。

新野:新製品開発の支援といえば、社内のコミュニケーションの方法も多様化していますよね。電子メールや電話、グループウェアで情報共有していたのが、1〜2年前からはIM(インスタントメッセンジャー)やSNSなどを使用する社員が増えています。そのため、以前はサーバへの負荷やデータの入出力の傾向からトラフィックが予測できたのが、今は見極めるのが難しくなりました。ネットワークの設計が、経験則に基づいてできなくなったのです。

浅井:米国では、企業向けIMをサービスとして提供するベンダーが多く存在し、コラボレーションを支援するアウトソースが展開されています。IMサービスを自社で構築する場合、情報漏えいなどのセキュリティも意識しなければなりません。セキュアな状態を保ちながらコミュニケーションを活性化する、企業ネットワークとして開いているのに閉じた領域が管理されているという環境作りは、ある意味アウトソースするのが現実的なソリューションなのかもしれません。

今こそITの棚卸しのチャンス!安定したインフラの選択も重要ポイント

 では、IT部門がするべき課題は何なのだろうか。

新野: IT部門が2007年にまずするべきことは、IT資産の棚卸しだと思います。サーバのパフォーマンスは32ビットから64ビットへと向上し、ネットワークのパフォーマンスも上がっています。機器だけではありません。拠点間での仮想化を支援できるような、安定したネットワークインフラを提供する事業者も多く存在します。つまり、ネットワークで何かを実現するための材料は揃ったということです。複雑なITを抱えこんだ、古いネットワークでは法令遵守や新技術などに対応できません。分散している部門サーバを統合したり、シングルサインオンやアクセスコントロールなどを導入するといったネットワークの刷新は、今がチャンスなのです。

三木:社内に何台サーバがあるか分からないという話はよく聞きますが、その状態は決してセキュリティや管理面からも好ましくありません。運用管理を含めて全体最適を考えた場合、ITの棚卸しをすることで投資効果は得られるはずですし、逆にコスト削減にもつながると思います。

@IT情報マネジメント編集部 シニアエディター、三木泉氏

浅井:棚卸ししてシンプルなシステムを構築することは、どんなことにも柔軟に対応できるネットワーク作りにつながると思います。現在のネットワークを再検討する、非常によい時期に来ていると思います。

三木:その際に併せて考えたいのは、こうした要件を満たす安定性および信頼性の高いネットワークインフラです。以前は電子メールやグループウェアのために拠点間を平面的に接続しさえすればよかったものが、最近では日常業務を根幹から支えるアプリケーションを全社レベルでネットワーク越しに使うようになってきています。業務におけるITの重要性の高まりに伴い、それに耐え得るだけの帯域や信頼性を確保しなければならなくなってきました。

新野:そうですね。だからといって、企業単位で専門家を各事業所などに配置するのは現実的ではありませんよね。セキュアで安定しており、かつ柔軟に活用できるようなインフラ。LANとWANの区別がつかないほどに統合され、均一なサービスを全社に提供できるインフラ。アウトソースするにしても、こうした要件を満たす事業者を選択することが重要となってきます。

浅井:自社に最適な要件を組み合わせられるような、メニューの幅もほしいですね。インフラからサービスまでを包括的に提供できる事業者は、必ず選択肢に入れるべきです。というのも、アウトソースする内容に応じてネットワークサービスの事業者を使い分けていては、掌握するのが大変ですから。より統合的に運用を任せられる、ユーザー企業にとってはあまり詳細を気にしなくても安心して使える環境を提供してくれる事業者選び。これが、今IT部門が検討すべき優先項目だと思います。

 環境の変化やビジネスのスピードに応じた柔軟な環境の構築、そして日本版SOX法をはじめとする法規制への対応と内部統制の確立など、企業ネットワークにはさまざまな要素が求められている。

 こうした多様なニーズに対応できるサービスを提供している事業者として、NTTコミュニケーションズが挙げられる。IP-VPNや広域イーサネット、ブロードバンドVPNといったメニューを業務要件に応じて、適材適所に組み合わせることができるネットワーク選択肢の豊富さが同社の強みの1つだ。

 さらに、ストレージやセキュリティ対策、VoIPなどの各種アプリケーションの提供、ルータまでを含めた一元的な管理・運用など、マネジメントにまで及ぶ包括的なソリューションを展開できる。企業の信頼できるパートナーとして、今後のさらなる役割に期待していきたい。

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提供:NTTコミュニケーションズ株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2007年3月31日